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“熱狂”を生む「ナラティブ・デザイン」

column vol.840

本日は、来週のとある講演に向けて絶賛資料を作成しています。

テーマは「ファンをつくる」

私はより人財育成の点でお話ししようと考えているのですが、今回はファンをつくる上でのポイントを講演内容を一部切り取って、お届けしたいと思います。

「上顧客」と「ファン顧客」の違いとは?

よくマーケティングの中で「上顧客」「ファン顧客」という言葉が出てきますが、この違いをどのように思われますか?

上顧客とはよく買ってくださるお客さま。

その企業(店・メーカー)を評価してくださっているから購入されているわけで、ある意味「ファン」とも言えます。

しかし、「ファン」か否か「応援したい」か否かが重要だと捉えています。

つまり、例えば毎日使っている歯磨き粉は「大好き」ですか?

もしも、「まぁ…、何となくいつも使っているから、買い足しているだけで…」という気持ちなら、10年間同じ歯磨き粉を使っていたとしてもファンではありません

一方、スニーカーを履くなら絶対「ナイキ」という気持ちがあれば「ファン」です。

その人は、きっと同じナイキを履いている人に強いシンパシーを感じるでしょうし、もしもナイキが何か目標を立てて達成しようとしたとしたら、きっと応援するでしょう。

「ファン」をつくるための「ナラティブ・デザイン」

では、ファンはどのようにして生まれるのか?

それは先ほども触れましたが、「応援したい気持ち」を醸成することが大切なのです。

キーワードとなるのが「ナラティブ・デザイン」

「ナラティブ」とは、「第一人称の物語」のこと。

ストーリーに近いのですが、語り部自体が主人公の物語です。

「昔、あるところにおじいさんと、おばあさんが…」と語るのはストーリー。

ナラティブの分かりやすい例が「講談」ですね。

ナラティブは「ナレーター」のもとになった言葉でもあります。

つまり、顧客が企業を第三人称で語るのではなく、「私(たち)」という第一人称で語るようにすることが肝要なのです。

ファンの “呼称” がポイント

この「第一人称」をデザインするのに好事例なのがアイドル業界にあります。

例えば、BTSのファンは「ARMY」King & Princeのファンは「ティアラ」など、ファンの呼称があるグループがあります。

これにより、アーティストとファンの関係はシームレスになり「仲間」に変わります。

プロスポーツもそうですね。

Jリーグがファンを「サポーター」と呼んでおり、「12番目の選手」と位置付けることでナラティブをデザインをしています。

ナラティブをデザインするというのは、要するに「自分ごと化」させること。

企業で言えば、パッと浮かぶのがシャネル愛好家たちの呼称「シャネラー」ですかね。

ちなみに無印良品好きの人「ムジラー」と呼ばれているそうです。

最近ではファンマーケティングを仕掛けている企業が多いので、いかにファンの呼称ファンの中から自然発生的に生み出せることが理想です。

呼称ができれば、必ずその呼称をハッシュタグにした投稿が増えるはずです。

そうなると、SNS上でもファン同士が繋がりやすくなり、さらに熱狂をつくることになっていくでしょう。

「共創」が何よりもカギ

応援したいのがファンですし、応援することでファン心理は高まる

ですから、「応援する」状態をつくり続けることがナラティブ・デザインをすることにおいて非常に重要になります。

応援を別の言葉に変えると「協力」です。

例えば、ファンマーケティング界のエース、クラフトビールメーカーの「ヤッホーブルーイング」では、「超宴」という超大型ファンイベントでファンと交流をし、そして同社の今後についてさまざまな意見を出してもらっています

つまり、ヤッホーファンは、ヤッホーブルーイングの経営にアドバイスをしている内に、どんどん「私のヤッホー」という意識が高まり、どんどん自分ごとになっていくというわけです。

「未完」を使ったナラティブ・デザイン

また、アップル「ダイナミック・ヘッド・トラッキング・サウンド」というリスナーの動作に合わせて音の出方を変える音響技術を世に出しましたが、未完の状態だったことで話題になりました。

この技術は、ヘッドホンやイヤホンを装着したリスナーの姿勢を検知し、音源の位置をリスナーの顔の向きに応じて定位させるものなのですが、実際には、頭を動かしてから音源の擬似位置がそれに合わせて修正されるまで、10秒近いタイムラグがあったのです。

しかし、これはアップルの狙い通り。

未完の状態でも出したかったのは、メタバースでの音響技術において先行者利益をつくりたかったことが1つ

そして、未完の状態をベースにファンからの意見を吸い寄せることで、ブラッシュアップを図ったのです。

もちんファンとしては、自分の意見が反映すれば、その機能に対する愛着がますます湧きます

最高のものをつくり提供しても、すぐに他社に真似されコモディティ化する時代です。

やはり、これからの時代は「共に創る」ということをいかに設計していかがファン心理を高める上で、重要なファクターになっていくでしょう。

企業は「私たち」と語りかける

まとめますと、やはりどんなアプローチをしたとしても、そのゴールは顧客にとってその企業や商品が「第一人称」になることです。

少し古い話になりますが、オバマ元アメリカ大統領が、選挙演説で語りかけた有名なナラティブ・デザインの言葉がありました。

それは、「Yes we can!」

「私たち」と語りかけています。

昔、先輩にプレゼンでクライアントの心を掴むには、会話の途中からいかに「私とあなた」ではなく「私たち」と言うことが大事と教えられました。

こちらの提案を自分ごと化していただくためのテクニックです。

もちろん、先方が自分たちの話に共感していない状態で言えば、逆効果になりますので、言い換えるとそれだけ相手の立場に立って考えられてこそ使える言葉です。

詰まるところ、ファンを生み出す企業とは「私たち」で語りかけるだけの顧客に向き合う姿勢ができているということになるでしょう。

ナラティブ・デザインの根幹にあるのは、「私たち」で語りかけられるかという企業努力の自信なのかもしれませんね。

…とりあえずは、来週の講演では、聴講してくださる方々にちゃんと共感いただける内容に仕上げたいと思います。

それでは、また明日!

楽しい土曜の夜をお過ごしくださいませ。


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