【レビュー】『進撃のルカオで逆転。しかし、勝点1』~第39節レノファ山口VSファジアーノ岡山~


試合結果

2023 J2 第39節
10/22 12:30K.O. @維新みらいふスタジアム
山口(1-2)岡山
28分 梅木翼
61分 ステファン・ムーク
84分 坂本一彩
90+7分 池上丈二

スタメン


マッチレポート

結果を左右する個の力。もぎ取った勝点1とこぼれ落ちた勝点3

試合は「PRIDE・OF・中四国」にふさわしい、高強度の中で展開された。立ち上がりから両チームが球際を激しく戦い、ピッチの至る所で肉弾戦が繰り広げられる。攻守の切り替えも鋭く、「相手にボールと主導権を渡したくない」という強い意志が、一つひとつのプレーからひしひしと伝わってきた。互いにFWが特長を発揮してチャンスを作っていく中、山口が徐々に中盤での競り合いで優位に立つと、一瞬の隙を突く。スローインに反応した皆川が相手DFを背負いながらアウトサイドでゴール前に折り返すと、梅木がボレーシュートを突き刺した。

先制を許した岡山だったが、力強く反発していく。チアゴ・アウベスとステファン・ムークが個人技で相手守備ブロックをこじ開け、43分にはPA内でのチアゴとのワンツーからムークがシュートを放つ。しかし、これは相手DFのブロックとGK関のセーブに阻まれた。

1点ビハインドのまま迎えたハーフタイムに木山監督が動いた。輪笠に代えてルカオを投入すると、この采配がズバリ的中する。背番号99が規格外のパワーとスピードで、前半に警告を受けた平瀬のいる山口の右サイドを狙い撃ち。次々とチャンスを作り出していく。山口は彼の進撃を止めることができず、ピッチは大暴れするルカオの独壇場となった。57分にはルカオのスルーパスに抜け出したチアゴがPKを獲得。これはGK関にストップされるも、61分に追いつく。田中雄大の中央突破からルカオがシュートを打ち、こぼれ球をムークが詰めた。そして84分にはルカオが相手に競り勝ちながら抜け出すと、最後は途中出場の坂本が押し込む。背番号48の3カ月ぶりとなる得点で、ついに試合をひっくり返した。

しかし、このままでは終わらない。次々と選手交代をおこなった山口は最後まで相手ゴールに向かい続けると、試合終了間際だった。沼田が坂本から素早くボールを奪い返し、連続して縦パスをつなぎPA手前でFKを獲得。90+7分、たっぷりと間合いを取った池上のシュートは壁を越えて美しい軌道を描き、ゴール左に決まった。

勝点3がこぼれ落ちた岡山は2試合連続の引き分けで、プレーオフ進出に向けて痛恨の足踏み。自力での残留を目指す山口は、何とか土壇場で勝点1をもぎ取った。ただ、鮮やかなFKを決めた池上を筆頭に試合後のピッチには、満足する者は誰もいなかった。


コラム

3カ月ぶりに復帰した田中雄大。もたらしたダイナミズム

最後の最後で山口に追いつかれ、3試合ぶりの勝利を手にすることができなかった岡山。しかし、収穫もあった。第30節・大宮戦(△1‐1)から負傷離脱していた田中雄大が、約3カ月の時を経てピッチに帰ってきたのだ。

インサイドハーフで先発すると、確かな違いを作った。90分間を通してハードワークをしながら、中盤で相手を外してゴールに向かっていく。守備ブロックの急所を見つけるポジショニング。密集地をもろともしない正確なボールコントロール。小回りの利いたターン。相手の重心を突いたドリブル。そして、自らがシュートを打つことのできるゴール前のポイントまで潜り込んでいく。パスを引き出してからゴールに突き進むプレーは、チームにダイナミズムをもたらした。

実際、61分にステファン・ムークが決めた得点のキッカケを作ったのは、田中だった。本山遥からの縦パスを受けると、巧みなターンで前貴之をかわしてルカオに鋭いパスを送った。それだけではなく、田中は足を止めずにゴール前に進入し、こぼれ球に反応してシュートを放っている。その結果、ゴール前が混戦になり、ムークの得点が生まれた。

復帰戦でハイパフォーマンスを見せた田中だったが、試合後は悔しさを滲ませた。「チームを勝たせる」。強い気持ちで臨んだからこそ、引き分けの結果は満足いくものではなかった。今季は残り3試合。チームを勝利に導き、プレーオフを勝ち取って弾ける背番号14の笑顔が見たい。



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