碧空戦士アマガサ 第2章(3)
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(承前)
- 1.相棒(3) -
ショッピングモール"らららんど"の中庭には、心地よい陽の光が射し込んでいる。晴香は、最も日当たりの良いベンチを選んで腰掛け、呟いた。
「ふぅ。こんなもんかな……」
「"こんなもん"って量じゃなくない?」
呆れた様子で応じながら晴香の元へと歩み寄るのは、荷物の山を抱えた湊斗だった。紙袋やら箱やらが顔の高さまで積み上げられ、若干視界が危ういほどだ。ちなみにカラカサは湊斗の抱える紙袋に突き挿さっている。
その後ろにはタキもいて、同様に両手に荷物を抱えていた。
「姐さん相変わらずまとめ買いっすね……」
タキはベンチに荷物を置きながらそう言うと、自分もベンチに腰掛けた。
「仕方ないだろ。久々のオフなんだ」
そんなやり取りを横目に、湊斗も荷物を置く。そして、紙袋からカラカサを取り出した。
『ぷはぁ』
「ごめんね。苦しかった?」
『新品の服の匂いがした』
「そりゃそうだ」
湊斗は笑いながら、大きく背伸びをした。
平日の昼間だというのに、"らららんど"にはそれなりの人が行き来している。家族連れやサラリーマン、近所のおばさん──暖かい中庭でランチを取る者もいて、平和な賑わいを見せている。
湊斗がそんな様子を眺めていると、ふとタキが立ち上がった。
「ちょっと飲みもの買ってきます」
「あ、俺も」
湊斗はカラカサを手に、タキの後をついていく。
自動販売機は、中庭の壁沿いにある奥行き2mほどの小部屋に設置されていた。中庭とはガラスで隔てられている。元は喫煙所だったのかも──などと考えながら、湊斗はラインナップを確認する。
「んー。水でいっかなー。湊斗くんは?」
小銭入れを取り出しながら、タキが湊斗に問いかけた。
「俺はお茶が──」
「あっ!?」
湊斗の返事を、タキの声が遮る。
遅れて、キーンと小銭の落ちた音。
「あ……」
湊斗の反応も間に合わなかった。
タキの手元からこぼれ落ちた500円玉は、不運にも自動販売機の下へと転がり込んでしまった。
「あっちゃー……500円……」
項垂れるタキをよそに、湊斗はさっさと地面に這いつくばる。
「み、湊斗くん!? 汚いよそこ!?」
「あー。結構奥にありますね」
タキの心配などどこ吹く風と、湊斗は自販機下の様子を確認する。
「手は届かないな……なんか棒とか……」
言いながら湊斗は立ち上がった。
そして、手にしたカラカサを見つめる。
「……流石に嫌だよね?」
『冗談でしょ?』
「だよね」
若干食い気味に答えたカラカサに、湊斗は笑って答えた。
(つづく)
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