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【活動日記】『声を届ける仕事がしたいと強く感じた初めての政田1人取材』~野々村チェアマン来岡~

4月6日。9時半。スマホが鳴った。寺田さんからの電話だった。

「山形戦が再試合になった経緯の説明をするために野々村チェアマンが政田に来るから、取材に応じる野々村チェアマンと北川社長のコメントを取って、写真も撮ってきてほしい」

そういう内容だった。

寺田さんはサンフレッチェ広島の取材のため岡山にはいない。だから、僕は1人で行くことになる。いきなり訪れた状況に驚いたけど、任せてもらえることがうれしかった。

寺田さんが丁寧に状況を説明してくれた後、僕は勢いよく『分かりました!』って言って準備に取り掛かったけど、不安も襲ってくる。初めての1人での取材がJリーグが始まって30年間で初めての事例になるとは・・・。とは言っても、僕がやることは政田に行って写真を撮りながらコメントを録音すること。シミュレーションしてみると、自分にも十分にできる。自信をもって家を出た。

政田に到着すると、いつもより赤いビブスを着た人が多いことに驚く。岡山のテレビ局の人たちがすでに待機していた。駆け足でクラブハウスの入り口に行き、スタッフの方に挨拶をして受付を済ませる。今までで一番重みを感じる赤いビブスを着て緊張感が高まってくると、亀井さん(山陽新聞)を発見した。政田に行くようになってから亀井さんとはサッカーの話や仕事の話をさせていただいていている。とても優しい亀井さんを見つけて、すごく安心した。

亀井さんや広報の瀬島さんとお話しながら待っていると、経緯説明を終えた野々村チェアマンと北川社長がクラブハウスから出てきた。正面玄関の前にスポンサーの名前が書かれたインタビューボードが立てられていて、そこに20人以上の赤いビブスを着た人たちが待機していた。

インタビューはまず野々村チェアマンから始まった。寺田さんからの『写真を撮るときはスマホを邪魔にならないところに置けばいい』というアドバイス通りに、テレビ局の方がカメラの前に置いたマイクの端っこに置かせてもらう。瀬島さんに『もう少し前に置きなよ』って背中を押してもらって位置を微調整し、録音を始めた。

そして、カメラを構える。ここでも寺田さんからの教えを意識する。とにかくシャッターを切り続けるんだ。いろんな角度からたくさん写真を撮り終え、質問に答える野々村チェアマンの話に耳を傾けた。

次に、北川社長がインタビューボードの前に立つ。僕は同じように写真を撮ってコメントを録音する。3分という短い時間だったけど、社長の言葉からは悔しい気持ちが滲み出ていた。でも、それ以上に『前を向いていくんだ』っていう強さを感じた。クラブを代表する社長のメッセージを目の前で聞き、僕は鳥肌を立てていた。

取材が終了した。過去に録音できていなかった失敗をしたことがあったから、その場で再生してちゃんと録音できているか確認する。耳を当てると、野々村チェアマンと北川社長の声が聞こえてきて胸を撫でおろした。

「ありがとうございました」とお礼を言い、クラブスタッフの方にビブスを返却し、寺田さんに音源を送ってから帰路に着いた。

寺田さんが一緒ではない初めての取材は、緊張した。『失敗したらどうしよう』ってずっと不安だったけど、何とか仕事を全うすることができた。これまで自分にできないことが多すぎて自分に自信が持てなかったけど、少しは役に立てたのかもしれないと思うとうれしくなる。ファジラボの読者の方々にコメントを届けることができ、やりがいを感じることもできた。

現場の声を届けるサッカーライターになりたい。そういう想いもより一層強くなったんだけど、声を届けるってどういうことなのか。

そもそも、『声』っていうのは何なのか。真っ先に頭に浮かぶのは、しゃべるときに出る音。人と会話をしたり、テレビを見たり、ラジオを聞いたり、耳を通していろんな情報を得ているいし、笑ったり驚いたりして感情も動かされている。

辞書を引いてみると、『声』には「人々の考え、意見」っていう意味もあった。僕が届けたいと思ったのは、これだ。

寺田さんの仕事をお手伝いさせてもらい、僕は「何を考えてプレーしているのか」「どんな想いで試合に臨んでいるのか」といった、監督、選手の想いに触れる機会をいただいている。

想いっていうのは内に秘めているものだから、目には見えない。聞かないと、分からない。

野々村チェアマンの話を聞くと、選手、サポーターに寄り添ったコメントをされていた。これはリリースを見ただけでは分からなかった内に秘めた思いやりだと思う。記事を読んで野々村チェアマンの誠意を知って、再試合に対する考え方が変わった人がいるかもしれない。少なくとも僕は前を向けた。だから取材をして、想いを聞き、記事を通して伝えるんだ。読んだ人が監督、選手、サッカーに関わる人の想いを知って、もっと好きになる、もっと応援したくなる。そんな記事を書いて想いを伝えたいんだ。

それがサッカーライターとしての声を届けるって仕事だ。今はSNSで自分の想いを発信できるけど、人に聞かれることで初めて気づく想いもある。僕は寺田さんに問われることで、自分では思いつかなかった隠れた想いを引き出された経験を何度もしている。だから、当事者だけの情報発信だけじゃなくて、声を届ける第三者の存在は今後も必要だと思うんだ。

『人の想いを伝えること=声を届けること』を仕事にしている人はたくさんいる。テレビ局の人たち、新聞記者さん、ラジオパーソナリティ。インタビューや取材をすることで人の想いを受け取って、いろんな媒体を通して多くの人に届けている人はたくさんいる。だけど、声を届けている人は、想いを持っている人と受け取る人の間に立っているから、いわば仲介役だ。正しく適切に届けないといけない。配達員が荷物を壊してはいけないのと同じように、読者、視聴者、リスナーに、ちゃんと届けないといけない。

すごく責任の大きな仕事だと思う。だけど、声を届けることで、それまでは本人しか知ることのない内に秘めた想いが多くの人に知れ渡って、多くの人の感情を動かすことができる。とてつもなく大きなやりがいを感じることのできる仕事だとも思う。

僕も、そのやりがいをもっと感じたい。サッカーライターとしてサッカーに関わる人の声を届けることで、サッカーを面白いって思う人を1人でも多く増やしたい。今回、初めて1人で取材に行くことになって、『声を届ける仕事がしたい!』っていう想いがすごく大きくなった。


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