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培った技術力を武器に新たな分野へ!ものづくり企業が医療機器業界に参入する難しさと魅力

「受託開発」「ロボット」「医療」の三本柱でものづくりに取り組む

ー事業内容を簡単にご説明いただけますか?

コスモスウェブは電子機器等の受託開発設計製造を一番の生業としている会社です。これが事業の一番の柱になります。「プリント基板」という回路基板があるのですが、これのハードウェアやソフトウェアの設計、プリント基板の設計、基板をケースの中に入れるようなところまで、全体の受託開発、設計、製造をやっている会社です。

二つ目の柱が、2009年から自社開発している卓上型のロボットです。それをベースに、標準品を納めているのですが、ただ一概に標準品をそのまま納品できるかというと、意外とそうでもなくて、お客様のニーズ、カスタマイズのニーズに合わせながら納品しています。
またそういった関係から「自動機(手作業で行っている組立工程に、ロボットなどの組立装置を導入することで、作業の効率化と品質の安定化が図れる)」の生産設備や検査設備の設計から製造もやっています。お客様の「ワーク」と言われる製品が、大体手のひらに乗るぐらいのものだとすると、テーブル2〜3個分の広さの設備を提供しています。物の、ある一部の工程を作るだけでも、このぐらいの大きさの設備が必要になるという、これが二つ目のビジネスです。「ロボット」とか「自動機」と呼ばれる分野の事業です。

三つ目が、コスモスウェブとして自社製品を作りたいという想いがあり、医療機器を作っています。2013年くらいから取り組みが始まって、私自身も2016年ぐらいから営業のところで携わっています。

2020年、製品として「マルチ呼吸機能測定装置」を認証いただきまして、ようやく製品として販売できるようになりました。これがコスモスウェブでの医療機器第1号の製品になります。

第2号の医療機器製品は今、開発・製造の準備をやっている最中で、4月に上市予定です。

ー御社ならではの強みや独自性はございますか?

医療機器分野であれば、新規参入の新参者なので、強みというとなかなか難しいですが。
医療機器はやってみてわかるのですが、やっぱり許認可制の壁です。医療機器のメーカーになるにも、弊社では「第二種医療機器製造販売業」という許可を宮城県庁さんからいただいているので。そういう許可をいただくことが必要です。

他の工業製品ではそんなことはなくて、いいものを作って販売すれば、売れるわけです。でも医療機器はそうはいかない。会社としての資格も、医療機器製品としての認証も受けないといけない。それにはクラスが4つあって、一番軽いのがクラス1というものなのですが、これであってもやっぱり届け出をしなければいけない。「マルチ呼吸機能測定装置」はクラス2の製品で、これは第三者認証機関から認証を受けないと、医療機器として販売できないんです。

さらにレベルが上がって、クラス3~4は、厚労省からの承認を受けないと医療機器として販売できない。会社としての許認可も受けないと駄目ですし、製品としての許認可も受けないと、やはり製品として売れないというところがあって。なかなか難しいと思っています。

ハードルの高い医療分野に参入したことでビジネスチャンスが広がった

ーなぜ医療機器分野を第三の柱にしようと思ったのでしょうか?

私どもは元々工業製品を販売していますが、取引先の中に呼吸器系の医療機器メーカーさんがありました。そのお客様に何を納めていたかというと、医療機器の中で使うプリント基板、プリント基板の回路設計とか、色々お手伝いさせていただいて。基板だけの納品なので、全く医療機器のレベルになってないわけですが、医療機器の中に組み込まれる一部の部品を、お手伝いさせていただいていました。

2〜30年ぐらいお付き合いしているその医療機器メーカーさんを定年で辞められた方が、コスモスウェブの顧問になりまして。それが、この製品を開発するに至った経緯というところがあります。もちろん、「その人がいればこの製品を開発できるか?」というとそうではなくて、やはり大学の先生との研究で「こういうものを作ったら病院で使ってくれるんじゃないか?」と、色々アドバイスをいただきました。

この製品は、2013年ぐらいから、神奈川県川崎市の当時、聖マリアンナ医科大学病院・ 呼吸器内科の宮澤先生のご指導を仰ぎながら開発し、製品に至りました。

ー医療機器事業を行う上でのミッション、ビジョンはありますか?

