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「イソノミア」 沢田研二

ele-king臨時増刊号「2023年、日本を生きるための羅針盤」に、柄谷行人インタビューが載っているというので、購入して読んだ。
インタビュアーの土田修氏は、アメリカの週刊誌「ニューヨーカー」が「イソノミア」(柄谷行人が「哲学の起源」で提唱した「無支配」を意味する概念)を取り上げて評価した、という話からインタビューを切り出している。
「イソノミア(無支配)とはハンナ・アーレントが言っているように、自由であることが平等であるような社会の原理です」「イソノミアは危機に陥っている民主主義を真に再生させるような、新たな政治システムを考える鍵になるでしょう」と、柄谷行人は説いている。

けど、このインタビューの収穫はそこではない。真に驚いたのはそこじゃなくて、日本では「哲学の起源」への反響はあまりなかったが例外があった、と言っている次のくだり。
『例外は、元タイガースの沢田研二が歌った「イソノミア」です』『私も、彼がどういう経緯で「イソノミア、無支配」と歌ったのかは、よくわからないのですが(笑)』と言っているくだり!
え?ジュリーが「イソノミア」っていう歌を歌ってる? まさか?ホントか?と思ってググってみたら、あった、本当だった。。
沢田研二が2017年3月11日にリリースした、9年ぶり76枚目のシングルだって。。、

「哲学の起源」は2012年11月刊行である。間違いなく、ジュリーは柄谷行人の「哲学の起源」を読んで、「イソノミア」という概念に強く惹きつけられ、そしてこの歌詞を書き、9年ぶりのシングル曲を作って、3.11にリリースしたんだ!
(「哲学の起源」は「世界史の構造」のスピンオフみたいな本だから、「世界史の構造」を読んでいないとよく理解できない。ジュリーは読んだに違いない。)

どうしても、すぐに聴きたくなって音源を探し、アマゾンミュージックで発見し単品購入した。
で、聴いてみて、またまたぶっ飛んだ!
イントロはエモーショナルなエレキギター1本。そして、「自然の底力はなにより強い」という歌い出しで始まる、壮大な大自然賛歌、人間批判の歌なんである。サビはの歌詞は「原子力NO!NO! 無支配OK!」。最後は「無支配、イソノミアー!」と重厚なコーラスで高らかに歌い上げる。
ホント驚いた。最後まで楽器はエレキギター1本のみというアレンジもすごい。

「自然を愛せるのは無支配だろう」と歌っていて、ジュリーはイソノミアを人間が自然を守るために必要な思想として受け取ったことが分かる。それは大正解だ。
人間が人間を支配する社会は自然をも支配し収奪する。その典型が原子力だ。自然を守るためには、人間が人間を支配しない社会を築かねばならない。
原子力とイソノミアを対語にしたジュリーはすごい。あんた、いったい何者なんだ!


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