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感想

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映画や本の感想のまとめです
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LA LA LANDは「ハッピーエンドじゃない」のか

LA LA LANDは「ハッピーエンドじゃない」のか

映画『LA LA LAND』が金曜ロードショーで初めて地上波で放送されました。

これを機に、大好きなララランドの、私にとっての一番の魅力について書いてみようと思います。

私がLA LA LANDを観たのは、1年ほど前です。DVDを観終わってすぐに思ったことは、

なんで今まで観てなかったんだ!
ていうかなんで映画館に観に行かなかったんだ!!!!

ということでした。
世間で売れてるからってすぐ

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少しずつ、大丈夫になること

少しずつ、大丈夫になること

先日、はじめて映画『海街diary』を観ました。

「少しずつ、大丈夫になる」ということを思いました。

海街diaryは、鎌倉に住む幸、佳乃、千佳の三姉妹が異母姉妹であるすずを引き取り、一緒に暮らしていくという物語です。
鎌倉の海や桜など美しい景色とともに、4人の交流が描かれています。

映画の中で、すずはさまざまな悩みを抱えています。
父のこと、父が再婚した義母のこと、三姉妹から父を奪ったのは

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映画「ニシノユキヒコの恋と冒険」を観て

川上弘美の「ニシノユキヒコの恋と冒険」の映画版をようやく観ることができました。
……すてきでした。
原作が好きすぎたこともあって、あんまり期待せずに観たのですが、予想以上の内容…
井口奈巳監督さすがです。
セリフとか表現とか原作とは違っているのに、原作と全く同じ、好きだなぁ…という感覚を残していってくれたんです。
「いま、会いにゆきます。」の監督が、映画化は直訳でも意訳でもなく翻訳なのだ。と言って

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実写版「美女と野獣」の話

実写版「美女と野獣」のDVDがもうすぐ発売ということで、今さらながら映画の感想です(ネタバレどころかシーンの細部まで話しているので、気になる方は注意を…)。

今回の映画の感想、というよりは実写版を経て得た洞察を加えて改めて「美女と野獣」について考えた、というかんじです。

率直に本当に素晴らしい実写化だったと思います。映像の美しさ、実写ならではの細かい造形、フランス的な繊細な美しさ、どれをと

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「言葉はこうして生き残った」を読んで

岡山大学で近いうちに著者の河野通和さんの講演があると聞き、かねてより読みたいと思っていた本書を手に取りました。
前半の1〜4章を読み、そして講演の日をちょうど挟むようにして後半の5〜7章を読みました。
講演のはじめ、本書を紹介するなかで、司会を務められた文化人類学者の松村圭一郎さんと河野さんの間に、次のようなやり取りがありました。
「河野さんは涙もろい方なんですか?」
「涙もろいかはわかりませんが

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川上弘美はゆうれいなのかもしれない −−『大きな鳥にさらわれないよう』を読んで

川上弘美の『大きな鳥にさらわれないよう』を読みました。

川上弘美の真骨頂だ、と思う。
そして、川上弘美というひとの書くものにどうしてこんなに惹かれるのかということについて思い至りました。

遠い未来のSFでありながら、いっぽうでこれは神話でもありました。
遠い未来、人類が衰退してゆく物語です。おそらくディストピア小説と呼ばれるものだと思います。
ディストピアというのは、もっと私から離れたもので、

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