「宝島」のつくり方
column vol.1145
昨日は大学生のインフルエンサー事情についてお話ししましたが
「大学生」といえば、興味深い取り組みを行っている生徒たちがいます。
東京大学の生徒が「芸人×東大生 特別授業 in 周防大島」というプロジェクトを先月行ったのです。
タイトルが示す通り、吉本興業の芸人と組んで、山口県の瀬戸内海に浮かぶ周防大島町の小学生たちに特別授業を実施。
〈東洋経済オンライン / 2023年11月28日〉
子どもたちに素晴らしい学びの時間を提供したのです。
知性と笑いの特別な授業
同大学では、学生の豊かな人間性の形成や、社会で生きる力を養うことを目的に、日常の生活とは異なるさまざまな価値観や文化に触れる体験型教育活動「東京大学体験活動プログラム」を展開。
2021年3月より吉本興業と組んで、「知」と「エンターテインメント」をかけ合わせた「笑う東大、学ぶ吉本プロジェクト」をスタートさせています。
今回の大島町でのプログラムもその一環として実施したのです。
小学生は島の8つの学校から33人の6年生が東和小学校に集合。
東大生の頭脳に、芸人のコミュニケーション力やエネルギッシュな発信力をかけ合わせた「笑って学べるオリジナル授業」のカリキュラムを、両者が力を合わせて作成しています。
7人の芸人と6人の学生が教壇に立ち、授業を2クラスに分けて進行。
芸人はそれぞれの得意分野を活かした科目を担当し、東大生との協業で5教科5時限の1日のカリキュラムを考案しました。
例えば、芸能界屈指の動物好きのココリコ・田中直樹さんは理科を担当。
子どもたちに「生まれ変わったらなりたい生き物」をテーマとして投げかけ、地球環境問題と絡めて考えてもらったそうです。
まあ、城マニアのロバート・山本博さんは社会を担当。
東大生をMCにしたコーナー仕立てのクイズ番組形式の授業で、子どもたちを楽しませながら、日本史と周防大島町の歴史について話し合ったようです。
そして、芸人先生のサポート役として子どもたちに人気のエルフの2人が参加。
各教室で子どもたちの目線に合わせて声をかけながら、授業をフォローしたとのこと。
どの科目も基本的には子どもたちに考えさせて発表させるスタイルで、先生となった芸人たちは子どもたちの発言をフォローしながら、合いの手を入れるなど、常に笑いを交えていく。
島の子どもはこの一日を大変喜んだそうです。
都会との「体験格差」をなくす
今回このような取り組みが実現したのも、周防大島自体に教育に関する熱き想いがある。
実はこれまでも、学校教育だけでなく、子どもたちの生きる力の育成することを重視してきた同町では、地元の有識者などが教壇に立つ授業を取り入れてきたのです。
また、児童数が少ない各小学校の授業だけでは、子どもたちの発想の広がりに限界があるとし、学校同士の合同授業である集合学習にも取り組んでいます。
普段とは異なる視点を取り入れることに注力し、子どもたちが多様な考えを持つ力を養うことを目指してきたというわけです。
また、こうした経験は、先生たちにとっても貴重な機会になっているとのこと。
今回、芸人と触れ合ったこともマネジメント能力の育成につながったようです。
さらに、本プロジェクトのもう1つの狙いは、都市部と地方の教育格差の是正にあります。
学校外の塾などの学習の場や、地域クラブといった交流の場の数は、都会と比べて少ない。
人口の違いにより、子どもたちの社会経験値として都会と差が出てしまうことが課題なのです。
経験の場をつくり出し、町の子どもたちに普段得られない学びや気づきを与える。
しかも、面白いなと思ったのが、このプロジェクトのボランティアに周防大島高校の生徒たちを巻き込んだことです。
運営を通じて、芸人から、東大生から刺激を受けることができる。
体験できる人を増やし、町の成長につなげていくという考えは、とても良いことですね😊
周防大島町に富裕層が移住するワケ
「周防大島町」といえば、もう1つ興味深い話があります。
実はこの町に富裕層の移住者が増えているのです。
〈日刊SPA! / 2023年10月24日〉
富裕層というのは、例えば、IT関連の起業家やマンガ家などクリエイターたちです。
こうした方々が島に集まったことで町民税の収入も前年の約4.8億円から約32.2億円に…!
当然、税収が増えれば、公共サービスの拡充も叶えられます。
しかし、なぜ大島町に移住者が集まっているのでしょうか?
その理由について、同じく移住者であり、現在は移住の相談対応や企画立案を手がける移住アドバイザーのいずたにかつとしさんは
「島の人」にあると仰っています。
なるほど!「フロンティアスピリット」。
先程の教育について先進的な取り組みをするワケも分かりますね。
もちろん、移住者を柔軟に受け入れることは簡単ではありません。
都会との文化の違いもありますし、新しい風は時に億劫になるものです。
ただ、いずたにさんのような移住アドバイザーが、
と話すように、一歩ずつ島の人と移住者を近づけている。
そんな努力の甲斐あってこそのようです。
こうした取り組みもあって、両者が一緒になって試行錯誤しながら「みかん鍋」のような名産を生み出したり、それまでなかったぶどうの栽培に取り組んでみたり。
島が発展を共創し、新しい魅力を開花させていく。
芸人×東大生のプロジェクトも含め、外の力を中の力にかえている、そんな好事例なのではないでしょうか。
地域活性の良きお手本として、今後も周防大島町には注目していきたいと思います😊
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