淘汰

佐藤大海といいます。 ホテリエ/俥夫/観光MBA

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  • ヒト コト

    京都に暮らす人々の人生、のぞいてみませんか Instagram: @koto_hito_koto ————— 各記事の最下部に店舗情報を掲載しています。 有料設定にしておりますので、「ええやん」の購入をしていただけると幸いです。

  • 日記

    雑多なことをつらつらと

  • コラム

    自分が面白いと思った学びをまとめます。

  • MBA

    学びの咀嚼と再構築

最近の記事

五人目

「お客様のことは、下のお名前に"さん"付けで呼ぶことにしているのよ、私。」 オリジナルステーショナリーを主に扱うその店には、他にもハンドメイドバッグや活版印刷のグリーティングカードなどを置いている。 「ありがたいことに人間国宝の方や東京で有名な女優さんなんかもいらしてくれるけど、"どこどこのお嬢さん"とかでないほうが人と人とのお付き合いができるでしょ。」 こともなげにそう言う彼女は、確かに私のような若輩にも「一人の人間」として接してくれる。 「流行ってるものにはあんま

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    • 開業しました

      去る3月、京都大学経営管理大学院サービス&ホスピタリティプログラム観光経営科学コースを修了いたしまして、この度開業届を提出してきました。 「宿をやる」と決めた22歳から6年、ようやく準備が整いつつあります。 ホテルでの4年の実務経験とビジネスの理論を学んだ2年を経て、理想はMBA修了に合わせて宿を開業ができればよかったのですが、研究が忙しかったりでなかなかそうもいきませんでした。 不動産契約をするのに法人があったほうが保証会社の審査が早い 法人設立後の消費税免税期間を

      • 三、四人目

        西陣の奥まった路地を進んだところにその店は佇んでいる。 扉を開くと、看板猫がそそくさと道を譲ってくれた。 この店では、ハーブやスパイス、香水を扱っている。 「ちょうどいい。」 「空気が優しい。物語の中に住んでいるような心地がする。」 その母娘にとっての京都はそんな場所らしい。 「関わってきすぎないけど影から見守ってくれていて、優しさが含まれた厳しさがある、京都の人には。」 「コミュニケーションが洗練されている。1200年で培われた距離感、関わり方がある。」 店内には

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        • 二人目

          その店は、まるで魔法使いが薬草を調合するために設えたかの様な雰囲気を醸す。 「調子がいい。」 京都がどんな場所か問われた彼は、端的にそう答えた。 「場所と人の関係ってさ、三つあるやろ。"行きたい場所"、"居たい場所"、"帰りたい場所"。京都は"居たい場所"やな、全てにおいて。」 この人はとても鋭い。 思考と信念ゆえのブレなさ、動じなさが、妙に心地良い安心感を醸す。 もちろん100kg超の体格によるところもあるだろう。 「ずっと。」 仕事で楽しい時はいつかを尋ねると

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        記事

          餅は餅屋

          好きなことを仕事にしたい人とそうでない人がいるらしい。 自分は、人生の大半を占める仕事を自分が好きだと思えないことに費やすことが想像できなかったため、当然のように前者を選んだ。 例えば花が好きで花屋になる人、コーヒーが好きで喫茶店をやる人、ゲームが好きでゲーマーになる人、歌と踊りが好きでアイドルになる人、考えようと思えばいくらでもありそうではある。 大人になって感じたのは、みんなそういう選択をあまりとっていないように思える、ということである。 逆に、わたしが京都に魅せら

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          一人目

          そこは延々とThe Beatlesが流れる薄暗い地下一階の店である。 「どんな場所って、そら日本の中心やわなあ。」 京都がどんな場所かを訊かれた彼は、困ったように、そしてさも当然というようにそう答えた。 私が京都に越してきて、初めてこの店でこのマスターと話した時も、 「東京から出てきたんか、大変やなあそんな田舎から」 と言われたので、彼にとっては本当にそうなのだろう。 「勘違いしたらアカンで。"上京"言うんは"京都に上ってくる"ことや。東京に向かうんは"東下り"や。」

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          京都、その魅力

          京都に暮らすようになって丸2年が経過した。 私としては「勉強したいことが京都にしかなかった」という、割と消極的な理由で京都に住み始めたわけで、当初は周囲から耳にする"京都愛"に甚だ懐疑的であった。 2年経った今、私が感じる京都の魅力は、「熱量のある人が多い」ということである。 端的に言えば、「俺はこれが好きだからこれを生業にしているんだ」という愚直な原動力を仕事にしている人が多いように感じられるということである。 もちろん東京にそういった人種がいない訳ではない。 これ

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          Don't let your curiosity be put aside的な

          子供の好奇心には毎度驚かされる。 先日、フランス人の姉弟をご案内した。 姉はフランスの大学院でMBAに通いながら、ダブルディグリーで現在は韓国・ソウルに留学しているらしい。 家族がソウルを訪れたタイミングで日本にも足を運んだとのことであった。 ガイド中に干支の話になった折、とても興味を示してくれた様子であったので、時間を割いて陰陽道・道教・易経にインスパイアされた日本文化の話をした。 聞くとフランスの特に若い世代の間では、自身の干支を割と一般的に把握しているらしい。 年

