テニス上達メモ045.「テニス」も「年収」も上がるコンフォートゾーン脱出法
▶「負けたい自分がいる」って!?
「テニスの試合で、本当に勝ちたいですか?」
こんなふうに尋ねると、「そんなの当たり前じゃないか!」「勝ちたいに決まってるだろ!」と、当然のごとく(半ば怒り気味に?)返ってくるかもしれません。
でも実は一方では、「本当は勝ちたくない自分」、もっといえば「負けたい自分」がいるかもしれない、というお話です。
▶意識は「潜在意識」にあらがえないから
それは、「自分はまだそんな実力じゃない」「勝ってしまうと、目立つのがイヤだ」「周りの人に見直される気恥ずかしさがある」「勝利者スピーチを考えるのが面倒」などなど、人によりさまざまな理由が挙げられるかもしれません。
「そんなはずはない!」と、意識上は考えるかもしれないけれど、それらの反応は、意識的な考えの及ばない潜在意識の領域で行われるから、厄介です。
厄介だけど、上手く手なづければ、みるみる好転する、というお話です。
これが心理学の提唱する「コンフォートゾーン(快適領域)」の概念。
簡単な心理実験をやってみましょう。
▶「年収2000万円」はいかがですか?
たとえば今、ご自身の年収が500万円だとする。
だけどリストラの対象になって、転職を考えなくてはならなくなりました。
年収2000万円の募集があったら、どうでしょうか?
「自分には難しいに違いない」「無理だ」などと、選択肢から外してしまうのではないでしょうか?
むしろ案件が、同じ年収500万円くらいだったり、下手をするとリストラされた負い目もあって、年収400万円くらいの募集だったりすると、「自分にもできそうだ」「ふさわしい」などと「安心できる」から、今より待遇が低いにも関わらず、そちらへエントリーしたほうが、「心理的にコンフォート」だったりする。
そうして年収2000万円のほうは、受けてもみる前から「落ちる」と、決まっているわけでもないのに、最初から挑戦をしないのです。
これが、イメージにはあらがえない事例。
▶「自己肯定感」が人生を作る
自分(の価値)に対するイメージ、すなわち「自己肯定感」にも関わる話なのは言うまでもありません。
転職に限らず、学校の成績も、恋愛対象も、そしてテニスの成績も、一つひとつの選択の積み重ねが、私たちの人生を作っています。
こんなイケメンとは釣り合わないから、「もっと手ごろな男子こそ私にはふさわしい!」などと感じると安心できて、「こんなイケメン」に、声をかけられなくなるのです。
条件的に不利だと、頭では分かっていながら、コンフォートなイメージに基づいて、そちらへ突き動かされるように、選択せざるを得なくなる。
▶その「ポジション」怖くないですか?
確かに転職活動の例は、漸進的な変化かもしれませんけれども、テニスコート上ではコンフォートゾーンがズレていると、急進的かつ衝動的に、誤った動き方へ突き動かされてしまうからミスをするのです。
テニスコート上のコンフォートゾーンとは、具体的には「ポジション」です。
各自、コンフォートに感じるから、そのポジションに構えているわけですけれども、逆に言えばそこ以外に立つのが「怖い」のです。
これは、ズレている(だけど心理的に安心する)コンフォートゾーンに導かれて、そこに構えずにはいられない(あらがえない)、「ミスしたい自分」と言えます。
▶時給「千円」のほうが、「安心する」
「負けたい自分がいる」と申しました。
ほかにも、「不幸になりたい自分」「苦しみたい自分」「みじめになりたい自分」「貧乏でいたい自分」がいます。
「お金持ちになりたい!」とは願いながらも、その人のコンフォートゾーンしだいでは、時給「1万円」よりも、時給「千円」のほうが、「安心する」のです。
