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「コンパッション」と日本の親和性
column vol.1082
最近、ビジネスの現場でも「コンパッション」という言葉がよく聞かれるようになりました。
一番よく耳にするのは「セルフコンパッション」ですかね🤔
かつて【自分には「武器がない」と思ったら】でもご紹介しましたが
コンパッションとは「思いやり」。
大切な家族や友人を励ますように自分に優しくする
ことを大事にし、マインドケアや個性の発掘などにつなげます。
このコンパッションについて、日本の文化・価値観ととても親和性が高いのではないかと感じた記事があります。
フォーブスジャパンの【これからのビジネスに「コンパッション」が必要なワケ】という記事です。
〈Forbes JAPAN / 2023年8月4日〉
本日はこちらの記事をベースに、なぜビジネスに必要なのか?日本人にふさわしいのか?
そんなことについて、お話しさせていただきます。
コンパッションとは「慈愛」
まず、これからのビジネスにコンパッションが必要だと思うのは、主に2つの理由があります。
それは、昨日書いた【「構想力」という「求心力」】という記事に凝縮されているのですが
①社会課題解決型ビジネスへの取り組みが進行すること
②AI時代はますます「対人」に価値をもつこと
が予想されるからです。
では、なぜ日本人こそコンパッションなのか?
『食事法の最適解』の著者で、RIDE Inc. ファウンダー&CEOの国府田淳さんは、コンパッションという言葉を「慈愛」という言葉で説明しています。
慈愛とは仏教用語で、慈=「与楽」、悲=「抜苦」とされ、抜苦与楽(ばっくよらく)の心と言われているのです。
つまり
慈=与楽
慈しみを指し、すべての人、物事に幸福を与えたいという心の働き
悲=抜苦
憐みを指し、苦しみを取り除いてあげたいという気持ちの働き
ということ。
さらに仏教では、慈悲の働きかけを「慈・悲・喜・捨」の4つに分類して説明しており、これを「四無量心」と言います。
慈無量心(慈しみ) 他者を幸福にしてあげたいと願う心
悲無量心(憐れみ) 他者の苦しみをなくしてあげたいという心
喜無量心(喜び) 他者の幸福を共に喜ぶ優しい心
捨無量心(平静) 自分を捨て、何の分け隔てもない心
こうして見ていくと、自分と他者との間に垣根がないことに分かります。
慈悲と聞くと、自分より他者を大切にするイメージが強いですが、実はそうではなく、ブッダは自分を大切にしたり、自分を律して、自分自身を調えることも同じくらい重要だと説いています。
つまり、自他一体と見なして幸福を得るという感じですね。
最近は、自分の考えと他人の考え、双方を大事にして議論・考察しようとするアサーショントレーニングを取り入れる企業も増えていますが、まさに慈愛の思想がそこに見えますね。
コンパッションは幸福度を上げる
マズローの6段階欲求説でも
第1段階:生理的欲求
第2段階:安全欲求
第3段階:社会的欲求
第4段階:尊厳欲求
第5段階:自己実現欲求
第6段階:自己超越欲求
最後は、自我を超えて「世のため、人のため」に生きることを望むことが最大の幸せだと示しています。
実際、自己超越欲求、つまりコンパッションを満たしていくと、非常に有益なことが自分の身に起こるそうです。
例えば、筑波大学名誉教授の村上和雄先生によると、密教仏教僧侶と一般人の遺伝子の比較を行った研究では
僧侶の方々に慈悲の心に通ずる共感性と関連する「抗ウィルス性遺伝子」と「血中代謝物マーカー」が見出され
慈悲が免疫機能の強化につながるという結果があるのです。
さらに、イェール大学医学部による研究によると、慈悲の瞑想をしている人の方が、していない人に比べて、苦しみに対する感受性が軽減されていたり
視覚的な反応力がアップしたり、主観を示す後帯状皮質の働きが鈍化して他人への共感性が高まるなどの効果が報告されています。
また、うつ症状の軽減、偏頭痛や肩痛といった慢性的な痛みの軽減、細胞の老化を防ぐなどといった研究結果も。
つまり、「世のため、人のため」ということが、想像以上に本人に利益をもたらすのです。
ですから、ペットを愛し慈しむというのもコンパッション・メリットの象徴的な事柄でしょう。
ちなみに、同じくフォーブスジャパンのサイトの中に、生活費のやりくりが厳しくても、ついついペットにお金をかけてしまうというイギリスの事例が載っていましたが
〈Forbes JAPAN / 2023年6月13日〉
こうしたことも、慈愛の持つ特性を感じる話なのではないでしょうか。
日本の「慈愛」をコンテンツ化する
日本人の文化や価値観は禅の影響を受けていると言われていますが、日常を見渡してみても、コンパッションを体感・学ぶ、さまざまな事例が頭に浮かびます。
例えば、金継ぎです。
金継ぎは、世界中に人気が広がり、尊ばれている日本の生活文化です。
〈現代ビジネス / 2023年8月11日〉
金継ぎの美。
これは、茶道の世界で使う「わびさび」と呼ばれる概念から生まれたもの。
ちなみに、上記、現代ビジネスの記事を執筆した『金継ぎ手帖』の著者であり、画家、金継ぎ作家として活躍する6次元主宰のナカムラクニオさんは
金継ぎがつなぐのは器だけじゃない、人と人をつなぐ接着剤なんだなと、しみじみ実感した。金継ぎの本質とは「壊れものとしての自分」を受け入れる技術なのだと思う。金色に輝くひとすじの線は、過去と未来をつなぐ光の糸なのだ
と語っていらっしゃいますが、非常に共感いたします。
「壊れもの=不完全な自分」を受け入れる。
まさにセルフコンパッションです。
不完全だから人は人と結び合って、補完し合っていく。
こうした日本の文化から「自他一体」が学べるというわけです。
そう考えると、日本には哲学・美意識の巨大な金脈があり、そうした財を良い意味で優良なコンテンツに変えていくと、この国はもっと豊かになっていくような気がしています。
日本人が気づいていない魅力を外国の方が見つけてくれることが多いですが、「慈愛」1つとっても深掘りすると大きな可能性に満ち溢れているので、そうした視点をもっと持てると良いですね。
昨日はAI時代について
人に向き合い、人を知る心
の重要性を語り、締め括りましたが、本日は
日本に向き合い、日本人を知る心
という言葉で締め括らせていただきます。
「日本(人)を知る」というのは、聞き飽きた言葉でもありますが、だからと言ってどこまで深掘りできているのか?
少なくとも私は自分で足りていないな…と感じますので、謙虚に学んでいきたいと思います〜😊
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