碧空戦士アマガサ 第2章(8)

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承前

- 1.相棒(8) -

 晴香が中庭で攻撃を避け続けていたのには、三つの目的がある。

 ひとつ目は、怪人たちを中庭から出させないようにすること。ふたつ目は、水弾の巻き添えでアマヤドリの数を減らすこと。これはカラカサの提案だ。そしてみっつ目は──作戦伝達のために時間を稼ぐこと。

「伝言役ありがとな、カラカサ」
『いえいえ』

 晴香の建てた作戦は、タキと湊斗を守るための陽動作戦だった。
 なにもしなければ、タキと湊斗が脱出したとき、水弾で狙い撃ちにされる。そう考えた晴香は、自らが囮となって雨狐を引きつけることにし、カラカサに伝言を託したのだった。

 雨狐は、中庭の中央に立ったまま動かない。タキと湊斗がふっとばしたシャッターに抉られた身体を再生しているのだろう。

 思案する晴香の手元で、カラカサが跳ねた。

『"3分後にできるだけ派手に脱出しろ"なんて大雑把な指示でよく動けたね……』

 言いながら、カラカサは晴香の手を離れると、湊斗の左手に収まった。

 湊斗はそれを肩に担ぎながら、天気雨の降りしきる中庭へと踏み出し、口を開く。

「タキくん曰く、"いつものこと"なんだってさ」
「なんならいつもよりちょっと丁寧なくらい……あだっ」

 口を挟んだタキに、晴香の投げたジュースの缶が直撃した。と──

「余裕こきやがって……!」
 中庭の中央、天気雨を浴びて再生していた雨狐が声をあげた。

 そしてその手に携えた扇子を地に向け、叫ぶ。

「出やがれ、アマヤドリども!」
 その声に応じるように、雨狐の周囲に再度アマヤドリたちが出現する。晴香は思わず呟いた。

「マジかよ。せっかく減らしたのに……」

 ため息を吐く晴香の横で、湊斗が「あっ」と声をあげた。

「そうだ、扇子!」

 湊斗はその勢いのまま、晴香へと向き直り、言った。

「晴香さん、アマヤドリと戦えるかも!」

(つづく)


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