多々良 哲

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記事一覧

「逃げられる社会から逃げられない社会へ」

ヒト(人類)の祖先がチンパンジー・ボノボの祖先と別れたのは600万~700万年前。現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカに登場したのが10万~20万年前。アフリカを出てグ…

多々良 哲
10か月前
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柄谷行人、バーグルエン賞贈呈式に出席

"柄谷さんの受賞理由は「現代哲学、哲学史、政治思想に対する極めて独創的な貢献」。そして「混迷するグローバル資本主義と民主主義国家の危機、めったに自己批判が伴うこ…

多々良 哲
1年前
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「イソノミア」 沢田研二

ele-king臨時増刊号「2023年、日本を生きるための羅針盤」に、柄谷行人インタビューが載っているというので、購入して読んだ。 インタビュアーの土田修氏は、アメリカの週…

多々良 哲
1年前
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交換を成立させる謎の力

「文芸春秋」4月号に、「賞金1億円の使い途」というタイトルの、柄谷行人インタビューが載っている。「哲学のノーベル賞」たるバーグルエン哲学・文化賞を受賞して、その賞…

多々良 哲
1年前
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「力と交換様式」合評会 ー 廖氏の[U/ABC/D]について

柄谷行人「力と交換様式」の合評会が2/18に東大で開かれ、そのZoom録画がYouTubeにアップされているんだが、これがめっぽう面白い。特に廖欽彬氏(中国・中山大学哲学系准…

多々良 哲
1年前
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クィアフェミニズムやマイノリティの立場から「力と交換様式」を読む

「文學界」2月号の特集「『力と交換様式』を読む」を読んで、こんな読み方があるのかと意表を突かれ、感心したのは、次の2つの読み。 ひとつめ。Dの実現に向けての意思や…

多々良 哲
1年前
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コミューンとアソシエーションの関係について

年末にたまたま読んだ本で、笠井潔がこんなことを言っていた。「激動期に自然発生的に誕生する"コミューン"と、平時から活動している"アソシエーション"はどういう関係なの…

多々良 哲
1年前
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人類のデフォルトは旅 ー 交換様式Aの出自について

ヒト(人類)の祖先がチンパンジー・ボノボの祖先と別れたのは600万~700万年前。現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカに登場したのが10万~20万年前。アフリカを出てグ…

多々良 哲
1年前

DはAよりも何が高次元なのか?

「力と交換様式」(柄谷行人著)を読み終えた。 「世界史の構造」「哲学の起原」「帝国の構造」等の一連の著作以降、柄谷氏は2015年頃から「Dの研究」に取り組んだ。Dの研…

多々良 哲
1年前
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「逃げられる社会から逃げられない社会へ」

ヒト(人類)の祖先がチンパンジー・ボノボの祖先と別れたのは600万~700万年前。現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカに登場したのが10万~20万年前。アフリカを出てグレートジャーニーを始めたのが5~6万年前。 で、定住生活を始めたのは、たった1万年前。。。

つまりヒトのデフォルトは圧倒的に遊動生活であったのだ。何百万年も旅を続けてきて、ごく最近(といっても1万年前ですが)、何故か、旅をやめた

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柄谷行人、バーグルエン賞贈呈式に出席

柄谷行人、バーグルエン賞贈呈式に出席

"柄谷さんの受賞理由は「現代哲学、哲学史、政治思想に対する極めて独創的な貢献」。そして「混迷するグローバル資本主義と民主主義国家の危機、めったに自己批判が伴うことのないナショナリズムの復活という今の時代において、その作品は特に重要である」とされた。"
"審査委員で中国・清華大学特別教授の汪暉(ワンフイ)さんは「世界的な民主主義の危機を迎える今日、柄谷さんの思想は特に示唆に富む」と述べた。"

