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東京で始める「農業」のカタチ

column vol.937

東京で農業を始める方が増えています

202021年度共にいずれもふた桁の人数が就農

支援団体への相談件数はこの5年3倍に増加しているそうです。

(16年度 89件 → 21年度 398件

〈朝日新聞デジタル / 2023年2月25日〉

都農林水産振興財団によると、20年度都内での新規就農者46人

このうち農家出身以外で独立して農業を始めたのは15人

そして21年度67人中、24人がこうした人たちだったそうです。

なぜ、東京で農業を始める人たちが増えているのか?

まずはその原因にフォーカスを当てたいと思います。

新規参入が増えた理由

この新規参入の大きな要因になっているのが18年施行都市農地貸借円滑化法です。

都市部の農地「生産緑地」について、所有者以外の営農でも税制優遇が認められたので、ご高齢化の農家さんにとって、畑を人に貸しやすくなりました。

また、非農家出身者の新規就農に力を入れてきた一般社団法人・東京都農業会議松澤龍人さんによると、そもそも「農業への関心の高まり」を感じるそうです。

低成長が続く中、経済的な豊かさより、生産の喜びなどに、より大きな満足感を覚える若者が増えている、と松澤さんは見ています。

好きでもない仕事を続けても、給料やその後のキャリア形成で報われるとは限らないといった認識の広がりもあるのではないか。最近は農業を『かっこいい』と思う人もいる

そういった若者の一人が、会社員の家庭に生まれながら、2016年に青梅市「畑違い」の農家となった繁昌知洋さん(32歳)です。

〈読売新聞オンライン / 2022年7月7日〉

東京では直接生産者と繋がる機会が少ない。

各地の駅前やイベント会場で開かれるマルシェに出店した際、「割高でも、顔の見える生産者から地元の野菜を直接買いたいと考える人が多い」ということに気づいたそうです。

とれたての野菜は都心部のマンション住民らの間でも評判となり、コロナ禍前後で宅配事業の注文件数は10倍に伸びたとのこと。

今では、市内外に16ヵ所の畑計約2ヘクタールを抱え、スーパーでは見かけない「UFOズッキーニ」「黒丸大根」といった珍しい野菜を含む40品目200品種を栽培。

自身の農園で農業体験会を開き、子ども向けの講演も続け

きつい、汚い、危険という農業の『3K』を 払拭し、一緒に農業に挑戦してくれる人を増やしたい

と意気込みを語っていらっしゃいます。

農業を始める「ベビーステップ」がカギ

とはいえ、課題も当然あります。

先程、都農林水産振興財団への398件の相談も、実際に農家になった方の数で言えば67人

厳しい見方をしちゃいますと…、17%程度です。

そして、都市農地貸借円滑化法によって農地を借りることが容易くなったとはいえ…、所有者が宅地化を希望すれば返さなければならず長期的な経営計画を立てづらい状況なのです…

そもそも地価の高い東京

畑とは別に作業場を確保する必要もあり、現実的には希望に沿う土地が見つからずに近隣県の千葉や神奈川などに向かう人も多いのです。

繁昌さんは「都内で増えている空き家を活用する手もある」と話し、「自治体側も農地担当と空き家対策を担う部署が手を組み、縦割りを打破するような工夫が大切だ」と指摘しています。

当然、国や都、市区町村もさらに就農しやすい一手を考えていることでしょう。

そんな中、まずは農業に触れる機会を創出しようと、東京の至るところでさまざまなアイデアが見られます。

例えば、ビルの屋上家庭菜園などで気軽に始める「アーバンファーミング(都市型農業)」は時代のキーワードになっています。

都市緑化大手「東邦レオ」ビルの屋上を農地化する取り組めており、東京など7ヵ所で貸し菜園を運営

JR新宿駅の駅ビル屋上の「ソラドファームNEWoMan」では、3平方メートルから菜園を借りて野菜を育てることができます。

とても人気で、すでに約40区画が全て埋まっており、畑仕事の第一歩として利用したいと思う人が多いことが分かります。

事業担当の山口薫さん

都市部で『ミニ農業』が体験できる貸し菜園のニーズは高い。家族や利用者同士の交流にもつながり、単なる金銭的利益を超えた価値がある

と話しており、畑のある生活さの豊かさを感じ取ることができますね。

「Tokyoを食べられる森にしよう!」

そんな「アーバンファーミング」で、1つの興味深いプロジェクトが動いています。

「Tokyoを食べられる森にしよう!」

という合言葉に、とある東京の出版社が立ち上がったのです。

〈Forbes JAPAN / 2023年2月25日〉

その名は、株式会社トゥーヴァージンズ

都市におけるリジェネラティブ、つまり再生型ライフスタイルとなる都市型農業を提唱する書籍『Urban Farming Life』出版イベントの実施を目的にクラウドファンディングを開始したのです。

〈 MOTION GALLERY / Urban Farming Life〉

このプロジェクトは、アーバンファーミングによる地産地消を支援するプラットフォーム「Tokyo Urban Farming」と共同で立ち上げました。

目的は2つ。

1つは、人々が孤立することで生じるさまざまな社会問題の解決です。

小さな都市型農園を共有地として人々が集うことで地域の人間関係が再構築され、土に触れて食べ物を育て、作物を仲間と分かち合うことで「魂と社会」が再生する

とプロジェクトは提言しています。

そしてもう1つは、都市型のライフスタイルを変革すること。

これは、世界人口の約半分が都市に暮らす現在、都市に暮らす人々の考え方を変えることが地球にとって大切であるという考えに基づくものです。

遊休地を緑化することで炭素吸収ヒートアイランド現象が軽減され、自分で食べ物を作り地産地消が広まることが、「フードロスの削減や菜食中心の生活へのシフト、ローカル文化の再生」につながる

ということを主張されております。

集めた資金は、書籍の出版の他、アーバンファーミングの考え方を全国に広めるためのコミュニティーファームや、書店でのトークイベント開催などに使われるとのこと。

目標額は150万円、そして期限は4月18日までです。

ちなみに、2月28日現在で約60万円

このまま順調にいけばという感じですかね。

先ほどの青梅市の農家となった繁昌さんは、かつて農業が心身に与える効果を調査する実験に協力したことがあったそうなのですが、その結果「畑仕事で得られる幸福感は大きい」との結論が出たそうです。

やはり、「農」は生活を豊かにする。

地方では農業を媒介にして関係人口をつくっていますが、東京でも畑に触れる人が増えると良いですね。

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