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“提供しない”顧客体験
vol.103
「最初のデートでサイゼリヤに行くなんてありえない」
SNSで定期的に上がってくる話題なので、ご存じの方も多いとは思いますが、アリ派、ナシ派の論争は今も続いております…😅
これについて、2009年から2022年まで社長を務めた堀埜一成さんがどのように捉えているかを語った記事が非常に深いと思ったので、ぜひ共有させていただきます。
〈東洋経済オンライン / 2024年6月4日〉
こうしたやり取りを見るたび、私はとても「ありがたいこと」だと思っていました。
一般に、デートに使うレストランは「ハレ(晴れ)」のレストランじゃないといけない、とされています。特別な日の「ハレ」の舞台となるべきレストランは、高級店がふさわしいというわけです。
それを「ありえない」と感じる人がいるということは、サイゼリヤは「ケ(褻)」のレストランだと思われているということです。「ケ」というのは日常です。つまり、サイゼリヤは普段使いのレストランという認識なのです。それこそ、サイゼリヤが目指している姿そのものです。
なるほど、なるほど、確かに仰る通りです。
まず、サイゼリヤは低価格でありながら、とても美味しい。
ちなみに、私のイギリス人の友人は、友達が日本に遊びに来ると最初に連れていくのが「サイゼ」と言っていました。
値段と味のギャップに、皆が驚く顔を見るのが楽しいようです(笑)
初デートでサイゼを選んだ人にしても、「恋人と初デートで一緒に行きたいぐらい好き」なわけで、それだけ特別な評価や愛がある。
そして、「ありえない派」はサイゼに行くとなってガッカリしているということは、堀埜さんが仰るように「普段使いしていること」を表している可能性が高いでしょう。
お店の特徴(低価格)をよく理解しているからこそ、残念に思うことができるからです。
つまり、初デートというテーマでは論争していても、どちらのグループにとっても「日常」にはなっている。
サイゼ=普段使いの代表選手
という同社の目指している社会的評価を得ているということですね😊
そして、堀埜さんが「初デート論争」に対して「ありがたい」と口にするのには、もう1つワケがあります。
話題になることでの口コミ効果です。
チェーンストアでは売上の5〜8%を広告費に費やしますが、サイゼリアでは一切かけないとのこと。
「安いレストランの代名詞」で、お店で出している価格そのもの(価格とクオリティのギャップ)が広告になっているからです。
そうした中で、例えばマクドナルドのビックマック指数のように、サイゼは他の店の値段や味を評価するときのベンチマークとして使われるようになっています。
「ミラノ風ドリアが何皿食べられるか」
という「ミラノ風ドリア指数」のようなポジションを獲得したわけです。
これは、サイゼの安さを知らないと成立しない会話ですので、それだけ「みんながよく行くお店」という肌感覚があるからこそ。
こうして、サイゼは日常会話の一部になることで、口コミ力を発揮しているというわけです。
そして、この口コミ力を最大化するために、堀埜さんはこのように考えていらっしゃいます。
モノがあふれる時代、お客さまがお金を出してくれるのは、商品そのものに対してではなく、ほかでは味わえない特別な体験(エクスペリエンス)に対してだけ、というわけですが、サイゼリヤには、お客さまの体験を会社がコントロールできるものではない、という発想が根っこにあります。
言い換えると、ユーザー・エクスペリエンスはお客さま自身がつくるものだ、ということです。お店の利用のしかたも、アレンジメニューも、SNSでのクチコミやレピュテーション(評判)も、すべてお客さまに委ねて、こちらは一切関わらない。
お客さまが好きなように利用するから、そこに愛着もわくし、自分なりの攻略法も出てくるわけで、それを企業側が管理できると思うこと自体が、そもそもおこがましいのです。
普通は、特別な体験を企業側は提供しようとしますが、サイゼではその逆。
ステージは用意するので、お客さんご自身で自由に物語を紡ぎ出してください、という考えを持っています。
最近、ナラティブデザインという言葉がマーケティングでもよく使われるようになりましたが
まさに、それを体現されているというわけです。
ですから、サイゼにとってのお客さんは、スポーツで言うところのサポーター。
サッカーでは、サポーターは12番目の選手と言いますが、まさに主役の一人として捉えているわけです。
ですから、クレームに対しても、堀埜さんは
この人はクレーマーではなく、サポーターです。文句を言っているように見えて、お店をよくしたいと思ってくれているサポーターなのです。
サッカーでも、不甲斐ないゲームをしたとき、いちばん文句を言うのがサポーターです。彼らが「おまえら、何してるんや」と怒るのは、チームを愛しているがゆえです。
と仰っているのです。
①お店の目指す姿(味とクオリティのギャップ)を明確にし口コミを起こす
②顧客をサポーターとして捉える
そうして、顧客の日常のステージとしての足場を固めていく。
経営的に、そしてマーケティング的に非常に学び多き事例でした😊
今後の自分の仕事にぜひ活かしていきたいと思います!
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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