医療機器の部門は発展途上で、まだビジョンはできてないです。もう少し前に進んで、ある程度医療機器事業が見えてきたところで、「コスモスウェブはこういうビジョン、ミッションのもとにやっていこう」という形になっていくのではないかと思います。まだまだ入口のところでもがいてるような状態です。

ー医療分野に参入してみて、良かった部分はなんですか?

元々コスモスウェブは電子機器の受託会社で、あくまでもお客様の仕様をいただいて、開発、設計、製造をしていました。この分野に参入してみると、意外と世の中の医療機器メーカーさんは自社では作らずに外注化されていて、それを自社の製品として販売している会社さんが多いことがわかりました。

具体的には、海外で製造・販売されている製品を輸入して、日本国内の病院さんに納めている医療機器メーカーさんが意外と多い。本来、日本は技術大国なので、医療機器含めて色々な技術を持っているはずですから、国内で製造・販売すればいいのに、なかなかそうなっていない。現実は、かなりの輸入品が国内で販売されています。

そういう意味では、やはり国内で開発して販売するのが望ましいと思いますので、私どものような元々受託をやっている会社が医療機器を作ると「受託でこんなことできますか?」という問い合わせをいただいています。

ー今まで取引がなかった先からもご依頼が来ると。それは医療機器に限らず、でしょうか?

医療機器に限らず、あります。ただ、医療機器に特化したお問い合わせもきますね。今までなかったようなお客さんからのお問い合わせというのも、結構あります。医療機器メーカーさんからのお問い合わせが多いです。

 あくまでもメーカーなので、自社製品を持っているけど、新しいもの、もしくは既存の製品をマイナーチェンジしてリニューアルしたいときに、やっぱり社内に工数がないと、外に頼るしかないですからね。そういったときに、私どものような受託でやっている医療機器メーカーがあると、頼りにされるお客様もいらっしゃいます。

ー先ほどお話があった「海外の製品」というのは、日本の製品に比べてどの辺りが優れているのでしょうか?

私のイメージなのですが、日本はどちらかというと、計測器が多いかなと思います。海外はどちらかというと、治療器の方が多い。ただ責任の重さでいうと、やっぱり診断器や治療器の方が重いから、国内はリスクを考えて計測器を多く作っているのかもしれないですね。 

ー今後は国内の治療器を、という需要が増えてくると思うのですが、治療器を開発する上での「課題」はなんだと思いますか?

例えば東北大学は、医学部、病院を抱えていて、先生方も充実しております。その中には当然、工学部の先生もいらっしゃって、医工連携も整っているので、大学病院の先生が「こういうものが欲しい」っておっしゃったアイデアをもとに、製造に関われるといいなと思います。

 ただ私ども一社で関わるのはハードルが高いので、その道の医療機器メーカーとしての確固たる地位を築いていらっしゃるメーカーさんと連携しながらやっていくのが必要かなと思います。

 なかなか宮城県内では難しいかもしれないですが、日本や世界を牽引するようなメーカーさんがあれば、そういったところと一緒にやっていくことによってレベルアップを図っていければと思っています。

 最大の課題は営業! 呼吸器系を中心に、様々な病院・医師とつながりたい

ー医療分野への参入後の課題には、どういったものがありますか?

まず、営業面ではお客さんを持ってないというところ。結局エンドユーザーは病院の先生になりますが、病院の先生とのコネクション、人脈が、こういう工業系の製品をやっている限りなかなか見つけられない。

 工業系の製品のお客様は、基本的にメーカーさんです。メーカーさんとのコネクションは、もう2~30年やっていると持ってはいますが、如何せん医療に関しては、病院の先生との繋がりって基本ないです。東北大学の病院の先生とのコネクションもあまりない状況です。

 呼吸器系の先生と製品の研究をやっているので、呼吸器外科の先生との繋がりは持ったりしていますが。他の科の先生と繋がりがあるかというと、全然そんなことはなく。そういう意味で、エンドユーザー、お客様は病院の先生なので、お客様との繋がりが持てていないというのが、私どもの最大の課題かなと。どんなにいい製品を作っても、買っていただけるお客様との繋がりがなければ、結局駄目というところがありますので。そういう意味で最大の課題ですね。

販路開拓支援で補助金が出ることもありますが、実際に病院の先生と繋げてくれるというところはないんです。企業とのマッチングイベントもあるのですが、病院の先生との繋がりはやっぱりなくて。唯一あるのが学会ですね。呼吸器系の学会なら、先生も当然その場におられるわけです。そういったところで企業出展もできるので、それが唯一の接点。でもなかなか、、、出展会場では、販売店の営業さんが病院の先生を離さず、先生を目的のメーカーの企業展示場所まで連れていってしまう。先生方もお忙しいので、それを見たらそのまま講演会場に戻ってしまわれます。

 とういうように、病院の先生との接点をなかなか持てないというところが、最大の課題です。

ものづくりには協業が必須。設計を任せられるパートナーと出会いたい

ーマッチングイベントでは、どういった方とつながりたいですか?

