碧空戦士アマガサ 第2章(6)
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(承前)
- 1.相棒(6) -
自販機ゾーン──奥行き2メートル、幅5メートルほどの、元は喫煙所だったと思しき空間。
防犯シャッターによって外界と閉ざされたそこで、タキと湊斗は自販機の足元に蹲っている。傍目から見ると男二人が酸欠で倒れたような状況だが、これでも彼らは脱出のための準備をしているのだった。
「……………………」
具体的には、二人は今、自販機と地面を固定するボルトを緩めている。
二人とも黙々と作業を続けており、聞こえる音といえば、外で晴香たちが暴れまわっている音くらいだ。
「……湊斗くんさ」
そんな沈黙を不意に破ったのは、タキだった。
「はい?」
湊斗は手を止めない。
そんな湊斗を見据え、タキはかねてより抱いていた疑問を口にした。
「……超常事件で被害者の記憶が無いのって、湊斗くんが関係してるの?」
「え」
硬直。
どうやらアタリだったらしい。湊斗は相当狼狽えている。
「ど、どうしてそれを?」
「独自の推理。ああ、姐さんにすぐ言うつもりはないから。安心して」
"時雨"の幹部──光晴と晴香は「一緒に稽古したら友達」系の脳筋で、その直感を補強するのはいつもタキと乾の役割だ。湊斗の件に関してもそれは同様で、昨日の事件のあと、二人は湊斗に関する調査を行なったのだった。
言葉に困った様子の湊斗を尻目に、タキは全てのボルトが緩んでいることを確認し、自販機の電源プラグを抜いた。
「よし、準備完了。配置について」
「あ、はい」
タキが促すと、湊斗は自販機の側面に立つ。
「率直にいうと」
タキはその反対側に立ち、話題を再開した。
「僕はまだ君たちのことを完全には信用していない」
「まぁ……そうですよね」
見るからにしゅんとする湊斗。
──まぁ、悪い人じゃないんだよなぁ。
ぼんやりと考えながら、タキは自販機に手をかけた。
「というわけで、作戦開始前にひとつ聞きたいんだけど」
「はい」
反対側で同じように手をかけた湊斗は、神妙な顔でタキの言葉を待つ。
タキはその視線を、しっかりと受け止めた。
そして少しの間をおき──表情を崩す。
「湊斗くん、焼肉は良く焼き派? レア派?」
「えっ?」
「僕は良く焼き派なんだけどさぁ、姐さんは10秒で引き揚げちゃって──」
「いやいやいや、もっと他に訊くこととかないんですか!?」
「え? ああ、じゃあ、なんで僕には敬語なの?」
「そっち!?」
狭い部屋に二人の声が響く。
そのやりとりは、表にいる晴香に「遊んでんじゃねーぞ!」と怒鳴られるまで続くのだった。
(後編へ続く)
2018年最後のアマガサ更新です。次回から反撃開始!
次回はまぁ、3が日中に更新できるといいなーって程度です。
みなさま良いお年をお迎えください。
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