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働きがいを生む「コグニティブ・ダイバーシティ」

column vol.986

昨日は自由な働き方を象徴する「ノンリニア・ワーク」と、そこに紐付く「ワーケーション」が組織にイノベーションをもたらすという話をさせていただきましたが

組織とは社員一人一人の総和

それぞれが革新を生み出す社員であることが望ましいわけですが、そうした社員とはどのような環境で生まれやすいのでしょうか?

そのキーワードとなるのが「多様性」です。

「ダイバーシティ経営」とよく聞きますが、皆さんが思い浮かべるのは「性別」「何代」「国」など「デモグラフィック・ダイバーシティ」なのではないでしょうか?

確かにそれも大事なのですが、もう1つ注目したいのが「コグニティブ・ダイバーシティ」です。

「認知的多様性」ということなのですが、これはスキル経験などに関する、目には見えない部分での多様性を意味しています。

自分のスキルを語れますか?

このコグニティブ・ダイバーシティについての面白い事例がありますので共有させていただきます。

「NIKKEI リスキリング」に掲載されていたSP総研民岡良さんの記事です。

NIKKEI リスキリング

【Youの仕事は縁の下の力持ち? スキル言えない日本人】

〈NIKKEI リスキリング / 2023年4月12日〉

【情緒で語るな人的資本経営 社員の学びは会社の責任で】

〈NIKKEI リスキリング / 2023年4月12日〉

SP総研では、シンガポールの「entomo(エントモ)」というシステムを使い、ビジネスパーソン一人一人のスキルを可視化しています。

民岡さんは日本人のスキルに対する意識に課題があると仰っています。

例えば、日本シンガポール中学校2年生の子どもとを対象にしたスキルに関するワークショップを行った時も違いを感じたそうです。

シンガポールの子どもは親の助けなしに

「私は問題解決能力があります」
「ファシリテーションもよくやります」

と、どんどんスキルっぽいものを挙げられるのに対し、日本の子どもは、なかなか答えられないそうです…

そして、そんな様子を見た

「行動力はあるんじゃない?」

と助け舟を出してあげる。

…しかし、それは無理もないと思います…

なぜなら、小中学校で「スキル」を意識する教育なんてないのですから…

自分で好きなジョブタイトルを考えてみる

そこで、SP総研では社員発のジョブ定義をワークショップで行っているそうです。

会社が与えた職種(役割)を一旦忘れて考えていく。

例えば、総務の仕事を行っている方に自分で好きなジョブタイトルを考案してもらうとどうなるのか?

ある人は「縁の下の力持ち」と言うそうです。

制約をなくして自由に発想してもらうことで、サービスエンジニア系の方なら「メーカーとプロダクトのつなぎ役」「市場の代弁者」など、次から次へと自分ならではの新しいジョブタイトルが生まれるわけです。

これを実際やってみると面白いですよ。

例えば、私の理想は「時流予報士」です。

「池は先々を見通せる力と、さまざまな業界に精通していて知識も豊富。あいつは、次の時代を予見する男だ」

くふぅ〜〜、言われてみたい〜〜

想像しただけで恍惚とした気分になってしまいます。

そう評されるように日々精進しているわけですが、…現実は違います。

私はマーケティングコンサルタント会社の副社長ですが、やっている仕事は「合意形成師」です。

社内外問わず、多くの人たちが集まる中で合意形成をするのが日課となっています。

マーケティングコンサルタントとしては中長期計画ブランディングなど、部署横断のプロジェクトも担当。

そういった際は、各部署のさまざまな人たちの多種多様な考えの中、最適解を生み出さなければなりません。

社内でも同じです。

社員の数だけ考え方がある中で、さまざまなことを決断していく必要があります。

合意形成師、…と自信持って言いたいところですが、実際はそんなに上手く成し得ているとは思っていません…(汗)

みんなを納得させられる最適解が生み出せず、無力さを思い知る毎日

当然、日々恨みを買うわけです…(涙)

しかし、無力さと引き換えに恨みは引き受けるように心がけています。

ですから、サブタイトル

「恨みの収納箱」

…が最適ですかね……

ちょっと涙が出てきそうではありますが…、こうして自分のジョブを自由にタイトル付けすることで、単に「私はマーケティングコンサルタント会社の副社長です」と言うよりも、ずっと私のことが伝わりませんか?

また、そうすることで、恨みを収納できるのも立派なスキルなのではないかと錯覚すら覚えてきます(笑)

職種の固定観念から自由になる

こうしてスキルを可視化していくと、どんどん自分のプロフィールに個性・独自性が出てくるわけです。

そうして「この世にたった一つのプロフィール」を築き上げることができたなら、人はもっと仕事に喜びを感じ、やりがいが生まれると信じています。

ちなみに、株式会社パーソル総合研究所が実施した「グローバル就業実態・成長意識調査 -はたらくWell-beingの国際比較」という調査では、日本「はたらく幸せ実感」は世界18カ国・地域のなかで最下位…(汗)

〈まいどなニュース / 2023年4月15日〉

これは、…やはり会社に限定された「その他大勢の中の1人」という中での役どころがそうさせている部分もあるのではないでしょうか…?

この調査で、さらに気になったのは「リスキリング」についてです。

「仕事や働き方の選択肢」について、日本は他国と比べ、学習投資をしていても仕事や働き方の選択肢の増加に繋がらない傾向があることが判明…

本来ならば、同じ総務でもさまざまなタイプの人財がいて良いわけです。

しかし、日本では職種の固定された概念が強く、どうしても標準化されやすくなっている

やはり、職種の定義はあったとしても、一人一人違ったスキルを持ち、違う役どころがあるという「コグニティブ・ダイバーシティ」が必要です。

同じ職場で同じ職種の仕事をしていても、多様性がある。

そして、各々の個性のもと、さらにリスキリングにより、固有性を高めていく

それが私にとっての組織の理想です。

自分だけのスキルの可視化が働きがいを生む

自分だけのスキルを整理して一覧にして可視化する。

『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』シリーズでお馴染みの学びデザイン社長・荒木博行さんは、かの有名レストラン・エルブジ「メンタルパレット」の概念をキャリアデザインにも取り入れることをオススメしています。

〈東洋経済オンライン / 2023年4月7日〉

エルブジは、食材テクニック、そしてソースについて、それぞれ独自に磨きを重ねていき、食材×テクニック×ソースから構成される(メンタルパレット)を作り上げていたとのこと。

つまり、いきなり具体的なメニューを考えることをせず、メンタルパレット内の要素の完成度を追求していく。

そして、最終的にその時々のニーズに合わせて、要素同士を組み合わせていき、クリエイティブなメニューを生み出していくのです。

荒木さんは、これをキャリアにも転用していくことを推奨しています。

自分のスキルを整理し、その時のシチュエーションによって、パレットの中のスキルを組み合わせて期待に応えていく

そうしていけば、どの会社でも活躍できる汎用性の利く「ポータブル人財」にもなれるはずです。

もちろん、転職をオススメしているわけではないですが、自分だけの「キャリアパレット」をつくり上げていけば、自社内での存在感や必要性が増しますし、「働きがい」につながっていくのではないでしょうか?

演劇やスポーツに同じ役・ポジションがないのと同じように、会社組織の中でも一人一人が果たすべき使命が違うと良い。

そんなコグニティブ・ダイバーシティの考え方が、もっともっと日本で根付くと良いと思う今日この頃です。

私も単なるマーケティングコンサルタント会社の副社長から「時流予報士」になれるように努めていきたいと改めて思う、本日の事例記事でした。

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