【材料】紫草(日本ムラサキ)
紫根(紫草の根)の深紫
先日、日本民藝館で岩手県鹿角の紫根の絞り染(明治期)を目にしました。紫草の根から抽出された濃い紫色の美しさに、大変衝撃を受けたのを記憶しています。色彩が氾濫する現代においてもなお、自然から取り出された色彩は別格のオーラを放ち、私たちを惹きつけます。
冠位十二階の最高位の色であったように、古くから紫は貴重な色でした。粉砕して紫の顔料となる鉱物は、あまり手に入らなかったようです。そのため日本の古典絵画では、異なる色材をかけ合わせるなど、さまざまな工夫をして紫が表現されてきました。
京都の老舗絵具店・放光堂では、なんと顔料化された紫根が販売されています。なかでも濃口は、信じられないほど濃い紫色をしています。国内の紫草産地・豊後竹田や中国などから仕入れた紫草を原料に、少量ながら製造しているといいます。高貴な紫ですから、私たち庶民が気安く購入できるようなものとはとても言えません。ということで、無謀にも自分で紫草を栽培してみることにしました。
紫草栽培
昨年冬、紫草を栽培している方から、陶器のような白く光沢のある不思議な殻を持つ種を分けていただきました。その方は、紫根染で有名な岩手県鹿角に隣接する八幡平で苗を分けてもらったそうです。
いただいた種42粒すべてを播きましたが、いつになっても芽が出る気配がありません。紫草は発芽率が低いとは聞いていましたが、芽が出ないとはこんなにも寂しいものなのですね。後日、元気な苗を送っていただきました。あとは移植や害虫、根腐れによって枯らすことさえなければ、秋にも収穫できると思います。大事に大事に育てたいと思います。
日本ムラサキと西洋ムラサキ
紫草は日本ムラサキのことですが、染料成分がほとんど無い西洋ムラサキが間違えて栽培されている例が多くあります。一昔前、日本ムラサキの種として出回った種が、実は西洋ムラサキの種であったためです。現在、繁殖力の強い西洋ムラサキによる遺伝子汚染が深刻で、日本ムラサキの原種は絶滅が危惧されています(絶滅危惧ⅠB類)。大学で6年以上栽培されていた「紫草」も、すべて西洋ムラサキとの交雑種でした。後から交雑してしまったのか、もともとかは分かりませんが、種の違いがあることは要注意です。
見分け方は色々あるようですが、まず夏に咲かせる花の色で識別するのが分かりやすいと聞きます。日本ムラサキは純白ですが、西洋ムラサキはクリーム色に黄みがかっています。発芽率も大きく違います。より詳しい情報は、下に貼り付けた結晶美術館さんの記事でぜひ確認してみてください。
↓↓↓結晶美術館 紫根(むらさき)