塔和モナカの暇潰し【超人狼サイドストーリー】

ダンガンロンパ二次創作、超人狼でのサイドストーリー用に書いた物です。
物語としても読めますがこちらは少しの断片的文章の気が強いので単体では少し読み辛いかもしれません、悪しからず…。

《プロローグ》

…某所。

その日、わたしはどうにも虫の居所が悪かった。
何故かは分からない、勝手に横に居るいけ好かない召使いのせいかもしれないし、結局何者にもなれない自分に苛々していたのかもしれない。

とにかく!わたしは機嫌が悪かったのだ。
たまには"コドモ"らしく、駄々を捏ねたかったのだ。

「もー!!ひーまーなーのーぉー!!!いーらーいーらーすーるーのーぉー!!!
なんかやれ今すぐやれほらやれそらやれモナカを満足させろお前の役目はそーれーでーしょーぉー!!!」

「…ッと、どうしたんだいお姫様?今日はやけに元気が良いね?何か良いことでも…」

「うるさい、そういう毒にも薬にもならない返答は求めてないの、召使いなんでしょ、とっととモナカを満足させろ。」

「弱ったなぁ…こんな大した才能が無いボク程度の考えでキミを満足させるなんて中々…
いや、そういえば彼がオモシロイ物を拾いました、とか何とか言ってたような…
うん、そうしようか。
…モナカちゃん、ボクはとある場所に向かおうとしていたんだけど計画変更するよ、先に行ってみたい場所がある。
そこならキミの願いを叶えるヒントがあるかもしれないよ…」

…………
「ここって…塔和シティー?どうして今更こんな所に…」

よりによって煩わしい思い出しかない場所に連れてくるなんて…やっぱりこの召使い、キライだ…

「ッははっ、そう怒らないでよ、どうやらここである実験が行われてるんだってさ、カムクラクンが見つけたんだって連絡があってさ。どうも才能を入れ替える装置らしいんだ。
超高校級の才能を他の人間に植え付けた結果、その人間は才能を受け入れ使いこなせるのか、はたまた狂ってしまうのか、色々試していたみたいだね、ははッ、悪趣味だよね…
でもさ、こんなボクでも素晴らしい才能を手に入れられるとしたらオモシロイかもしれないよね…モナカちゃんだって…欲しい才能の一つや二つ、あったりするんじゃないかな?」

…才能、才能か……もしわたしに才能があれば……きっと………

「分かった。」

「ン?何が?」

「まずは実験してみたい、幸いここにはまだまだ容れ物には困らない位人が居るんだし。彼等を使ってこのシミュレーションで試したい、モナカが満足出来るかどうか…」

「…フフッ、お気に召してくれた様で良かったよ、さて、ボクは失礼するよ。ちょっと試したいコトがあってさ。後は…カムクラクンが直してくれた彼に任せようかな…
頼んだよ、シロクマ。ボクのお姫様の機嫌を損ねない様に頑張ってね…。」

「ええぇ〜…!だ、大丈夫かなぁ〜、ボクなんかができるかなぁ〜…うーん、うーん、が、がんばるぞぉ〜。
がんばってモナカちゃんをオモシロくさせればいいんだよねぇ………うぷぷ…………」

こうしてわたしの暇潰しの為の実験という名のシミュレーションゲームが始まった。
被検体がどうなるかは知らないけど、オモシロイ結果になると良いな。
モナカの為に、皆頑張ってね…ふふふっ。

【シミュレーションが始まります…議論を始めて下さい…】

〘行間〙

……何故でしょうね…
彼の存在に少し胸が疼くのは…ハジメ、貴方のせいでしょうか…?
いや、今となってはツマラナイ事ですね、あの気狂いでも暇を潰す位にはなりますか…

ゆらり、と現れた姿に驚きも無く、只々視線を送る。

「…やぁ、元気?相変わらず顔色が悪いね。
ッふふっ、そこだけは前の方がまだマシだった気がするよ…」

「急に連絡を寄越したと思ったら、成程、例の子守りですか。
貴方に似合わないツマラナイ真似を一体いつまでやる気なんですか?狛枝凪斗?」

「やだなぁ、ボクは只の召使いだよ。お姫様に仕えてるってコトになってるんだ、今はね…」

「それが似合わない、と言っているんです。
…いや、貴方はやりますか、自らの目的の為ならどんなことでも。例え命を賭そうとも。」

「ッははっ、御明察。
あんまり時間も無いみたいだしさ、キミも知ってるんでしょ?例の件。
ボクは行くつもりだよ、そこには大いなる希望と絶望が集まる、予感がするんだ。
フフッ、ボクはボクの才能を信じてる、この感覚はきっと当たる。
…だからさ、その前にやれることはやっておきたいんだよね。
ボクは暫く動けなくなるだろうから…」