きわ

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「イソノミア」 沢田研二

「イソノミア」 沢田研二

ele-king臨時増刊号「2023年、日本を生きるための羅針盤」に、柄谷行人インタビューが載っているというので、購入して読んだ。
インタビュアーの土田修氏は、アメリカの週刊誌「ニューヨーカー」が「イソノミア」(柄谷行人が「哲学の起源」で提唱した「無支配」を意味する概念)を取り上げて評価した、という話からインタビューを切り出している。
「イソノミア(無支配)とはハンナ・アーレントが言っているように

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交換を成立させる謎の力

交換を成立させる謎の力

「文芸春秋」4月号に、「賞金1億円の使い途」というタイトルの、柄谷行人インタビューが載っている。「哲学のノーベル賞」たるバーグルエン哲学・文化賞を受賞して、その賞金が100万ドル(約1億4千万円)だというので話題になっているのだ。
柄谷行人は「この取材が来たのも、その(賞金額)の力でしょう(笑)」と笑いを取ってから、「文芸春秋」読者向けに噛み砕いて、「交換様式論」を説明している。

以下、引用。

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「力と交換様式」合評会 ー 廖氏の[U/ABC/D]について

「力と交換様式」合評会 ー 廖氏の[U/ABC/D]について

柄谷行人「力と交換様式」の合評会が2/18に東大で開かれ、そのZoom録画がYouTubeにアップされているんだが、これがめっぽう面白い。特に廖欽彬氏(中国・中山大学哲学系准教授。日本哲学、東アジア哲学、比較哲学。田辺元の研究者だって。この時点ですでに凄いw)による、交換様式の新解釈の図解が凄い。

その図解が示すのは、「世界史の構造」と「力と交換様式」の共通フォーマットが[U…A/BC/D]であ

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クィアフェミニズムやマイノリティの立場から「力と交換様式」を読む

クィアフェミニズムやマイノリティの立場から「力と交換様式」を読む

「文學界」2月号の特集「『力と交換様式』を読む」を読んで、こんな読み方があるのかと意表を突かれ、感心したのは、次の2つの読み。

ひとつめ。Dの実現に向けての意思や企画に対して否定的な柄谷の態度が、「『革命』『運動』に対するジェンダー論的クィアフェミニズム的介入と遠くない」とする渡邊英理の読み。以下、引用。

”現在をないがしろにする未来的ユートピア志向、「大義」のためには性の政治を等閑視すること

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コミューンとアソシエーションの関係について

コミューンとアソシエーションの関係について

年末にたまたま読んだ本で、笠井潔がこんなことを言っていた。「激動期に自然発生的に誕生する"コミューン"と、平時から活動している"アソシエーション"はどういう関係なのか、どう結合しうるのか、というのが回避できない難問なんですね。(中略)コミューン的なものには高揚と衰退があるし、高揚したまま10年も20年も続くわけではない。コミューンはアソシエーション的なものに引き継がれ、それを母体としてまた大衆蜂起

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人類のデフォルトは旅 ー 交換様式Aの出自について

ヒト(人類)の祖先がチンパンジー・ボノボの祖先と別れたのは600万~700万年前。現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカに登場したのが10万~20万年前。アフリカを出てグレートジャーニーを始めたのが5~6万年前。で、定住生活を始めたのは、たった1万年前。。

つまりヒトのデフォルトは遊動生活なのです。
何百万年も旅をしてきたのに、ごく最近(1万年前ですが)、何故か(よほどのやむを得ない事情で)旅を

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DはAよりも何が高次元なのか?

DはAよりも何が高次元なのか?

「力と交換様式」(柄谷行人著)を読み終えた。
「世界史の構造」「哲学の起原」「帝国の構造」等の一連の著作以降、柄谷氏は2015年頃から「Dの研究」に取り組んだ。Dの研究の中で、「交換様式」に加えて、重要なキーワードとして浮上したのが「力」であった。そうとなれば、改めて「力」という視点から、世界史(A、B、C)を再考しなければならなくなり、「力と交換様式」が著された。

で読み終えて、A=互酬交換(

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