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思い出すのは未来の恋路

なんとなく、昔の写真を見返していたら
とある映画館の前
当時流行っていた作品のチケットを持って
ポスターの前で手元だけ写した二人の写真を見つけた

日付を見るとそれはもう十年前で
でもこの時の事ははっきりと覚えているのは
当時付き合っていた彼女との最後のデートだから

その人とはそれ以来一度も会っていない
共通の友達もいないから
その後も、今何をしているのかも全くわからない

お互いに十年ずつ歳を取って
新しいパートナーを見つけて、別れて
もしかしたら家族を持って子供もいるかもしれない

記憶の中では若いままの彼女との月日が
走馬灯のように浮かんで流れた

その時見たのは国民的アニメの映画
そのキャラだけは昔から全く変わらずに
今でも街のあちこちで見かけた

僕が子どもの頃からずっと同じ姿を保っていて
ずるいな、と思いつつも
ロボットだからそりゃそうか、と苦笑う

別れた理由は何だったっけ?
たぶん凄く些細な事
それが積み重なって絡まってほどけなくなって

雑貨屋で出会った映えそうな物や
服屋で一目ぼれしたちょっと高いアウターが
年と共に似合わなくなって行く、そんな感じだろう

何年か経てば一周回ってまた愛着も湧くんだろうが
僕たちはそれを乗り越えられなかっただけの事

この映画を見た時も
号泣した彼女と冷静な僕
その違いからも合わない事を証明していたのかも

「タイムマシンに乗りたい」と僕
「着せ替えカメラが良いな」と彼女
「もしもボックスは?」と僕
「グルメテーブルかけがいいよ」と彼女

見終わった後に入ったカフェで
誰でも一度はした事があるそんな会話をしたっけ

「タイムマシンでどの時代に行きたいの?」

そう聞かれた時に用意していた答えは
聞かれる事の無いまま今も持て余している

姿を消した彼女はもしかすると
どこかでタイムマシンを手に入れて
どこかの時代にでも旅立ったんだと
そう考えたら傷もやわらいだんだ

そんな事を色々と思い出しながら
写真を過去へとスクロールして行く

一年、また一年と若返る彼女の姿は
ある日を境にカメラロールからいなくなった

あの時聞かれなかった
どの過去に行きたいかの問いに

幼い頃の、高校生の時の
僕と出逢う前の君の姿を
過去に戻って見てみたい

それを言っていれば
君はどんな反応をしただろうか?


カフェで書いたりもするのでコーヒー代とかネタ探しのお散歩費用にさせていただきますね。