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          評価、その二軸

          想像上のメンヘラ女子とその友人の会話である。 「そんなクズ男ぜったい別れた方がいいよ」 「でも彼怒って殴ったりしないんだよね」 何が言いたいかは一旦考えずに保留にしておいていただきたい。 経営学(主に組織行動)には、よく知られた「二要因理論」というものがある。 ハーズバーグによって提唱されたそれは、主には「不満の対義は無、達成感 の対義もまた無、不満の対義は達成感でなはい」というものである。 従業員が職場で感じる満足度に関する研究から導かれたこの理論であるが、要は不満

          評価、その二軸

          先日、X(旧Twitter)である投稿を目にした。 「自分はいつも脳内に思考が渦巻いているのだが普通はそうではないらしい、何をしていても常に考え事をしてしまうのは私だけ?」 といった主旨のものであった。 私もどちらかというと常に頭の中に何かしらの思考が巡っているタイプである。 しかし今回それが"普通"であるかどうかはさして問題ではない。 問題なのは、"記述"が"思考"に追いつかないという点である。 四六時中ではないにせよ、活動時間の大半において頭の片隅で何かしらの思考

          同窓会について、一考

          同窓会の企画をしている。 年明け、小中学校の同級生からメッセージが届いた。 「久しぶりに同級生で集まりたいと思っています。」との旨だった。 ほとんどと言って良いほど絡みがなかった人であるが、おそらく成人式の時に数人で幹事をしていたために私に連絡を寄越したのだろう。 ちょうど京都での生活がひと段落するタイミングであったので、東京に一度戻ろうかとは考えていたこともあり、軽い気持ちで返事をした。 詳細を記そうかと思ったが、今回のことで私が考えたこととは関連がないので省くことに

          同窓会について、一考

          Louis Vuittonとポケモンのフーディン

          私が観光をやろうと思ったのは、知ることの楽しさとそれを伝える楽しさを知ってしまったからである。 未知のものごとに触れる時、ニューロンの間に新たな電気信号の系統が生まれた時、その刺激は時代と人を問わず共通だろう。 そんなわけで、私自身が日常の生活で「へえ〜」と思ったことを備忘録的に書いて残しておこうと思う。 知ることによる驚きにはいくつかあるというのが私の持論だ。 一見全く関連がないような2つのことが繋がる驚きは、新鮮な感動として記憶に刻まれる。 今回は、最高級ラグジュア

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          観光資源のサプライヤーとしての伝統工芸産業と、その供給をインバウンド需要につなげる「流通の場」としての宿泊施設

          前回割愛したので、どうして「外国人観光客に日本の魅力を伝える瞬間が楽しい」から「五つ星ラグジュアリー旅館を作ろう」になったかをもう少し記したいと思います。 今、必須科目でマーケティングの授業を受けています。その中で、事業というものは、「誰に(顧客)」「何を(機能)」「どのように(技術)」提供するかによって定義されるといいます。学生の頃の私にとってそれは、「外国人観光客に」「日本の魅力を」「ガイド(話術)で」届けるというものでした。このうち、私は自分の進路を考えるに際し、「外

          観光資源のサプライヤーとしての伝統工芸産業と、その供給をインバウンド需要につなげる「流通の場」としての宿泊施設

          私の近況

          ご無沙汰してます。 初めて、私のことを知っている人の目に触れる想定で文章を書いています。 書こうと思った理由には様々あるのですが、とりあえず割愛します。 私は現在、京都大学経営管理大学院観光経営科学コースというところで大学院生をしています。 所属名はえてして長くなりがちですが、要はMBAを取得するためのビジネススクールの中の、観光に特化したコースです。 なんでまたそんなところに、といった経緯を綴ろうと思います。 就活生の葛藤ーありきたりなやつ そもそもの話は5年前の就

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          マーケティングと結婚

          経営学の中でも花型の1つがマーケティングです。 というか、世の中の意識高い系の皆さんが揃って口にしますよね、マーケティング。 私はぶっちゃけ意識高い系ではありませんし、バリキャリエリートでもありません。この4月に授業を受けるまでマーケティングって言葉の定義も全く知りませんでした。 4月から始まった講義でマーケティングの授業があるんですが、その教科書の導入部分の、マーケティングとは何か、の話がおもしろかったので残しておこうと思います。 つまりどういうことかというと、マーケ

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          観光を噛み砕いて考える

          クールジャパンという言葉が定着し、東京オリンピックの誘致が決まったことも後押しして、日本が観光立国を目指す、という共通認識が生まれてから早数年経つ。 私もその流れを受け、外国人観光客からの確かな日本への観光需要を感じて観光業界へと身を投じた1人であるが、今回は改めて観光という産業を考えてみたい。 観光を輸出産業と捉える考え方がある。教授の名前も忘れてしまったが、私が学部生だった時に何かの講義で聞いた話だ。固有の資源を売る、という大枠で考えれば、確かに頷ける話だと、当時は目

          観光を噛み砕いて考える