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読書の “冬” がやってきた

column vol.879

今日から冬休み

9連休の間に特にやりたいことと言えば「読書」です。

この時期しかまとめて読む時間がないからです。

ということで、ある程度、読む本を見繕ってはいるのですが、私の読みたい本よりも「本をよく知る」書店員の皆さんがオススメする本の方が皆さんの為になりますので、日経スタイル【書店員がおすすめ 年末年始に読みたいビジネス書10冊】という記事を共有させていただきます。

〈NIKKEI STYLE / 2022年12月23日〉

書店員が選ぶ年末年始のオススメ本

こちらの記事は、八重洲ブックセンター本店紀伊国屋書店大手町ビル店三省堂書店有楽町店青山ブックセンター本店リブロ汐留シオサイト店の書店員の皆さんが、それぞれの視点で年末年始にオススメの本を紹介してくださっています。

ぜひぜひ日経スタイルの記事を参考にしていただきたいのですが、せっかくなので私が特に読みたいと思った3冊を選ばせていただきます。

まず、1つ目紀伊国屋書店大手町ビル店の店長、桐生稔也さんが推薦してくださっている『物価とは何か』(渡辺努/講談社)です。

●『物価とは何か』

今、社会全体として皆の頭を悩ませている代表的な事案「物価高」なのではないでしょうか?

Amazonでも「ベストセラー」と表示されていますが、皆さんの関心が高いのは当然と言えます。

「物価は蚊柱である」。そんな比喩から本書は始まる。直感や例え話で一般読者に寄り添いながら、物価研究の第一人者とされる渡辺氏は、「物価とは何か」について、経済学を使って考えていく

この解説文にグッと興味が惹かれます。

この本の中で渡辺さんは「この蚊柱は、自社製品の価格を自らの意思で決めることを諦め、後ろ向きの経営に走る企業の群れそのものではないかと私は危惧しています」という重い指摘をしており、経営を司るものとしてはドキッとさせられます。

蚊柱を形成する一人に自分がなっていないだろうか…?

一つ、自分に問い直すきっかけになりそうな一冊です。

続いては、同じく桐生さんが選んだ『「静かな人」の戦略書(‎ジル・チャン/ダイヤモンド社)』です。

●『「静かな人」の戦略書』

内向型の人が職場で活躍できる実践的な方法を説いた本。

ベストセラーランキング、20週連続トップ10!(ビジネス書、トーハン調べ)、Foreword INDIES「ブック・オブ・ザ・イヤー」特別賞!など、話題沸騰の一冊です。

私は比較的外交的な人間なのですが、組織には当然、内向的な人も多くいます。

そういった社員をより理解し、活かすための本として非常に読んでみたいと思いました。

最後は、三省堂書店有楽町店でビジネス書を担当する沢柳由香さんオススメの『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(エマニュエル・トッド/文芸春秋)です。

●『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(上・下巻)

原著は17年の刊行で、ホモ・サピエンス誕生から米トランプ政権の登場までの人類史「家族」という視点から通観した一冊。

人文書の担当が長かったので、興味深く読んでいる。これから世界がどうなるのか、より深い視点から考えさせられる

と沢柳さんは話しています。

「核家族、直系家族といった家族構造の違いが経済構造の違いに繋がったり、対立を生んだりといった事象が歴史をたどることで浮かび上がり、これが今日世界的に起きている変化を理解する手がかりになる」という解説に、読みたい気持ちが掻き立てられました。

この冬は「問い」を求めたい

私が選んだ上記3点もそうですし、この冬読もうとしている本たちもそうなのですが、基本的には自分に「問い」を立ててくれるような本を読みたいと考えております。

これまでは成功本やハウツーなど、比較的「答え」を提示してくれる本を求めていましたが、何となく今の自分の中で若干一巡している感があるからです。

答えのないところに、答えがある。

世の中の情勢もますます先が見えづらい状況になっていますし、自分のキャリアについても先代社長という絶対的な存在を失った今、改めて「自分だけのキャリア」を築いていかなければなりません。

今は、さまざまな角度からさまざまな問いを自分に投げかけ、自問自答し、自分を広げていきたいのです。

イェール大学助教授で実業家の成田悠輔さんも「成功物語は本当に教訓になるのか」という問いかけをしているのですが、まさに今の自分の気分にピッタリです。

〈GOETHE / 2022年11月23日〉

成功者というのは、言いにくいことは語らないもの。美談として語り尽くされているストーリーというのは誰もが知っているものでしょう。その中に新たな教訓などあるのか、はなはだ疑問です。いまだに語られていない、「言ってはいけない、やってはいけない領域」にこそ、未来への可能性が潜んでいるのではないでしょうか。

「反面教師」という言葉がありますが、実はこれって非常に高度な学習手段だと感じています。

人の失敗や欠点を自分なりに解釈し、それをプラスに転換するために熟慮し、トライ&エラーを繰り返す

成功法だと比較的トレースすることに重きを置きますが、反面教師はよく考え、試行錯誤し、最終的には自分だけの解をつくっていく作業になります。

その分時間はかかりますが、それはきっと自分にとって確かな答えに近づけるのだと思うのです。

ジャーナリストの池上彰さんが【池上彰氏と考える教養、“奴隷的”な現代人が小説を読むべき理由】という記事の中で、小泉信三さんの「すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなる」という記事を引用していますが、そういった話に通ずるところがある気がします。

〈日経ビジネス / 2022年12月21日〉

「知の探索」を求めて

成田さんの「言ってはいけない、やってはいけない領域」に潜む未来の可能性を学ぶ分かりやすいものとしては「文学」なのではないでしょうか。

池上彰さんも同じ日経ビジネスの記事の中で、小説を読むことの有効性を説いていらっしゃいます。

ドストエフスキー『罪と罰』なんていうのは、我々の学生時代には必読書でした。要するに「ごうつくばりな婆さんが大金を持っていたって、なんの役にも立たない。だから俺様のものにして有効に使ってやるよ」と、金を奪い、老婆を殺してしまった青年の話です。でも、実際に殺人を犯してしまうと、すごく悩むわけです。心底悩む。その心情を読者は疑似体験するわけです。こういう本を、若いときに社員や役員、経営トップが読んでいるかどうかで、企業がどう成長していくかも変わってくるのではないでしょうか。

今、「行動経済学」にスポットが当たっているのも、結局、全ての分野において絶対的に必要なのは「人間を知る」ということです。

小説には成功本やハウツー本では割愛されがちな人間の泥臭い部分(どうにもならない難解な部分)が多分に語られています。

副社長になって3年半経ちますが、月日を重ねるごとに「経営って難しいな…」「みんなのこと、分かっていたようで分かっていなかったな…」と感じることが多くなっています。

それだけ成り立ての頃は、短絡的に考えていたのだと思うのです。

確かに、そんなに人間を簡単に理解することができるならば、人間史において遥か昔に諍いのない世の中になっているはずですよね……

というわけで、答えを導いたり、壊したりしながら、日々脳みそから血が出るほど考え続けることだけが未来を切り拓けるのでしょう。

最近、【知性の“レンジ”を広げよう】という記事でもそのようなことを書きましたが、成田さんと池上さんにさらに背中を押されたような気がしています。

もちろん、成功本もハウツー本もそれを知ることで得られることはまだまだたくさんあるので、さまざまな本を幅広く行ったり来たりしながら、自分の見識を広げられたらと思っています。

ということで、本日から “読書の冬” の始まりです。

楽しみながら、学ぶ9日間にしたいと思います!

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