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2023年1月の記事一覧

御本拝読「さらに・大人問題」五味太郎

表記まで自由だ

 まず、約四半世紀前に五味さんが書かれた「大人問題」という本がありまして、こちらはその続編です。1999年刊、なのにまったく古さを感じず、むしろ今こそ必要なのでは?という五味さんの意見がいっぱい。
 そもそもこの本、検索かけたりデータつけたりするときは「大人問題」って打つんですけど、現物の表紙等では「大人」と「問題」のあいだに「は・が・の」も助詞が入っていて、五味さんの自由さが炸

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御本拝読「私のマトカ」片桐はいり

寒い日の本、旅編

 大雪の中を出勤し、無事に転びもせず生きております。私自身は雪の降る山陰の生まれ育ち&生まれついての立派な骨格にどっしりした下半身故、黙々と京都市内の混乱をやり過ごしました。しかし電車は止まるしそもそも通勤できない人が続出、連絡便や本の納品も壊滅状態。あんな時は、二日三日図書館閉めといていいと思います。誰も来なかったし。
 さて、そんな大雪吹雪の中、いつもの倍の時間かかって通勤

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御本拝読・「神さまたちの遊ぶ庭」宮下奈都

寒い時には寒い土地の話を

 大寒波到来ということで、寒い寒い北海道のど真ん中での一年のお話の本を。寒い時は、おうちで温かいモノを飲みながらこたつにでも入って本を読み、体と心をあたたかく。
 作家・宮下奈都さんが、山村留学制度を使って北海道の十勝地方・トムラウシ(アイヌの言葉で「花の多い場所」)でご家族五人で暮らした一年分のエッセイ。なぜトムラウシに行くことになったのか、という導入から、一年で本来

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御本拝読「誰でも美しくなれる10の法則」ティム・ガン/ケイト・モロニー著

ちょっとしたつまづきに

 体調が悪いとまではいかなくても、ちょっと元気がない時。アクティブに動いてストレス発散とか、マッサージやごちそうで贅沢とか、そこまでは要らないけどなんとなくもやもやする時。私には、そういう時に読んでくすっと笑って気持ちをリフレッシュさせる本が何冊かある。その一冊が、「誰でも美しくなれる10の法則」である。
 何を隠そうって別に隠してはないが、私は「ファッション」が好きだ。

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御本拝読・宮部みゆき

ずっと第一線

 私が小学生の時から、アラフォーにならんとしている今に至るまで、出す本出す本売れているすごい人。そんなくだらない言葉で表現してしまうほど、第一線にいらっしゃる作家さん。
 もちろん昔からお名前はよく存じ上げていたものの、本を読むよりも実写化された作品に先に触れることが多かったからか、大学卒業するくらいまで読んでませんでした。愚か者。
 多作で、色んなことに造詣が深い作家さん。何より

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御本拝読「フローラ逍遥」澁澤龍彦

耽美、幻想、フランス

 澁澤龍彦、と聞くとやはりこの三つの単語。私が法学部生だった時、出版物の表現にかかわる裁判でその名を知って、作品を読んでみたがいまいち大好き!とはならなかった作家。元々、エロやグロに耐性の低い私の悲劇である。
 しかし、その後、彼の小説ではないコラムやエッセイ、フランスにかかわる読み物を読んで理解を深めた。彼の表現は実はとても冷静で端的、人間の欲や性からは一番遠い。飄々とし

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御本拝読・小川洋子

私の心の月

 小さい頃の絵本や児童文学を除いて、私は大人になるまであまり存命の作家に興味が持てなかった。好き嫌いではなく、特にティーンから大学生時代は学校の図書館で日本近代文学全集やいわゆる文豪と呼ばれる人たちの全集を古い順に片っ端から読んでいたから、現代の作家までは間に合わなかっただけである。そんな私が初めて好きになった作家が、小川洋子だった。
 ちょうど本屋大賞が設立されて「博士の愛した数

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御本拝読・「毎日ザレゴト」ナジャ・グランディーバ

プチ写真集+エッセイ

 西ののんびりドラァグ・クイーン、ナジャ・グランディーバ(以下、ナジャさん)初の単行本。メインはエッセイですが、きれいなお写真がたくさん。サイズ感はちょっと小ぶりの単行本ながら、みっしり中身が詰まってました。
 とにかく、お写真がどれも素敵。おそらくこの本じゃないと見られない写真であろうし、本だとゆっくりと見られて良いです。ナジャさんの世界観というか、「こうでありたい」「私

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御本拝読・「さめない街の喫茶店」はしゃ

漫画漫画してない漫画

 私、昔からあまり漫画を読みません。育った環境が、ゲーム・ネット禁止、アニメ・漫画は親の検閲制だったので、いちいち許可をとったり闘ったりするのが面倒なので読まなかっただけです。実は、ドラゴンボールもスラムダンクも読んだことがない……。
 そんな非漫画民が好きな漫画をひとつ。はしゃさんの「さめない街の喫茶店」。全2巻で完結。線もお話もやわらかふわふわ優しい漫画。
 めちゃくち

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御本拝読・「僕はどうしても捨てられない」おいでやす小田

自分が本紹介するの一発目にふさわしい本

 絵本生まれ海外児童書育ち、中原中也に恋をして、志賀直哉を敬愛する私。現代の作家さんだと小川洋子さんや宮部みゆきさん、歳が近い作家さんだと深緑野分さんが好き。硬めの文体やテーマが好きで、精神の美しさとか静謐な世界観が好き。
 そんな私がここでブックレビューを書く一冊目は、お笑い芸人・おいでやす小田さんの「僕はどうしても捨てられない」。テレビで観るおいでやす

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御本拝読、志賀直哉

・志賀直哉 私が一番長く好きでいる作家。芥川でも太宰でもなく、志賀直哉。ハルキでもカワバタでもなく、志賀直哉。好きな作家は?と聞かれて意気揚々と答えるも、「?」という反応をされることの多い志賀直哉。私のnoteの第一歩として、この作家について書いていきたい。

(短編)小説の神様

 志賀直哉の最も有名な作品は自伝的長編「暗夜行路」だろうが、私は、その他のたくさんの中・短編にこの作家のきらめきが詰

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