よくも調べもせずに、「長時間労働を強いられるに違いない!」などと、時給1万円のほうを「不快」にすら感じて、敬して遠ざけてしまうのです。
コンフォートゾーンの、簡単で、楽にできる高め方・脱出法については、のちほど詳述。
▶人は「落ち着きたい」
たとえばテストの平均点数が50点の生徒が、たまたま90点を取ったとします。
するとどうなるかというと、その生徒は次はちゃんと10点を取って、平均点を50点付近に戻します。
50点付近が、彼のコンフォートゾーン。
「50点を取る自分」というセルフイメージどおりだから、安心できて、心理的に居心地が良いのです。
90点を取ってしまうと、自分の、普段どおりの、落ち着くセルフイメージと乖離するから、居心地が悪く、あえて(無意識下で)低い点数を取る操作が働いて、「落ち着こうとする」コンフォートな選択が行なわれます。
▶「無明」の領域
別の言い方をすると、安定性を保とうとする、本能に備わるホメオスタシス(恒常性維持機能)による。
その人の体温や体重と同じように、一時的には高熱を出しても、やがて平熱に戻るし、ダイエットをして一時的にはやせても、やがてリバウンドする。
心身のコンフォートゾーンがその領域に設定されている限り、そうなるようにできているのです。
以上のことは、頭で意識的に考えて反論しても(「いや、私は本当に年収2000万円がほしい!」などと思い込もうとしても)、あらがえません。
なぜならそれらの、深層レベルで何をコンフォートと感じるかは、脳の実に9割以上を占める「潜在意識の領域」による反応だから。
専門用語でいう、最も根本的な煩悩に指定されている「無明」。
ですから、顕在意識で思い込んでも「勝ち目なし」なのです。
▶同じようなテニスレベルに、これからもずっととどまる
我々のあらゆる心身の活動は、このコンフォートゾーンにより、決定的に限定されているという、あらがえない力が働いている。
一見するだけだと、先述したとおり厄介だけど、上手く手なづければ、みるみる好転するのでご安心を。
意志の力では変われないのは、このせい。
変わりたくても結局、同じようなテニスレベル、同じような健康状態、同じような人間関係、同じような経済状況、同じような幸福度合い、同じような体重に、とどまってしまうのです。
▶有名になりたいのに「目立つ」のは嫌!?
有名になりたいにも関わらず、「人前で目立つのがどうしても苦手」という人がいたとします。
目立たないでヒッソリしているのが、その人にとっての「コンフォート」なのですね。
そんな場合はどうしても、千載一遇のチャンスが目の前にあったとしても、「もう少し準備が整ってからにする……」などといった具合に反応し、せっかくの機会をふいにしてしまうのです。
そんな、潜在意識が決めるコンフォートな選択の連続により、人生は作られています。
▶脱出法「結果について考えない」
さて肝心な、ではどうすればコンフォートゾーンを脱出できるかという人生を幸せに生きる「戦略」ための合理的な「戦術」の話。
こちらのテニス上達メモ「『成功しかない』必ず結果が出る方法!」でも申しましたが改めてさらっておきますと、本当の本当の本当に結果を考えず、挑戦(行動)するのです。
コンフォートゾーンより外側の対象へ向かって挑戦するのは、現時点ではコンフォートではない以上、一時的に「怖い」はずです。
それは、どうなるかの「結果」について考えるからです。
未来については、今考えても絶対分からないにもかかわらず、結果について考えるから、怖くて不安になる。
そしてますます怖くて不安になるから、余計に成功するか失敗するかの結果について考えてしまう、という「鶏と卵」の関係が強化されます。
うーん、打つ手なしのように思えてしまう。
一体、どうすればいいでしょうか?
▶「初試合」に出るのをためらうのはなぜ?
