碧空戦士アマガサ 第2章(7)
第2章 前編[1][2][3][4][5][6]
後編 [7][8][9][10][11][12]
(承前)
(これまでのあらすじ)
河崎道場に居候することになった湊斗。生活用品を購入すべくショッピングモールにやってきた一同は、モールの中庭で雨狐の襲撃に遭う。
襲撃に伴い誤作動した防犯シャッターによって閉じ込められた湊斗とタキ。晴香は、ひょんなことから預かっていたカラカサと共に、雨狐の打倒に向けて動き始めた。
- 1.相棒(7) -
【請求書】
シャッター修理費用:300,000円
自動販売機修理費用:600,000円
飲料破損賠償:100,000円
合計:1,000,000円 タキ 支払い任せた(晴香)
勘弁してください(タキ)
────"時雨"活動日報に挟まっていたメモより抜粋
「…………ちょこまかと」
自身を"鉄砲水"と呼称するその雨狐は、苛立ちと共に呟いた。
脳裏に去来するは、自らの"王"の言葉。
──ああ、ついでに、アマノミナトとその周辺の連中な。あいつらいたら殺してこい。褒美をやる。
──お前の水弾なら粉々にできるだろ。どれかひとりでいいからやってこい。期待してんぜ、"鉄砲水"
そう、"ついで"程度の仕事……の、はずだったのだ。
天気雨の下、傘の九十九神を手に、猛攻を躱し続ける人間の女に苛立ちながら、雨狐・"鉄砲水"は思案する。
奴らは基本的にはただの人間の集まりで、頼みの綱であるはずのアマノミナトは分断されて出てこられない。表に居るのは傘の九十九神を抱えた人間の女のみ。
"鉄砲水"と呼ばれた雨狐は勝利を、そして"褒美"を確信していた。
……その、はずだった。
「チッ……探索のついでにポイント稼ぎと思ったのによ……!」
「へぇ、探索? ……よっと!」
なにやら言いかけた女に、"鉄砲水"は水弾を放った。彼は降りしきる天気雨を集め、水弾として放つ能力を持つ。
女は再び回避した。巻き添えでアマヤドリが5体ほど消滅した。
肩で息をしながらも、その女は毅然と立ち、言葉を続ける。
「なに探してんだ? 探しものなら、お巡りさんに頼みな?」
「やかましい!」
再び"鉄砲水"が放った水弾は、中庭にあるベンチを吹き飛ばした。
──また避けられた。どんな動体視力してるんだ、人間のくせに!
"鉄砲水"が内心で悲鳴のような声をあげる間に、その女は懐へと肉薄してきた。反射的に"鉄砲水"が振り下ろした手刀はあっさりと回避され、虚しく空を切る。
女は、駆け込んだ勢いを乗せて右の拳を繰り出した。
"鉄砲水"は避けずに受ける。
「ふん……」
彼女の右腕は、"鉄砲水"の胴を貫通した。そこを中心に水面を叩いたかのように身体が波打ち──何事もなかったかのように、もとに戻った。
「学習しない奴だな。お前の拳は我々には届かんと──」
「じゃあ……」
余裕の笑みで勝ち誇る"鉄砲水"の視界の隅で、その女はなにやら左手を突き出した。その手には──消化器。
「こういうのはどうだ?」
「ヌゥッ!?」
白煙が"鉄砲水"の身体を包む。視界が効かない。"鉄砲水"は呻き、大きく飛び退った。
「小癪な……」
煙に紛れて姿を消した女を探すべく、"鉄砲水"は中庭を見渡す。と──
バギンッ。
「……?」
"鉄砲水"の背後から、なにかが──金属が割れるような音がした。
「作戦成功」
どこからともなく、女の声がした。
ガガッ、メキメキメキメキッ……
"鉄砲水"が振り返る間に、その破壊音は大きくなり──
バヅンッ!
シャッターを破って、自販機が飛び出してきた。
「なっ──!?」
"鉄砲水"の上半身が弾けた。破れたシャッターの残骸が衝突したのだ。
すぐに再生しながら、"鉄砲水"はそこから距離を取り──中庭の中央まで飛び退いた。
もうもうと立ち込める埃を破り、アマノミナトたちが中庭へと歩み出てくる。
「莫迦な……作戦だと? いつの間に……」
「悪いな、企業秘密だ」
破損したシャッター前に、人間たちが集まり──構える。その中心で、アマノミナトが番傘を手に、言い放った。
「さて──反撃開始だ」
「……上等だ」
"鉄砲水"は答え、相手を睨みつけた。
(つづく)
あけましておめでとうございます。第2章1話「相棒」後編です。
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