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何食わぬ顔
2023年9月24日 18:22
枢機卿。カトリックの序列において、教皇に次ぐ職位だ。その職位につく者は、緋色のマントを纏う。目の前の男が纏うは、まさしく緋色のマント。この人が枢機卿?きっとそうだ。私はぎりぎりのところで、神に、信仰に命を救われた―そんな幸せと感激に、心の隅々までが優しい光で満たされた気分だった。…ところが、何かがおかしい。差し出されたパンを平らげ、ほんのわずかながらのエネルギーを得た私は若干冷静になり、
2023年9月23日 17:43
捕虜として過ごした少年は、全身の骨という骨が浮き出るほどに痩せこけている。銃弾を受け剣で切られ、それでもなおろくな治療を受けなかった男は、傷口から蛆が湧き、日々高熱にうなされている。目の前で家族全員が焼死する様を見た老人男性は、へたり込んでいつもぶつぶつと何かをつぶやいている。命からがら逃げてきたものの、救い出されはしたものの、彼らはもう、助からないと思う。私、オリヴィア・ベリーと両親、兄妹た
2023年9月22日 16:42
[ 第4話 大人 ]さんざんな目に遭ったが、俺自身が「森の中の子供」にならずに済んだこと、そして、ヨナギが無事でいてくれたことは、本当に何よりだった。ただ、怪我が無いにしては、あまりにもヨナギの姿に元気がない。むろん、見知らぬ大人から誘拐される、下手をすれば死んでいたかもしれない、なんてことを経験させられたのだ。そのショックの大きさを思えば、当然といえば当然たが、それでも、この反応は何かが違
2023年9月21日 18:17
[第3話 誘拐]気が付けば、日の光に陰りが出ていた。この街は元々、曇りや雨が多い。夕方になると、空の灰色はさらに濃さを増し、夜の到来を予感させる。お店のこともあるし、本格的に暗くなる時間帯になる前に家に帰らないと、父に叱られる。楽しい時間に終わりを告げる、ヨナギとの別れの時間を、いつもとても寂しく感じる。「ヨナギ、今日はそろそろ帰ろうか。」「ん。ほだね。ちょっと暗くなってきたひね。」
2023年9月20日 16:29
[第2話 足音 ](…お前の死まで見ることになるとはな。お前の冥福を祈ることくらいしか出来なくて、本当にすまない。)首だけとなったテリーの痛ましい姿の前で、心の中で祈りを捧げる。現実は、見たくもないものばかりだ。しかし、俺くらいは、生き残った者の使命として、一人の人間が確かに生きていたという証を、最期を、見届けてやらなければいけない。せめて、この目が見えているうちは。 *
2023年9月18日 22:05
[第1話 予感 ]1534年、英国教会が、ローマ教会、ローマ・カトリックと袂を分かつ。以後、便宜上、ローマ教会の教徒を「旧教徒(カトリック)」と呼ぶ。1554年、旧教徒と国教会の戦争であるライアットの乱が起こる。1558年、エリザベス1世、王位を継承。1564年、俺、ウィリアム・シェイクスピアがこの世に生を受ける。国内で戦争が起こったのは、俺が生まれるわずか10年前。この国の王族たち
2023年9月13日 12:35
case1のときもやりましたが、白昼夢の青写真 case2 二次創作「信仰」を書き上げての感想、批評、反省文等です。【ごめんなさい。】まず最初に、お詫びです。ゴア描写は、断りなくやっちゃダメですよね。そして結構、後悔しているというか、エドにせよ誰にせよ、元々は緒乃さんが作ったキャラです。人の創作物に出てくるキャラのイメージを損なうような改変は、いけないと思いました。それは当人への敬意を欠く行
2023年9月12日 12:12
[「信仰」完結編 ] 脳天から水を浴びせられた女性が、ようやく意識と正気を取り戻し、こういった。「これは、どういうことですか…。」この店で働くつもりでやってきたはずのアンは、身柄をロープで柱に固定され、おまけに後ろ手に縛られていた。時間は10分ほど前に遡る。アンは軍事訓練でも受けていたのか、捕縛にかかった俺に、素早く右手で掌打を鼻面に放ち、頭が下がったところへ、そのまま後ろ回し蹴り
2023年9月11日 21:52
[「信仰」 導入編 ]薄暗い通りの、小さな、小さな酒場。その小さな酒場を長年営んできた親父は、4年ほど前から目を悪くし、視力をほぼ失った。今は息子の俺、ウイリアムが実質的な店主として、店の切り盛りをしている。気の利いた料理も作れない上に、およそ酒場の店主など向かない性格だとも思っていたが、父の代からの気のおけない間柄にある常連客たちのおかげで、店はなんとか成り立っている。…と言いたいが、