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食と持続可能な未来

column vol.851

今週、いよいよそんな時代が来たかというニュースがありました。

それは、高校の給食に、ついに食用コオロギを使ったメニューが登場したことです。

〈ABCニュース / 2022年11月28日〉

この日本初を成し遂げたのは、徳島県小松島市にある県立小松島西高校

「カボチャコロッケ」食用コオロギのパウダーを取り入れたそうです。

食用コオロギは、牛や豚などと比べて少ないエサで育てることが可能で、環境問題や食料不足の解決策として注目が集まっています。

この話だけではなく、最近は「食×持続可能性」の記事をよく見かけるので、本日はこちらのテーマについてお話ししたいと思います。

敏腕シェフが挑戦する「1%」の可能性

まず、最初にご紹介したいのが、食のサステナビリティに取り組むアメリカの非営利団体「Zero Foodprint」です。

〈Forbes JAPAN / 2022年10月30日〉

同団体は「Restore」と呼ばれる環境再生プログラムをカリフォルニア州食料農業部およびカリフォルニア州大気資源局と共に運営しているのですが、これは、レストランが売り上げの1%Zero Foodprintに送り、同団体はその資金を農家に援助することで、「環境再生型農業」に切り替えていく取り組み。

発足した2020年から現在まで至るまで、同社のプログラムに参加しているレストランやフードビジネスは100近くにのぼり、31軒の農家に、55万ドル(約7476万円)以上の助成金を給付してきたそうです。

Zero Foodprintの創設は2015年

創設者のアンソニー・ミントさんとカレン・レイボヴィッツさん夫妻は、アメリカの超人気店「Mission Street Food」を経営していた敏腕シェフ兼経営者

お二人はレストランを経営を通して、サステナビリティを実現するための行動を行っていましたが、次第にフードシステム全体を見直していかないといけないと考えるようになり、現在に至ったそうです。

最初はコンサルティング事業から開始。

監査によってレストランが排出する温室効果ガスの量を算出し、それを削減するためのアドバイスやカーボンクレジット購入の仲介を提供したのです。

このコンサル経験を通じて

レストランが排出する炭素を相殺(オフセット)するために必要な資金は、平均して売り上げの1%である

という方程式を生み出し、Restoreの着想に繋げました。

このおかげで、農家たちはZero Foodprintからの助成金を堆肥の活用被覆作物の導入に役立てているのです。

こうした取り組みが世の評価を得て、2020年、「米国の料理界のアカデミー賞」とも言われるジェームズ・ビアード賞「Humanitarian of the Year(年間最優秀人道支援賞)」にも選出。

アメリカのフードシステムにおいて大きな期待を背負っています。

「いのちのゆりかご」を次の時代に

農業の未来を築くということで言えば、IoTで農業を変えるプランティオ代表・芹澤孝悦さんの取り組みに注目したいところです。

〈lifehacker / 2022年11月29日〉

まず、芹澤さんのお祖父様が凄い方なのです。

何と、プランターを発明して日本に広めた芹澤次郎さんなのです。

ベランダなどで野菜が育てられるプランターは70年以上前に発売され、今では日常の当たり前の風景になっています。

このプランターに込めたお祖父様の想いは「いのちのゆりかご」

この想いを引き継いで芹澤さんはIoTを活用して「食の自給率」を向上させるため「IoTプランター」に力を注いでいます。

農家の方が減少し続けている中、一般の方で野菜栽培を始める方は多い

ただし、郊外に畑を借りて始めても継続することが難しく、その解約率は1年で65%とのこと…(汗)

そこで、芹澤さんはIoTの力で、より気軽に、より楽しく都市農園の運営をできるようにいたしました。

土壌温度、土壌水分量、外気温、外湿度、日照のセンサーと、イメージセンサーカメラがついた、世界で初めてのIoTアグリセンサー「grow CONNECT」を開発し、栽培のナビゲーションが可能に。

例えば、バジルは土の温度が累積で100℃に達すると発芽するので、それに水や気温、日照の推移などを含めて計算でき、沖縄で育てていたら「3日で芽が出ます」北海道なら「7日で芽が出ます」など、環境に応じてアプリに適切な通知を送られてくる仕組みになっています。

アプリには、SNSのようなコミュニティやエンターテインメント要素もあって、フォローしている農園を通して、野菜に必要なお手入れが見られるので、専門知識がなくても育てられることができるのです。

野菜を飲食店へ持ち寄り食べる「FARM to TABLE」という企画もあり、育てて、食べるという体験が味わえます。

加えて、生産時や流通時で削減できたCO2を計ることができ、削減CO2なども見える化することが可能なのです。

テクノロジーの力により、都市に住んでいても、より農業が身近に感じられますので、お祖父様のつくった「命のゆりかご」は確かに次世代に引き継がれていくでしょう。

「主食」を“完全食”にする新たな取り組み

最後は、「健康で持続可能な生活」への燃える想いを抱く若き起業家の話で締め括りたいと思います。

〈THE 21 Online / 2022年11月15日〉

その方とは、28歳の若さでDeNAから独立し、「完全栄養の主食」の開発を成し遂げたベースフードCEOの橋本舜さん。

DeNA時代は、駐車場のシェアリングサービスを行なう「akippa」など、さまざまな新規事業を担当されていました。

しかし、多忙な日々の中で、なかなか健康的な食事がとれない…。

同じ悩みを抱えている人はいるだろうと思い、「完全栄養の主食」をつくることで誰でも簡単に健康的な食事ができるのではないかと考え、一念発起して会社を設立したのです。

そして、1年後に満を持して初めての商品「BASE PASTA」が完成。

1袋1食分で、1日に必要な栄養素の3分の1が含まれている、完全栄養の主食です。

すかさず、最初はアマゾンに出品。

メディアを集めて記者会見を行なうと、話題性もあり、予想以上の注目を集めたようで、アマゾンの食品部門では、ミネラルウォーターを抜いて堂々の1位になったこともあるそうです。

目指すのは、「主食をイノベーションし、健康を当たり前のものにする」社会。

確かに、オフィスでのランチは私もうっかりすると、麺ものか丼ものばかりを食べてしまいます…(汗)

そんな時、完全食のラーメン、完全食の丼が世の中に広がってくれたら、忙しない日々の中の大きなプラスになるかもしれません。

ということで、「持続可能な社会」の実現を目指して、食の世界もイノベーションが進んでいます

今後も、新しい挑戦が楽しみですね。

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