「ふム、察するに彼女を育てたい、ということですか?
器としては"彼女"には程遠いと思いますが…
まだ幻影を追い続けているのですか?」

「ッふふっ、違うよ、ボクみたいな屑が育てるなんて烏滸がましい。言葉通り、ボクは見守っているだけさ…

彼女は紛うことなき天才だよ、ボクのゴミみたいな才能でもない、キミみたいな造られた才能でもない。
完璧なオリジナル、だよ。

でもまだ未完成なんだ、不安定だし浮き沈みもする、でもだからこそ伸び代があるし、きっと彼女はボクの望みを叶えてくれる最凶最悪の存在の一人になってくれそうなんだ…
残された時間、ボクは彼女の踏み台になる必要がある、一人で飛べる様になる様にね」

「彼女は伏龍ではなく鳳雛、ですか。
不確定な分確実性は低いですが、可能性に賭けた、と?」

「確率論や運量での話ならボクの十八番、だよ。
さて、と。システムを作動させないとね、ボクも試してみたいことがあるし」

「…可能性、ですか。間違った答えに辿り着くかもしれない事に一体どれだけの意味があるんでしょうね…」

「…キミは完璧な存在、だもんね。だからこそオモシロくないね、ツマラナイ事だらけなのはキミ自身が一番ツマラナイからじゃないかな?
ねぇ、何の為にキミは完璧になったのかな?」

「…五月蝿い……」

胸が疼く…途端に言葉が溢れた。
こ、れは…私の、ではない…?
ハ…ジメ…?

「…フフッ、どうしたの、キョトンとしちゃって、図星だったかな?」

「いえ、私も確かめたい事が出来ました。暫く付き合いましょう」

私という存在、自らを考える時が来たのかもしれませんね…

ハジメ、貴方は私に何を…

【システムを起動します、被検体、並びに外部出力因子を抽出、内部データにて再出力します…】

〘Someday −とある日-〙
コインには表と裏が存在する、まぁ、当たり前の話だよね。
でもね、ボクにとってはどっちも表、なんだよね。

何回予想しても自分が思った方が出るんだから、そこに違いが必要無いんだ。
ッふふっ、どういうことかって?
早い話、ボクはどんな事だって退屈なワケさ。
学校のテストは鉛筆を転がせば正解が当たる、席替えは自分が思った席に毎回座れるし、なんならきっと宝クジだって買えば当たる…

あ、羨ましいって思った?
ま、そうだよね、大抵の人はそう思うだろうね。
ふふっ、無い物ねだりってこういう事を言うのかな?
有る人間からすれば…
こんな才能、碌でもないよ。

だって結果は分かってるんだ。
しかも"幸運"と来たもんだ。贅沢な話かもしれないけど、例えば毎日高級なステーキばかり食べる事を想像して欲しい。
初日は美味しいだろうね、でも一週間、一ヶ月、一年、十年…さて毎日が美味しい美味しいステーキさ。

ほら、想像したら分かるでしょ?
人間って罪な生き物でさ、飽きちゃうんだよね。どんなに幸せでも、さ。

要するに人が幸せを享受するには、そこに隔たりが無いといけないんだ。
幸せを幸せだと感じるためにはそれと同等、或いはもっと大きな不幸、って云うのかな。本来ある筈のソレ、が必要なんだよね。
…まぁ、そんな事は無いんだけど、さ。
ボクって超高校級の幸運、らしいから。

皆が羨めば羨む程ボクはこの才能を恨んだ。
どうして?って言われるのすら苦痛なんだ、辟易する、誰も分かっちゃくれない。
ボクは幸運、だからこそ幸せを感じた事が無い。
こんなの、塵、だ。屑、だ。ボクなんて本当に最低最悪の超高校級なんだ…。

毎日を何とも言えない虚脱感の中で、でも所謂幸運の中とやらで揺蕩っているボクはさぞ滑稽に映っているんだろう。

そんな、ある日だった。

「ねぇ、アンタってヒマ?見るからにそうよねぇ。
ね、一緒に絶望、してみなぁい?」 

そんな言葉とは裏腹に、眩しい程ニカリ、と笑った彼女に出逢って。

ボクは。
初めて自分の才能に感謝したんだ…。

《-プロローグへのエピローグ-》

【シミュレーションが終了しました…被検体及び外部出力因子のチェックを行って下さい……】

簡素な機械音と共に、案外呆気なく実験は終わりを告げた。

希望、絶望…
ジュンコおねえちゃんが固
執、執着していたソレはやはり全ての人間の根源的欲求そのものなんだろう。

今回だってそれを求める為だけに、何人もの人間が駄目になっちゃった。
じゃあわたしは?
わたしは結局、何を求めているの?

