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走馬燈売りの堕天使-マスティマ- #1 後
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親方と老人は何やら言い争いをしている様だった。年若い親方は今と変わらない大きな身体を揺らして叫んでいる。
「待って下さいよマスター、そんなお身体で何処に行こうって言うんですか!」
「今日は昔からの連れが久々に会おうってな、顔を出さにゃ失礼ってモンだ。まぁ、このなりじゃあいつ会えなくなるかも分からんからな。」
「ですから、もっと安静になさって。家でゆっくりとしてからでもいいじゃあない
走馬燈売りの堕天使-マスティマ- #1 中
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トビー=マクガフはどうしようもない倦怠感と閉塞感に苛まれていた。
彼の働く小さなレストランはいつも常連で賑わう活気に溢れた場所であった。
客は慣れ親しんだ空気の中、何処か懐かしい料理の数々に舌鼓を打ち、親方の豪快な笑い声が響く厨房へ自然と惹き込まれていく。
学校も満足に通わず家を勘当同然で飛び出した彼を何も言わず住み込みで働かせてくれていた親方には心底感謝していたし、だからこそ店の為
走馬燈売りの堕天使-マスティマ- #1 前
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「…トォル」
何時の間にか其処に存在したかの様に突然声が木霊する。
トォルと呼ばれた小さな斑の猫がその声に牽かれてトテトテと歩み寄って来る。
「はいはーい、今日のシゴト見つかったんだね、マスティマ?」
「…うん、今回は十年分。もうあまり時間はないけれど」
「あれまー、たった十年かぁ、あんまし割の良いシゴトじゃなくて残念だね」
「…トォル。そんな事言わないの」
「あはは、ジョ
走馬燈売りの堕天使-マスティマ- #0
-序-
刹那
はたりと身体は横たわっていた
僕はきっと、死ぬんだと思う
走馬燈って言うのかな。聞いた事がある。
今無数の映像や音がざわざわと駆け巡っているのがきっと其れなんだろう。
何がどういうものなのかは最早分からないけれど。
しかしこうなってみると死とはなんて無情なんだと耽ってしまう。
今更自分にはどうにも出来ない訳だけど、流れていく何でもない風景や情景がなんだか急に愛おしく感じて離
初めまして、関隼一(せき じゅんいち)と申します。
連連と思った事を垂れ流したり、ふらっと思い付いたお話を書き殴ったりしようと思います。
どうぞ、お好きに覗いて行って下さい。