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こいつ、おれのこと好きなんかな

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主人公の大学生は女の子に話し掛けられた全ての言葉を勘違いし、オチは全て「こいつ、おれのこと好きなんかな」で終わります。結末は全部同じなので、話し掛けられる台詞と、過程を楽しんでく…
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2020年6月の記事一覧

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑳』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑳』

「そうだ なつ あそぼ?」


「そうだ、京都行こう」と「くうねるあそぶ」のコピーライターが書いたような、キャッチーなセリフを僕に投げてきた。二つのコピーを同一人物が書いたかどうかは知らない。

3限終わり、彼女の言葉で、夏の始まりを実感する。今年は5月くらいから既に暑く、感覚が麻痺していた。
日差しが差すアスファルトを見ると、夏はもう始まっているんじゃないかとぼんやりと考えることもあった。

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑲』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑲』

「めちゃくちゃ、濡れてるよ?」


雨の水曜日、駅からキャンパスまでのわずかな道のりを傘も差さず歩いた結果だ。
そこまで降ってないと思い、早歩きで通り抜けたが、服とリュックはビショぬれだった。
一つ後ろの席に座っていた彼女が、僕の濡れた後姿を見て思わず声を掛ける。

別に怒られたわけでないが、「あ、すんません」と謝る。
同じクラスの子だっただろうか、あまり覚えていない。学部の授業なので、同じ学

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑱』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑱』

「HY、歌える?」

高校の頃の同級生と、久しぶりに飲みに行った。
二次会はカラオケ、ありきたりの展開だ。
男子3人女子3人で入るカラオケボックスは、酔いのせいか少し狭く感じる。

隣にはクラスでも明るく、モテていたあの子が座っている。デンモクを渡されたときの笑顔がかわいかった。
履歴を見ると、aikoとクリープハイプがずらりと並ぶ。この子の人生を勝手に想像して、なぜか抱きしめたくなる。
きっと、

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑰』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑰』

「このワイドパンツ、買ったの!」

聞いてない

と思うことが多々ある。
同じクラスの彼女は、開口一番の報告をマメにする。ホウレンソウを重んじる会社であれば褒められる行為であろう。
しかし、ここは会社でないし、僕は上司でもない。
あと、報告の内容が、どうでもいい。

前に会ったときは飼い犬のうんちが柔らかかった話をされたし、その前は燃えるゴミの日にミックスペーパーを捨ててしまった話をされた。

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑯』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑯』

「あー、暑いですねえ…」

春と夏の間の、名前がない季節。
梅雨が始まる前の、初夏のフライングみたいな季節。
雨気と暑気が入り混じった、うだつの上がらない季節。

話すことがないときに、気温と天気の話をしてしまうのはどうしてだろう。
夏は「暑い」、冬は「寒い」、「晴れですね」、「雨ですね」、微妙な関係の男女の会話の行き着く先は、これに尽きる。

Siriやアレクサでもスムーズにできるやり取りだが

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑮』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑮』

「おっきくなったね」

彼女は同じマンションに住む二個上の先輩。
小さい頃はよく遊んでもらったらしいのだが、どうも記憶が曖昧だ。
彼女が都内の私立中学に進んでから、遊ぶこともなくなった。
たまにエレベーターや部屋の前ですれ違うと挨拶をする程度だった。

そんな彼女が、部屋の鍵を開けようとした僕に急に話し掛けてきた。
マンションの六階の廊下。慌てて振り返る。
シンプルに驚いたし、なぜこのタイミングな

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑭』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑭』

「ねぇねぇ、写真撮ろ?」


バイトの歓迎会に誘われた僕は、一枚の写真に納まることを迫られる。
お酒のせいで赤くなった彼女の顔を、じっと見つめる。
何か言おうとする僕を無視して、iPhoneを宙に掲げる。

僕は女の子と一緒に写真を撮った経験がほとんどない。
遡れば中学校の修学旅行や小学校の運動会、幼稚園のお昼寝の時間など…。
覚えていないだけで実際にはあるのだろうが、それを「女の子と一緒に撮

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑬』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑬』

「このワンちゃん、なんていう名前なの?」

僕は、LINEのアイコンを誰かの犬の写真にしている。
ネットから拝借した、どこの誰かもわからないチワワの写真。

フォト無精の僕は、アイコンを何にすべきか皆目見当もつかなかった。
自撮り(お前の顔面をおれのタイムラインに乗せてくるなよ)、友達と映る写真(お前の友達と思われるのハズいからやめてくれよ)、デフォルト画像(逆にデフォがかっこいいと思ってんじゃね

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑫』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑫』

「今度、飲み行こうね!」

バイト終わり、彼女は必ずそう言って去って行く。
「来週のサザエさんは〜」ばりに毎週毎週欠かさずに言ってくる。
雨の日も、雪の日も、彼女がメイクを忘れてマスクをしてた日も。
僕は「うん、絶対ね」と返して見送った後、「今度」の意味をスマホで調べる。

「最も近い将来・この次・次回」
今度という意味を考えれば考えるほど、わからなくなってくる。
近い将来なのに、どんどんどんどん

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