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「力と交換様式」合評会 ー 廖氏の[U/ABC/D]について

柄谷行人「力と交換様式」の合評会が2/18に東大で開かれ、そのZoom録画がYouTubeにアップされているんだが、これがめっぽう面白い。特に廖欽彬氏(中国・中山大学哲学系准教授。日本哲学、東アジア哲学、比較哲学。田辺元の研究者だって。この時点ですでに凄いw)による、交換様式の新解釈の図解が凄い。

その図解が示すのは、「世界史の構造」と「力と交換様式」の共通フォーマットが[U…A/BC/D]であるのに対して、「Dの研究」(2015~16年に柄谷行人が雑誌「atプラス」に連載した「力と交換様式」の元になった論考)のフォーマットは[U/ABC/D]である、という解釈。で、廖氏によれば、正しいのは後者のフォーマット[U/ABC/D]である。

原遊動性Uは(純粋贈与であって)交換ではない。が、そこから非常に強い"力"が生じ、初期定住民に反復強迫的にA(互酬交換)をもたらす。 Aは発展(?)して、B(国家)及びC(資本)へと展開(転回)する。A、B、Cは互いに異なる交換様式だが、いずれも"交換"であるという点では共通している(同じ穴のムジナだ)。 一方、Dは交換ではない(と「Dの研究」では言っている)。が、そこから、C、B、A(資本=ネーション=国家の接合体)を根こそぎ揚棄するような、強い"力"が生ずる。

以上のことから、[UABC]と並べたときに、"/"で区分すべき断絶は、UとA、CとDの間に存在するのであり、ここに図解[U/ABC/D]が得られる。これを[非交換/交換/非交換(高次元)]という図解にも書き換えうる。そうすると勢い、[遊動/定住/遊動(高次元)]とも書きたくなる。(交換でも交換様式でもないDは、何らかの形での「遊動生活への回帰」を孕んでいることを示唆する。)

こうして廖氏は、「DはAの高次元での回復ではなく、U(原遊動性)の高次元での回復である」と結論する。世界史がドライブするエンジン(力の源泉)はU(原遊動性)にあり、Dとはヒト(人類)のデフォルトであった「遊動」=「非交換」への回帰(高次元での回復)だということだ。裏返して言えば、ABC=「定住」=「交換」とは、ヒト(人類)の1万年にわたる回り道(というか迷い道?)であった、ということか。

これに対して、國分浩一郎が[U→A↑D]と図解して、なんでも弁証法にしたくなる(笑)などと混ぜっ返しているのは余計だが、それでも流石、最後に「交換様式はわかったけれど、そもそも"交換"って何だっけ?」と言っているのは、この合評会の結語にふさわしいオープンクエスチョンと思われた(それは「非交換」て何?に通じるから)。この合評会の客席にいたという柄谷行人なら何と答えるのだろうか?

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