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五人目
不思議な出会いというのは存在する。
散髪に出かけた日のことだった。
家を出る時にふと、「名刺が必要になるな」と思い、街に向かった。
散髪を終えて喫茶店に向かおうと思い歩いていると、やたら惹かれる佇まいの店に出会った。
看板は無く、翡翠と言うには少し深い緑の扉に、赤い郵便ポストがよく映える店構えであった。
今回は、少しの緊張感を楽しみながら開けた扉の先で、私がその日に名刺の制作をお願いした人の話である。
「お客様のことは、下のお名前に"さん"付けで呼ぶことにしているのよ、私。」
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オリジナルステーショナリーを主に扱うその店には、他にもハンドメイドバッグや活版印刷のグリーティングカードなどを置いている。
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「ありがたいことに人間国宝の方や東京で有名な女優さんなんかもいらしてくれるけど、"どこどこのお嬢さん"とかでないほうが人と人とのお付き合いができるでしょ。」
こともなげにそう言う彼女は、確かに私のような若輩にも「一人の人間」として接してくれる。
「流行ってるものにはあんまり興味がないのよね、私が好きだと思うものを置くようにしているの。」
イタリアをはじめとしたヨーロッパ各地の職人たちの手仕事の品々は、彼女の琴線に触れたという共通項に括られて、静かに、しかし確かな存在感を放って店内に並べられている。
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「ここで出会ったものを手にして嬉しそうにしてくれるのを見ることかな。」
仕事の醍醐味を尋ねられた彼女は、恐らくは出会ってきたたくさんのお客さんの顔を思い出しながらそう答えてくれた。
彼女にとって京都がどんな場所か尋ねた。
「原点…かしらねえ。」
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京都に生まれ育った彼女にとって、そこは懐かしい思い出の地でもある。
「三条通りをね、通るときに夕焼けがとっても綺麗なの。京都って空が広いわね。」
カメラを向けられた彼女は、"チャーミング"という表現がとてもしっくりくる笑顔で笑った。
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