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三、四人目

西陣の奥まった路地を進んだところにその店は佇んでいる。
扉を開くと、看板猫がそそくさと道を譲ってくれた。
この店では、ハーブやスパイス、香水を扱っている。

「ちょうどいい。」
「空気が優しい。物語の中に住んでいるような心地がする。」

その母娘にとっての京都はそんな場所らしい。

「関わってきすぎないけど影から見守ってくれていて、優しさが含まれた厳しさがある、京都の人には。」

「コミュニケーションが洗練されている。1200年で培われた距離感、関わり方がある。」

店内には、モロッコで買い付けてきたハーブやここで蒸留した香料など、様々な種類の知らない香りが満ちている。

"香りの実験室"では、香料にまつわる歴史や逸話などを学びながら自分だけの香水の調合ができる。

「割と常に楽しい。」
「仕事とも思っていないかもしれない。自分が楽しいと思うことしかしないようにしてるから、傍から見て大変と思うことも本人は大変と思っていない。」

仕事をしていて楽しいのはどんな時か尋ねられた彼女たちは、そう言って笑った。

看板猫のクレオ。写真を撮られ慣れている。

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