テニス上達メモ069.これでコースを狙えるようになる!
▶歩くのに、足を横に踏み出す?
テニスというのは、見た目簡単そうに見えて、実際にやってみると、単にコースを打ち分けるだけでもひと苦労というふうになりがちです。
そこでたとえば常識的なテニス指導では、こんなフレーズがささやかれます。
「打ちたい方向に足を踏み込めば、狙いどおりにコントロールできる!」
だけどこれも、順番が逆なのです。
狙いを定めた方向に動作は行なわれるのが自然ですから、たとえばストレートに打とうとすれば、そちら側に足が向かうのは運動として当然です。
だって何か意図がある場合は別にして、歩くのに足を横へ踏み出す人、いますか?
前に向かっていくのだから、そちら側に足が出るのは、無意識的かつ自然な動きです。
ストレートを狙った結果として、足はその方向に踏み込まれる(踏み込むのではなくて)。
つまり、踏み込みは結果であって、必要条件ではありません。
結果というか、ただの現れた現象でしかなく、コントロールするための本質ではないのです。
ですから、差し込まれてなお踏み込もうとしたりするのは、窮屈な対応を自ら強いるだけです。
だけどそれでもミスするとコーチは、「ちゃんと足を踏み込まないからだ!」などといって、自ら行う指導の正当性を主張する。
だけど、逆なのでしたね。
▶マルチタスクを強いるから難しくなっているだけ
必ずしも踏み込まなくとも、コースの打ち分けはできます。
そのためには何が必要かの具体的な取り組みを紹介します。
「踏み込む」など体の動きに気を配るからこそ、テニスは難しくなるというのはいつも申し上げているとおり。
高速で飛び交うボールをよく見ながら、足の踏み込み方を意識するマルチタスクを強いるわけですからね。
テニスに限らず一般的なスポーツ指導は、あえて難しいことをやらせて生徒を下手にするマッチポンプ。
これは余談ですけれども、それで業界を潤そうとする構造は、病気を作り出して高額な手術やケミカルな薬・サプリメントを売り物にする(一部の)医療産業と変わらないと言ったら、言い過ぎでしょうか?
▶驚異の「宣言練習」!
コースを狙う練習としては、『あなたのテニスセンスを引き出す“ゼロ式”30メニュー』という拙著にあった「宣言練習」が効果的です。
とても簡単なので、ご紹介します。
クロスに1番、センターに2番、ストレートに3番の的(ターゲット)を置きます。
球出ししてもらったら、何番のコースへ打つかを宣言してから、そちらへ打ち返します。
実際にやってみると面白いのですが、慣れていないプレーヤーだと、宣言しながら打ったりする対応の遅れが見て取れます。
あるいは打ったあとに「3!」などと言って、事後報告したりする事例が、冗談ではなくあったりするのです。
そして結果どうなるかというと、事前に宣言できたグループは、狙いどおりのコースへ高確率でコントロールできる。
一方の宣言しながら、あるいは事後報告するグループは、コントロールが定まらない傾向。
それはそうです。
打つときには、ボールに集中しなければならないのに、打つときでさえ、まだコースについて意識しているのだから、コントロールが定まるはずがありません。
コントロールが定まらないどころか、コートにも収まらないミスも散見されます。
▶脳がどんどん、コントロールの精度を高める感覚を学習する!
この練習をするときは、必ず的を置きます。
的がなければ、4つのテニスボールを組み合わせたピラミッドをターゲットとする代替もありです。
的に、当たらなくてもいいんですよ。
的と狙った結果との乖離をフィードバックする繰り返しを通じて、脳はどんどん、コントロールの精度を高める感覚を学習していくのですから。
ちなみに話を戻すと、宣言練習のときに「狙う方向へ足を踏み込む!」などフォームを意識しようものなら、収拾がつかなくなる。
逆にフォームなんて一切意識しないほうが簡単で、簡単だから上手くいくというイージーモードをご確認いただければと思います。
そうはいっても、最初は的中しませんよ。
先述したとおり、的と結果の乖離を確認するフィードバックの繰り返しにより、コントロールする感覚が培われます。
フォームを意識していると、このフィードバックも上手く機能しないというのが、常識的なテニス指導の問題点でもあります。
▶あとは身を委ねてさえいればよい
ちなみに宣言練習は、日常生活でもその威力を発揮します。
「自分はこうする」と宣言すれば、そうするための情報を、脳に備わる網様体賦活系(もうようたいふかつけい)「RAS(Reticular Activating System)」が引っ張ってくるから、ホントにそうなる可能性が高まります。
宣言しさえすれば、脳の働きとして自動的にそうなるのですから、何も大変ではありません。
また宣言すると言っても、周りの人に知らせる必要などもありません。
紙に書き出したり、スマホのメモ帳に入力したりするのも、RASの活性化にとても効果的です。
そうすれば、そのための情報を脳が自動的にフィルタリングしますから、あとは身を委ねてさえいればよい。
昼食はラーメンを食べると狙いを定めたら、ラーメン屋に関する情報が勝手に集まるのです。
あそこは豚骨が美味いとか、前は味噌だったから今日は醤油だとかが、意思に関わりなく決まってきます。
口もラーメンを求めるのです。
まさかそこから、いくら美味しいからといってビーフストロガノフ店は想起されまい。
これもテニスと同じですね。
宣言してしまいさえすれば、あとは体が自動で狙います。
身を委ねてさえいればいいのです。
逆に自ら「足を狙うコースへ踏み込もう」などと手動に切り替えると、それは頭による操作だから、上手くいくものも上手くいかなくなります。
▶悪用厳禁!
