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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2022年1月の記事一覧

『100万回死んだねこ』(福井県立図書館・講談社)

『100万回死んだねこ』(福井県立図書館・講談社)

2021年秋に発行されたこの本は、けっこう話題に上った。タイトルを見て、あの絵本のことだな、それがどうしたの、という気持ちにもなりえたであろう。愛と死を描いた感動的な、佐野洋子さんの絵本のことだ。だが、その本の題は『100万回生きたねこ』である。この勘違いはナーバスである。だが、本書の内容を知らせるには実によい広告塔となりえた。
 
本書は、図書館からのメッセージである。実際に窓口での問い合わせの

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『100分de名著 金子みすゞ詩集』

『100分de名著 金子みすゞ詩集』

Eテレで月曜日夜から本放送が流れている番組「100分de名著」は、東日本大震災の直後から続いており、好評である。私もこの番組で、何冊の良い本と出会ったか知れない。早いところ「聖書」そのものが出てこないかと愉しみにしているが、それはともかく、2022年1月は「金子みすゞ詩集」が取り上げられている。
 
子どもたちには、四半世紀前ほどからおなじみである。特に「私と小鳥と鈴と」は心に残るものとなっていた

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激オシ本

激オシ本

西日本新聞(2022年1月15日)の読書欄。著作権を侵すかもしれないことを覚悟でご紹介します。
 
この新聞の読書欄は私とひどく相性が悪く、読んだ本や読みたいと思う本は、毎週殆どないに等しいのですが、その中でこの日、コヘレト書について最近目立つ出版の多いプロテスタントの小友聡氏と、これまた露出度の高まったカトリックの若松英輔氏との本が、一般の書店員の目に留ったという記事が。
 
聖書について知る機

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『自分を変えたい』(宮武久佳・岩波ジュニア新書944)

『自分を変えたい』(宮武久佳・岩波ジュニア新書944)

岩波ジュニア新書がついにターゲットを「大学生」にしてしまった、と思った(それともすでにそうだったのか?)。大学の教養科目の教員である著者が、まさに「学生」へ向けて語っているのである。そして「はじめに」の中で、「本書は、大学にやってきた皆さんが」考え学ぶヒントをつかんでくれたらという思いで書いたと記している。但しそこには、「あるいはこれから大学を目指す皆さんが」とあるので、高校生も視野に入れていると

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『従順さのどこがいけないのか』(将基面貴巳・ちくまプリマー新書)

『従順さのどこがいけないのか』(将基面貴巳・ちくまプリマー新書)

ちくま新書の、ヤングアダルト版である。以前類似のテーマで書いた著者に、若者へのものとして書いてくれないかともちかけられたらしい。
 
タイトルからして、少し意図を受け取り損ねた。「従順さ」がテーマであることは分かるが、どこも悪くないだろう、と言いたいのか、悪い点はどこか、と言いたいのか、それだけでは判別がつかなかったのである。それはもちろん、私が著者を知らなかったからではあるが、正解は後者であった

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