「…やぁ、お姫様。
どうだった?キミの暇を潰す余興、愉しんで貰えた、かな?」

「…別に。
結局才能なんて人から貰って良いことなんて無いんだなって思っただけかにゃー。
実験は失敗、でしょ?生き残った人達の方がもしかしたら酷いかも。
自分という容れ物に合わないのを詰めちゃえばそりゃ壊れちゃうよね、解りきって居てもそこに希望があるなら試してみたくなる。
人間って、というかこういうの考えていたオトナ達ってホントどうしようもないですな〜」

「ふふっ、如何にもコドモらしくない、悟った感想をありがとう。
あまり喜んで貰えなくて残念、まぁでも仕方ないよ、この系列の実験はとある"最高傑作"の1人を除けば成功したことが無いらしいし… 
まぁ、アレを成功と言って良いのか分からないけどね…」

分かりやすくオーバーリアクションで残念がり、嫌な言い方の皮肉を溢しながら、それでも彼は顔を歪めつつ妖艶に笑いながら話している、こういう所、本当に気持ちが悪い…。

わたしの軽蔑の表情を見て取ったのかは分からないけど、ニコリ、と微笑みを浮かべ直して話を続ける。

「でもボクは、とっても興味深かったよ、やはり希望には絶望が、絶望には希望が必要なんだ、ってね。
ッははっ、ボクの才能を"分け与える"ってのも中々オモシロかった、しね。
普通の人に運を分けると本来ある筈の運命がガラッと変わる事が結構あるんだね、ボクの予想と外れる動きをした被検体が何人かいたよ。
運だけじゃないんだろうけど、大きな要素になっていたのは確かかもしれないね」

「ふーん、試してみたかったってそういう事だったんだ、でも大丈夫だったのー?心配するわけじゃないけど装置に自分の身体を外部因子として繋いだってことでしょー?
何かしら後遺症的なモノとか残りそうだけどー」

「ッふふっ、まぁ、そういう所に関してはボクって何故か大丈夫なんだよね。
…運が良いのかな?実際、特に何の問題も無さそうだしね」

自分が無事だったのに今度はちょっと沈んだ表情をしている、本当に良く分からない奴…

「さて、と。どうしよっか。
お姫様の為に新たな暇潰しを探しに…」

「いや、もう良いかにゃー。
…うん、もう良い。
決めたよ、モナカ、会いに行ってくる。二代目江ノ島盾子として、あの超高校級の希望に。そうしたらきっと、分かるかもしれない。モナカの求めるもの。
希望には絶望が、絶望には希望が必要。その一点だけは同意しますしなー」

「そうかい、じゃあ此処でお別れ、かな?」

「良く分かってますなー、召使いの癖に生意気なのじゃー」

「もうボクが脚にならなくても良さそうだしね。
丁度良かったよ、ボクもそろそろ行かないといけなかったんだ。
ふふ、じゃあ、頑張ってね、二代目サマ…」

「うん、二度と逢いたく無いからとっとと野垂れ死んでねー、バイバイ」

…今はまだ、分からない。
でも会えばきっと答えが見つかる気がしている。
超高校級の希望、ジュンコおねえちゃんを倒した人。
苗木誠に、会いに行くんだ…

「……ふふっ、きっと逢えるさ。そうでなくっちゃ困るからね…さて…」

「…さて、行きますか。此処でのデータは十分に取れましたし」

「あれ?カムクラクン、案外元気そうだね。
外部出力因子のボクと違ってマトモに被検体として参加していたのに…
ッふふっ、流石、モノが違うって事かな?」

「一々ツマラナイ事を言わないでくれますか?
シロクマ、ついて来て下さい。クロクマのチップはここに。
…恐らく"要素"として2つ必要かと」

「はぁ~い、せっかく身体を貰ったからがんばって自分で歩いていくよぉ〜、多分、最後の旅になるんだよねぇ〜、楽しみだなぁ〜、うぷぷ〜」

「…へぇ、それが"奥の手"ってワケだね。
ッふふっ、途方も無い絶望が見られそうだ…
そうすればボクは、いや、ボク達の希望は、最高に輝くだろうね…
ハハハハハ、やっぱりキミは最高だよっ…!」

「…アナタの言葉を借りる様で少し癪ですが、私も可能性、とやらを真剣に検討してみようかと思いましてね。
今回、それが感じられただけでも収穫でした」

…ハジメ、アナタは私に何を見せてくれますか?
アナタは時に私を驚かせる、何か強い"意思"を感じさせるのです…
私の予想が正しければ…少しはオモシロイ事になるかもしれませんね…。
…そんな事を考えるなんて、柄でも無いですか。
…ふふ、後遺症、かもしれませんね…

【to be continued…next,Danganronpa 2: Goodbye Despair…】

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