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桑田怜恩 -If- 夏空のモノローグ【超人狼サイドストーリー】

「…では、良いんだね桑田くん、君に本当に未練が無ければ、同意書にサインをお願いするよ」

「…無いっす、もう野球とかどうでも良いっすから」

ジリジリと照りつける陽光の中、大きな入道雲が影を作り始める、暗くなっていく手元に嘆息し、手早く名前を書いていく。
あの日もこんなクソッタレみてぇな暑さだったと思うと反吐が出そうになる。

「はい、これでいいっすか、さっさと始めて欲しいんすけど」

俺は今、希望ヶ峰学園と提携しているという施設に居た、相対する男は樽崎、って言ったっけ?今から俺が受ける人体実験とやらのプロデューサーらしい。
苛つく俺を見て、樽崎は敢えてゆっくりと話し出した。

「本来君はここに来るべき存在では無いからね、この実験は予備学科の生徒達に任意の上で行っているものだから。
才能の植え付け、種の萌芽、うーん…きっかけ作り、と言った方が解りやすいか?
元来の器に新たな可能性を植え付けて育てていく、というものなんでね。実際開花するかは分からないし、まだまだリスクも不透明でもある。
ただ、予備学科の子達は必死な子も多いからね、多少のリスクを押してでも才能を欲しがるんだ。
もし超高校級の才能に伸びれば本科のクラスへの編入も可能だしね。
…しかし君は元々持っている側、だからね、少し驚いているのさ、そんな超高校級の才能を失うかもしれないリスクを負って、開花するかも分からないミュージシャンの才能を植え付ける、なんてね」

「いいんすよ…いらないもんが失くなるのに何か問題あります?
俺ぁ今ミュージシャンの才能が欲しいんす、大変な道ってのは分かってるから可能性は増やしておきたい、当然の事ですよね?」

「…分かった、決意は堅そうだね。
では、実験を行う前にデモンストレーションを見て欲しいんだ、具体的にどういった感じになるかは流石に君も見ておきたいだろう?
既に実験を施した何人かに議論形式でのゲームを行って貰っている。
ここで植え付けた才能を活かす練習をして貰うってわけなんだ。適応を早めるためにもどんどん才能を使うことは大事だからね、それから改めてどうするかを決めて欲しい、いいかな?」

「…分かりました」

画面を見ると俺と同じ位の歳の奴らが集まって何やら話をしながら準備をしている様だった。
…やれやれ、とっととやって欲しいんだけどな。
嘆息しながら俺は、そのデモンストレーションとやらを見届ける事にした、こうなるに至った日々を思い出しながら…

続く

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