「鉄は熱いうちに打て」こそ最適。
「この鉄は今後どうなるだろう?」などと、「結果」について考えていたら、冷めてしまって、固まります。
もう、再成形するチャンスはなくなるのです。
つまり、もとのコンフォートゾーンのままです。
たとえばテニスで初めて試合に出るときというのは、ためらいがちかもしれません。
「試合に出て、0-6で負けたらどうしよう」
こんなふうに、結果について考えると、怖くなる。
するとどうしても「もう少し上手くなってからにしよう」「冷静に考えたら、まだ早い」「せめてサーブが仕上がってからでも遅くない」などといって、出場をためらうようになるのです。
試合に出ようという思いが冷めてしまって、ずっと経験を積めなくなるから、強くなれないまま。
つまり「負けたい自分」のコンフォートゾーンに、予定調和のごとく落ち着いてしまうのです(なんと!)。
せっかく強くなれる経験を積めるチャンスだったのに、「あ~、助かったー」などといって安心する。
そして出場予定だった大会を見に行って、「やっぱり、今の自分では叩きのめされたに違いないから、出なくて正解だったわー」なんて、妙に納得したりする。
ですから先述したとおり、変わりたくても結局、同じようなテニスレベルにこれからもずっと、とどまるのです。
▶「挑戦しない理由」を探して、さてどうする?
これらの心身に生じる、普段は自覚すらしていない(だけど人生の方向性を決定づけている)反応は、ご自身が保有しているコンフォートゾーン(つまり「イメージ」)によるのです。
そしてそうやって、挑戦するかどうかを、ためらったりしていると、たいていの場合「挑戦しない理由」を探し始めて、時間を無駄に費やすのです。
「そういえば試合当日は、残業の翌日だから、疲労がたまっているに違いない」
「もう少し、ゲーム形式をこなしてからのほうがいいな」
「またの機会も、いくらでもあるし」などと。
そうなると、一生コンフォートゾーンから抜け出せないのです。
年収を上げたくても、低いゾーンが快適になって、上げない理由を探し始めるのと同じです。
▶これで「みるみる変わる!」
挑戦するのは、たしかに怖い。
現時点では、コンフォートではないからです。
だからこそ、本当の本当の本当に結果など考えずに、「思いは熱いうちに打て」。
するとみるみる、それこそさほど力を入れて叩かなくても、楽に、簡単に、あたかも鉄がいかようにも成形できるがごとく、コンフォートゾーンは変化(進化)していきます。
▶「思いは熱いうちに打て!」
テニスに話を戻すと、もはや勝てないのは、技術レベルの問題ではないかもしれません。
高めなければならないのは技術レベルではなく、コンフォートゾーンの領域。
そのためには、繰り返しになりますが、本当の本当の本当に、結果について考えない。
結果について考えても、未来はだれにも絶対分からないのだから、怖くなります。
怖くなるから、余計に結果を考えて、ますます不安になる。
すると、ぐずつき・凍てついて、挑戦できなくなってしまうのです。
コンフォート圏内を突破するには、「思いは熱いうちに打て」。
▶チャンスを勝手に「ふい」にしないで
「勝者の領域」にゾーンをズラすことで、今の技術レベルのままであったとしても、勝てるようになるし、それに伴い技術レベルも、今よりもさらに、コンフォートゾーンが高まるに従い、アップします。
「年収2000万円の案件」があるのに、採用されるか否かの結果を考えて、勝手にふいにしないでください。
思い(鉄)が冷めるまえに、「エイヤ!」と打つのです。
結果はどうあれ、エントリーしてみないことには、スタートラインにすら、立てませんからね。
▶コンフォートゾーンは、柔らかく変化(進化)する
その転職は、確かに失敗するかもしれない。
だけど、コンフォートゾーンは柔らかく変わりやすくなるので、今の時点では、それはそれで構いません。
初めての試合に出て、確かにコテンパンにやられるかもしれないけれど、構わないのです。
これは、レジェンドたちも必ず通ってきた「上昇スパイラルを王道を駆け上がる本物の王道」です。
ビヨン・ボルグもジョン・マッケンローもジミー・コナーズもイワン・レンドルもピート・サンプラスもロジャー・フェデラーも、選手として完成してから試合に出たのではなくて、試合に出たから選手として完成したのです。
コンフォートゾーンは、柔らかく変化(進化)しやすくなる。
この選択の連続が、人生を作っています。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero