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明日世界が終わるなら、私は塩おむすびを食べたい

「おむすびできたよ」
庭で遊んでいた私たちは、その声を聞くと縁台に駆け寄った。

小学生の頃、夏休みの大半を田舎の祖父母宅で過ごしていた。
おやつは大体、おむすびだった。
力強くギュッと握られた、つやつやの塩おむすび。

祖父母の家にお嫁にきた、みっちゃん姉ちゃんが握ってくれたものだ。
姉ちゃんはふっくらとした、健やかに笑う女性で、塩おむすびはそんな姉ちゃんにそっくりだった。

炊き立てご飯のつやつやおむすび。
しっかり塩の味がして、齧るとふんわり優しく並ぶ、ごはんつぶたちに会える。

ふふ、こんにちは。
ふふ、こんにちは。

こんなにしっかり目が合ったことが、お互いちょっと照れくさくて、ふふ、と笑いながらご挨拶して、いただきます。

ごはんつぶたちは、わあーと言いながらお口の中で小さくなり、ごっくんされて喉を通り、お腹の中でぽかぽかと、いのちを動かす力になる。

お、い、し、い。
身体がじんわり温まり、なんだか元気が湧いてくる。

「ようし、トンボいっぱい獲ってくる!」
あの日のわたしはそう言って、田んぼへと走って行った。

大人になって考えてみたら、お嫁に来たみっちゃん姉ちゃんは、お姑さんに言われて仕方なく、おむすびを握ったのかもしれない。

わざわざ午後3時に、ご飯を炊いて。
あつあつのうちに、ひとつひとつ、しっかり塩つけて握ってくれたのだ。

面倒だったはずだけれど、そんな気持ちの影響を、あのおむすびは全く受けていなかった。
ただひたむきに、つやつやと、いのちの喜びを漲らせていた。

明日世界が終わるなら、私は塩おむすびを食べたい。

夏休みに縁台で食べた、あのおむすびを思い出しながら。

つやつやのご飯つぶたちと、ふふ、こんにちは、と話しながら。

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