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最近読んだ本&読んでいる本(2024年7月21日版)

読書メモを書いておくと記憶に残りやすいと思うので最近読んだ本及び読んでいる本について書いていこうと思う。

菊池良生『神聖ローマ帝国』

アークナイツに登場するリタ―ニアという国のモデルがドイツ及びオーストリアの領域付近だと思われるので、何か元ネタはないかと本書を読んでみた。

神聖ローマ帝国と言っているが実質ドイツ史である。カール大帝の領土を考えるとフランス史も扱っていると言えなくもないが、実質ほぼドイツ史だ。カール大帝からナポレオンによる神聖ローマ帝国滅亡までが俯瞰できる内容となっている。

金印勅書や宗教改革など、ざっくりとは流れを追えたが扱っている時代に1000年くらいの幅があるのでやはり個々の事象の分量が少ないと感じる。ここは仕方ない面があるので個々の時代についての本をもっと読んでみたいと思う(特に金印勅書や選帝侯についてはもっと知りたい)。

呉座勇一『応仁の乱』

日本史の転換点として応仁の乱は大きい事件だということをどこかで読んだので気になって読んでみた。

実際に読んでみた感想としてはカオスすぎてよくわからないというのが正直なところである。そもそも対立構造が多すぎるのである。やたらといろんな地域でいろんな武将が戦争をしている。戦争理由も細かい土地争いだったり家督相続争いだったりと様々ありいちいち覚えていられない。とにかく室町武士に野蛮な印象を抱く、そんな本だった。

ただやはり応仁の乱から明応の政変の付近で室町幕府の支配体制が変わったという説はあるらしく、その付近から京都に在住していた守護たちが自分の所有領土に下野していったらしい(建前上は守護の領土ではなく貴族などの荘園だったりする場合もあるので所有領土という言い方で合ってるかはわからないけど)。そこから徐々に管轄している土地に対する支配意識が強まり戦国時代となっていくという流れとのこと。現代の土地に対する意識とはまた違った感覚が中世人にはあるのでその差異が面白いと思う。

室町~戦国時代に限らず日本史の土地関連の話は面白い。荘園史などを見ていると土地に対する認識って様々あるのだなと意外な気持ちにさせられる。そして荘園争いがあった時代を乗り越え、検地、転封、改易、石高制、参勤交代などを駆使して支配体制を確立した戦国の三英傑はやはり偉大だと思う。

室町~戦国付近の話はもっと読みたいので次は東国武士の話などを読んでみようかなと思っている。

藤澤房俊『シチリア・マフィアの世界』

本書もアークナイツ影響で読んだ(シチリアモデルの都市が出てくるので)。

本書はシチリア島におけるマフィアの成立時期から戦後数十年くらいまでのことが書かれている。部分的にムッソリーニなども出てくるのでイタリア・シチリアの戦時史についても知れる内容となっている。

正直もっとイタリアについて知ってから読めばよかったかなと感じた。正直、三国同盟の国の歴史は日本とドイツしか知らないのである。

面白い本ではあったけどイタリア人の名前を覚えられないという難しさがある。ドン・ヴィートという人物が出てくるがおそらく映画『ゴッドファーザー』のヴィトーコルレオーネの元ネタだろう。アークナイツにも出てくるサルヴァトーレの元ネタのような気もするが、アークナイツの場合はどちらかというと映画要素が強めな気がする。

ラッセル・A・ボルトラック『習慣と脳の科学』

なぜ読み始めたのか理由はぼんやりしてるけど確かSNSで勧めている人がいたから読んだという経緯だった気がする。

本書はタイトルからもわかる通り、習慣の研究について書かれた本である。

本書はとにかくわかりづらい。わかりづらいというのはマイナスだと思う人が多いかもしれないが、自分は誉め言葉として使っている。世の中にはわかりやすい科学的知見がたくさん転がっている。それらは一見良いことのように思えるが、複雑な実験結果を単純化することによりわかりやすくしているため、単純化の過程でそぎ落とされた、もしくは歪められた情報になってしまっている場合もある。本書で扱う科学的知見はそういった単純化されたものではなくより科学の実情に近しい生のデータに触れることができる。そういった点が本書の強みだと思う。

科学に対しての実験結果というのは、そこに何かしらの解釈が施される。場合によっては様々な解釈の余地がある結果もあるだろう。そういった曖昧さをわかりやすくせず、わかりにくいものに真正面から向き合う、そんな情報を提供してくれるのがこの本である。

そのわかりにくい情報を用いることで実際に悪い習慣を直したり良い習慣を作りだしたりすることはできるのかと問われれば、まだ科学的には確実な方法論が確立されているとはいいがたいが、それでもヒントとなる情報はあると感じた。なので機になる人は読んでみることをオススメする。

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』

kindleのunlimitedで無料で配信されていたので手に取ってみた。

バッタ好きの著者が研究のためにアフリカのモーリタニアに行き、現地での過酷な研究生活が語られるという内容。これだけ書くと硬い内容なのかと思う人もいるかもしれないが、語り口が軽妙で思いのほかサクサク読める。