ただしこれは悪用厳禁で、自他を不幸にする宣言をすれば、そうなる情報ばかりをRASが引っ張ってくるから、よくよく気をつけなければなりません。
「だから自分は上手くいかない……」と宣言すれば、そうなる情報ばかりが目につくし、「やっぱりあの子はダメなんだ……」と宣言すれば、そのような情報ばかりが実際に集まります。
どんどん自他を追い詰めて、どんどんそういうイメージが形成されます。
それが証拠に、嫌いな奴については、どんどん嫌いになる情報ばかりが目につくのではないでしょうか?
目つきだったり、言い回しだったり、ため息だったりと……。
もちろん、たまには「オマエは嫌な奴だと思っていたけど見返したよ!」という情報がフィルタリングされる可能性も、なきにしもあらずかもしれませんけれども、文字どおり「たまに」ですから、嫌なイメージをひっくり返す力には、一般的にはなかなかなり難いでしょう。
対策は後述します。
▶「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」は脳科学的に合っていた!
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」は、RASが「憎い情報」ばかりを引っ張ってくるから起こる現象です。
「なにも袈裟まで憎まなくても……」と思ってみても、なかなかRASにはあらがえるものではないのです。
それは、「頭」で考えても「体」にはあらがえない理を表す。
頭でいくら病気を治そうとしても、治せるものではない。
治すのは体。
ですから、体の感覚をもっと信じ、委ねると、頭では「何か知らんけど」、勝手に治ったり、上手くいったりします。
そのためには、まず宣言すればいいだけなのです。
▶富が尽きることのない現実世界が目の前に立ち現れる
たとえポジティブな側面を見出せても「たまに」だから、ネガティブなイメージをひっくり返す力にはなかなかなり難いとお伝えしました。
とはいえ、ひっくり返す力になったらなったで、それ以降は反作用により「いいところ」ばかりが目につくRASによる逆転現象も起こったりします。
ケンカしたあとに仲直りすると、却って「絆が深まる」のはこの働きによります。
どうせ絆が深まるのだったら、ケンカしたり揉めたり嫌われたりするのも悪くない。
RASを通じてポジティブな情報がフィルタリングされる世界が現実となります。
そこで充足を得るうえで大事なのは、足るを知る。
「あれもある」「これもある」「それもある」と宣言していれば、富が尽きることのない現実世界が目の前に立ち現れます。
これもやはり悪用厳禁で、逆に「あれもない」「これもない」「それもない」と宣言していれば、本当に足りない情報ばかりをRASが引っ張ってくるからこそ怖いのです。
それを人は「不幸」と言う。
具体的に確認してみましょう。
▶私たちはもはや充足するしかなくなる
少なくともこの記事を読めている以上は、スマホがある、パソコンがある、ネット環境がある、文字を読める視力がある、デバイスを操作できる自在に使える指があるなど、「あるある尽くし」のはずではないでしょうか。
だとすれば、「あるあるある!」と宣言する。
すると、もっとさらに「あり余る」情報をRASがフィルタリングするから、富が尽きることがないと実感され、私たちはもはや充足するしかなくなるのです。
これを人は「幸福」と言う。
そしてそれは、単なる思い込みなんかじゃなくて、現実世界として立ち現れると言っています。
居場所がある、家族がいる、食べ物がある、お風呂がある、聞こえる耳がある、味わう舌がある……あげればキリがありません。
そしてそれは物質だけではなく、感謝も愛も真理も「ある」。
今日もいつもの日常に「ある」の彩りを!
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero