【レビュー】『拮抗打破、難敵撃破』~第3節ファジアーノ岡山VSレノファ山口~
試合結果
スタメン
マッチレポート
良い守備から良い攻撃へ。
狙いを寸断した岡山に軍配。
両者ともに攻撃ではチームとしての狙いを体現し、守備では粘り強く対応する。拮抗した好ゲームを制したのは、焦れることなく戦い続けた岡山だった。
前半は山口が深さを作りにいくところからスタート。サイドに流れる梅木を基準点に全体の陣形をコンパクトにし、後方からロングボールを蹴り込んでいく。梅木の競り合いから生じるこぼれ球をボランチが回収し、新保の推進力を生かして左サイドからの前進を図った。対する岡山は、左右で異なる設計をもとにニアゾーンを取りにいく。右サイドは柳貴が外側から相手SBの背後を取る動き、左サイドは田部井や岩渕が相手SBとCBの間から突き抜ける動きでスルーパスを引き出す。
山口は2分に田邉が相手陣内でこぼれ球を拾い、河野がミドルシュートを放つ。幸先よく試合に入ったが、それ以降は岡山が山口の攻撃を断ち切った。柳育、阿部、鈴木が力強く弾き返し、3バックの前に素早く立ち位置を取る藤田がルーズボールを回収する。ならばと、山口は後方からパスを繋ぐ。しかし、岡山の3トップが相手ボランチを消しながらプレスを掛け、外回りにさせた。岡山が良い守備からリズムを作ると、16分に藤田のスルーパスに反応した柳貴が馬力で抜け出してシュートを放つ。23分にはニアゾーンを取った田部井の折り返しをグレイソンが合わせたが、GK関の好守に遭った。
0‐0で迎えた後半は山口が2トップを縦関係に変えた。若月が背後に抜け出し、梅木がその後ろで起点を作ろうとする。しかし、岡山の守備陣が落ち着いて対応した。柳育は若月のケアと梅木との空中戦という仕事を完ぺきにこなし、阿部と鈴木も徹底的にサポート。後ろが盤石の体制を整え、全員でゴールに向かう姿勢を強く打ち出す。61分には末吉がPA左奥に進入したが、藤田のシュートは枠外へ。
両監督が積極的な選手交代を行う中、活性化したのは岡山。高橋が左サイドを突破し、ルカオがパワーで圧力を加えると、84分、ついに均衡を打ち破る。田部井のCKを柳育が頭で合わせ、一度はGKに弾かれるも、途中出場の田中が押し込んでみせた。そして、アディショナルタイムのほとんどを相手陣内で過ごしてタイムアップ。ラストプレーで同点弾を浴びた前節の引き分けを払拭する勝利を収め、Cスタが歓喜に包まれた。
コラム
結果へのこだわりが実を結ぶ。
田中雄大、10番としての矜持。
スコアレスドローが頭を過り始めた、84分だった。バックスタンドの大声援を背にした田部井のCKは、高いボールでファーサイドへ。そこに待っていたのは柳育。圧倒的な空中戦の強さを発揮し、ヘディングシュートを叩きつける。これはGK関に弾かれるも、こぼれ球を途中出場の田中が体で、いや、魂で押し込んだ。
ルーキーイヤーの2022シーズンから開幕スタメンを勝ち取り続けてきた田中。入団3年目は10番に変更し、チームを背負う強い覚悟を持って今季に臨んでいる。しかし、新戦力の加入によってベンチスタートが続き、思い描いたスタートとはならなかった。
それでも、腐らなかった。
足元でパスを引き出す強みを出しつつ、自分に足りない部分とも向き合い続ける。練習から背後への抜け出す回数を増やし、ゴールへのベクトルをさらに強めた。
今季初先発を飾った6日のルヴァンカップ1回戦では、2アシストを記録。結果への思いが強さから力んでしまい、シュートが枠を捉えられず。しかし、積極果敢にゴールへ向かい続けた。
今節、「絶対に活躍してやる」という強い気持ちが実を結んだ。拮抗した試合で値千金の決勝弾を挙げ、チームを勝利に導く。背番号10として、これ以上ない活躍。結果を残して自身の価値を証明してきた田中らしい、ゴール前での鋭い嗅覚を感じる得点でもあり、自分を信じ続けてきた芯の強さを感じた。