やっぱりこういう体験記は面白い。生の体験があるというか、創作物では体験できない生々しさがある。入国後すぐに酒を没収されたり日本からの郵便物を受け取るときにひと悶着あったりと、バッタ以外の部分でもエピソードが豊富で面白い。昆虫研究者がどう支援金をもらって研究をしているのかという点も切実に書いてあるのでそういった観点からも興味深い内容となっている。

現地で雇った運転手のティジャニがいいキャラをしている。多少誇張はあるのかもしれないけど彼についてのエピソードも豊富でアニメかと思うくらいにキャラが立っている。そういったバディものとしての面白さもあると思う。続編も刊行されているようなのでそのうち読みたいが、ちょっとお高めな(最近の本は高すぎる)ので、kindleで半額になったら買おうかなと思っている。このまま著者の研究生活が何十年も続いてバッタ研究を進めて欲しいと切に願う(体験記の続きが見たいので)。

雨森たきび『負けヒロインが多すぎる!』

アニメの1話を観て面白かったので原作も手に取ってみた。読んでみると原作も面白い。

八奈見杏奈というキャラクターが良い味を出していると思う。負けヒロインのよくある要素をたくさん取り入れてはいるけど、なぜだか新鮮な印象を与えるキャラクターになっている気がする。これは一説として好意の対象が主人公ではなくて別の人物に向けられているから新鮮に見えるのかなと勝手に推定しているがどうなのだろうか。理由はともかく八奈見杏奈は新鮮で魅力的なキャラクターだと思う。

ところどころのさりげない描写が上手いラノベだと思う。たまに見せる八奈見が主人公を心配する描写のようにキャラクター小説にはあまりない質感の心の機微を描いていてそこが好き。負けヒロインという属性を単に記号的に使用しているだけでなく振られたという心情を丁寧に描いている点がとても好み。現時点で1巻は読み終えたがこのシリーズは続けて読んでいこうと思っている。

ゲーテ『親和力』

この本は以前youtubeで紹介している人がいたので気になって読んでみた。

文脈が様々あって正直なところ読み取れないところが多かったと思っている。しかし「あれはこういう意味だったんじゃないかな~?」という推測は建てられるのでその匂わせを楽しむのは面白い。

p334付近に出てきた劇中の話が好き。何気ないところで出てくる箴言のようなフレーズが心に響くし、日本語に訳した文ではあるけどそれでも美しいと感じる部分が多い。このあたりは訳者の技量なので単純にすごいと思う。

本書の解釈の幅は今までにあまり読んだことがないほど広い気がしている。そういった点が評価されているポイントなのかもしれない。それらを掴むためにもまたそのうち再読したい(いつになるかはわからないけど)。

堀内正規『「白鯨」探求 メルヴィルの<運命>』

すでに読んでいた白鯨の理解を深めるために買ってみたのが本書。まだ読み途中だが自分は全然『白鯨』を読みとれてなかったなと思うほど解釈の幅が広く面白い。本書の解釈に従わずとも『白鯨』自体の見方を広げてくれる名著だと思う。

山口昭彦『クルド人を知るための55章』

最近何かと話題のクルド人を知るために本書を読んでみた。

クルド人というのはトルコ・イラン・イラク・シリアという4か国の国境付近に住んでいる民族らしい。クルド人と言っても宗教は様々らしくヤズィーディーやイスラム教など多岐にわたっているとのこと。主にクルド語という言語を話す民族とされるがそのクルド語の中にも地域により方言の差があり相互に通じえないレベルで言語が乖離している場合もあるらしい。クルド人という1つの言葉で括られるが単純にそう括れない民族なのである。

本書を読んでクルド人について把握できたかと言うとそこまでというのが正直なところだ。一応歴史的経緯は知ることができたけど同じクルド人でもそれぞれどの国に住んでいるかで事情も違うしやたらと複雑である。日本の川口に来ているクルド人はトルコの南東部から来ているらしいが、正直そのあたりの説明は少なかったので問題も捉えきれなかった感じがする。

ぶっちゃけいろいろと複雑な事情があるのでそれらをざっくりとしか知ることができなかった気がする。クルド人に限らず中東史は複雑で難しい(さらに言えばいろいろな見方があるので判断も難しい)。

まとめ

本当はもっと他の本の感想も書きたいけどあまり語ることがない本もあったりするので難しい。記憶の定着目的であるならなんでも読書メモに残しておくべきな気もするが面倒という気持ちもあるのでやる気次第である。

こうして振り返ってみると歴史本が多い気がする。特に意識しているわけではないが、なんとなく多くなってしまう気がする。どうせ読むならもっと近しい時代の近しい国同士の本を読んでいく方が記憶の定着にもいいと思うがどうにも興味を優先してしまう。今回の記事にも中東史・日本史・西洋史が混じっているしなかなか1つに絞るのは難しい(どこかの富豪が一定期間は1つのテーマに絞って読むと言っていたが自分には無理そう)。



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