私たちは呼吸器系に参入しているので、呼吸器系に絡んだ分野であったりすると、一つの取っ掛かりになるのかな。医療分野と言っても色々な分野があって、それぞれの専門分野が、みんな違うわけです。ですから、私どものような小さなところが手広くやろうとしても難しい。まずは、呼吸器系のところに絞ってやっていくというのも、一つの手段なのかなと思ってはいます。

 また、私どもは受託で設計・製造を行っていますが、新しい案件の引き合いがあってもリソースの関係で自社で完結できない場合があるので、協力会社さん何社かと連携しながら動いていることが多いです。よって、ハード設計、ソフトウェアの設計、プリント基板の設計、あとは筐体やケースの設計、そういったことをやっていただける会社さんとの繋がりを常々持ちたいと思っています。やっぱり自分たちのパワーだけでは足りないので、色々ご協力いただけるパートナー企業さんと出会えると嬉しいです。

工業製品も自社だけでは完結しないことが多いです。本当に方々の企業さんにも色々ご協力いただきながら、もの作りというのをやっているのが実態ですので。特に災害のことを考えると、近場だけでまとまっていると脆弱性が高くなる。そういう意味で、ちょっと離れた隣接県の会社さんとの繋がりというのが、やっぱり大事です。

 常に繋がりを持って取引関係を持たせていただき、「こっちでできないから、お任せする」というネットワークを広げられるような機会になると大変ありがたいというのはありますね。

ー参加者の中にも「これから起業したい」「医療系への参入に興味を持っている」という方がいると思うのですが、そういった方に対してのアドバイスをお願いします。

開発のシーズを一番最初に考えると思うのですが、売る施策、出口のところをきちんと見据えた上で開発しないと、どんなに良い製品を開発してもそこで滞留してしまいます。やっぱり出口戦略は初めから考えておくべきだなと思います。

 ー医療機器は開発するにもハードルが高く、営業開拓にも時間かかってしまうので、お金のやりくりが大変ですね。

物を作るにも、設計するにも、小さくするにもお金がかかるし、かなりの期間を要します。もう3年、5年とか、普通にかかる。ですから、その間ずっとお金をつぎ込まなければいけないです。そういう意味では大変だと思いますね。

 ー三本の柱の一つである医療機器分野を、他の二本の柱で支えている。そう感じる部分はありますか?

そうですね、それがないとできないと思いますね。多分、医療機器一本だと、今のところ販売まで繋がっていないので、お金を稼げるところがないわけです。そういう意味では、他のちゃんとした生業が確立されていて、そこで得た利益を次の柱につぎ込むという経営的な判断のもとにやっていかないと、なかなか難しい。だから、それ一本でのスタートアップ企業さんは、結構大変だろうなと思いますね。

 ー今後テクスタ宮城に期待することをお伺いできればと思います。

医療であれば、とにかく病院の先生との接点を作っていただきたいです。宮城県内を見ても、県立病院もあれば、市立病院も国立病院もあり、県の人が病院と企業を繋いでいただけたら、私どものような企業としてはとてもありがたいと思います。大学病院も然りですね。

 例えば「県立病院の先生にコンタクトを取りたい」と思っても、なかなかできないです。インターネットで調べれば「何科の○○先生」まではわかりますが、やっぱりその先どうアプローチを取ればいいのかが難しい。なかなか繋がれないです。

 なので、医療関係、医師の方と繋がれる機会があると嬉しいです。

 今回、医療機器の分野で参加させていただく機会をいただいて、本当にありがたく思っています。今私どもは、この医療機器業界の入口に立って、これから色々なハードル越えていかなければいけないと思っています。色々な方と関わりを持たせていただきながら、そのハードルを一つ一つ乗り切っていきたいと思っています。幅広いニーズに対応すべく、ご協力いただけるパートナーさんとのネットワークを広げる機会になればありがたいです。

■株式会社コスモスウェブ
本社:〒989-3122 宮城県仙台市青葉区栗生5丁目4-1
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