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15秒で読める小説

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15秒で読める!140字創作小説
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#創作

【140字小説】繋がる縁(ロープだけに)

【140字小説】繋がる縁(ロープだけに)

「あっ」
ホムセンで良さげなロープに手を伸ばすと、丁度隣にいた死んだ目のおっさんと手が触れ合った。
「貴方も…このロープを?」
「ええ、首吊りに良さそうで…」
「奇遇ですね」
そこから意気投合。喫茶店で話し込んでカラオケ行ってまた会う約束をして帰った。
結局ロープは買わなかった。

【140字小説】欲しいのは言葉じゃなく

【140字小説】欲しいのは言葉じゃなく

どんなに熱い励ましの言葉も、完全無欠の正論も、
ただ隣で手を握り話を聞いてくれる人の「辛かったね」には敵わない。
だから母はあの日、教祖様と逃げたのだろう。

今なら僕にもわかるよ。
願わくば今、貴女にこの手を握っていて欲しかったな、母さん。

【140字小説】絶望の岸辺

【140字小説】絶望の岸辺

「貴方はまだここへ来てはダメよ」
夢の様な花畑を歩いてると、3年前死んだ母が現れ言った。
「でも俺…虐めとか…色々疲れたんだ、母さん」
「戻りなクズ!楽しようたってそうはいかない!」
母にドンと押された俺は病院のベッドで目覚めた。
彼岸にも此岸にも鬼がいるから僕はこの先何処へも行けない。

【140字小説】レジャー施設近くのコンビニ駐車場にて

【140字小説】レジャー施設近くのコンビニ駐車場にて

外車から小綺麗な家族が降りてきた。この先のレジャー施設に行く途中だろう。幸せそうで羨ましい。
ボロい軽からは小汚い家族が笑顔でぞろぞろ降りてきた。この先のレジャー施設に行く途中だろう。幸せそうで羨ましい。
なぜ僕以外の人は皆幸せなんだろう。コンビニコーヒーを飲みながら今日も考える。

【140字小説】理論上の結婚

【140字小説】理論上の結婚

「ねぇマー君、結婚しよ」
「待って、この紙を42回折ると月に届くから!それが終わったらいいよ」
「やったぁ!じゃあなるべく早くしてね」

あの保育園での会話から30年。

私はずっとマー君を待ってる。
マー君はずっと紙を折ってる。
私は早く終わるよう祈ってる。
ハネムーンの行先はやっぱり月かしら。

【140字小説】地図にない国

トイレに入るたび地図が目に入る。息子が保育園の時から壁に貼ってある世界地図。今やもうここに描かれた国境線は過去の産物。無くなった国もある。名前が変わった国もある。僅か数十年で世界がこうも激変するなど誰が予想できただろう。新設された徴兵制により、息子は今この地図にない国の戦火の中。

【140字小説】ポンコツ

【140字小説】ポンコツ

人から「ポンコツ」と言われる人
自分で「ポンコツ」と言う人
同じポンコツなのに性質が違う

前者はリアルポンコツ
後者は思ったよりできるヤツ
あるあるだろ?

とりあえず明日の自己紹介、
「とんだポンコツですが
精一杯頑張ります」
って言っとけよ。
先手必勝、印象操作さ。

【140字小説】チワワの町

【140字小説】チワワの町

凶暴すぎる衝動を理性で飼い慣らせば、やがてチワワになるという。
ここはそんな伝説が息づく町。

_おや、貴方のチワワ随分恐ろしい顔をしていますね。

_ええ、まだ上手く飼い慣らせなくて…。

_じゃあ、早いところ躾教室に入った方がいいですね。飼い主さんが。

 【140字小説】悩≠脳

【140字小説】悩≠脳

「悩」と言う字は「脳」と似ているでしょう?
あなたが悩んでしまうのは全て脳の仕業だったのです。つまり脳がなければあなたは悩まずに済むのですよ。取って楽にして差し上げます。

馬鹿げたこじつけ…だが悩んでいる奴は結構簡単に騙され脳を提供してくれるのだった。

 【140字小説】カミのキモチ

【140字小説】カミのキモチ

半年に一度ここへ来る。

見つめられ、徐に貴方の手が伸び私をそっと包み込んで優しいkiss…じゃなかった、cut。

その後、普段は到底使うことの出来ない高価なシャンプーで洗われ、丁寧にゆっくりとkiss…じゃなかった、dryer。

次回も楽しみだな、美容院。

 【140字小説】ツンデレ

【140字小説】ツンデレ

趣味の合う奴とだけ付き合って、つまんねー人生よな。似たような思考回路の奴で群れて阿保ヅラ揃えて呑気に笑ってやがる。そんな生活じゃ違う視点に気付かねぇし進歩がないぜ…え?僕も全く同じ事思いながら過ごしてました?あ…そうなんだ?気が合うね…友達になろ?

 【140字小説】もみほぐし

【140字小説】もみほぐし

 近所にもみほぐし店ができた。

 訪ねると美しい女店主が出迎える。貸切で贅沢なアロマの香りに包まれ、とろける様な心地良さにいつしか眠っていた。

 目覚めると私は液体になっており、女店主は「もう!何で皆とろけちゃうのよ!」とブツブツ言いながら店裏の蠢く池に私を流した。

 【140字小説】箱の中身

【140字小説】箱の中身

 冷蔵庫に見覚えのない容器がある。中は見えない。カサカサ微かな音を立てていたが1週間もすると静かになった。
 私は見て見ぬ振りをした。
 1年後、見知らぬ男が来訪し容器と引換に百万円置いていった。私が中身を問うと、男は「見たくせに」と微笑んで立ち去った。
#140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて

【140字小説】博多忖度

 「月がきれかね」と君が言う。
 例ん愛ん告白なんかそれともただん事実ば言うただけやろうか。
 下心ありありのうちゃ1人でなんやかや考えすぎて分からんくなる。
 君ん心が読めたらよかとに。
 見上げた夜空に輝く月は確かにきれかった。
 …今日ん収穫はそれだけ。

※メモ※ こちらで方言に変換してもらいました♡