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歴ログ-世界史専門ブログnote版-

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はてなブログ「歴ログ-世界史専門ブログ-」のnote版です。 https://reki.hatenablog.com/ はてなブログに掲載していた記事の転載・再編集版を公開して…
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2024年4月の記事一覧

朝鮮の抗日闘争の歴史

朝鮮の抗日闘争の歴史

1910年の韓国併合で大韓帝国は日本に併合され、以降35年間続く「日帝強占期」が始まるわけですが、その間程度の差はあれ朝鮮人の日本への抵抗運動は続いていました。
ただ朝鮮単独では日本の支配を覆すことはできず、太平洋戦争で日本が敗北したことがきっかけで戦勝国から与えられる形で独立することになります。その際、不幸なことに韓国と北朝鮮に分離してしまったこともあり、それぞれが自国の正統性を誇示するたため、

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失敗したお粗末なクーデター計画

失敗したお粗末なクーデター計画

政府転覆の陰謀を企てるのであれば、大物の支援者の資金援助はいるし、政府関係各所に協力者も必要です。
軍事物資も豊富ですぐに軍隊を投入できるだけの準備が必要だし、VIPとのコネも大事だし、政局や世論の見極めも大切。とにかく成功は難しいものなのです。

今回は準備がお粗末すぎて失敗に終わってしまった5つのクーデター計画を紹介します。クーデターをやろうと思っている人は参考になさってください。

1. ハ

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イスラム史の著名な女性8人

イスラム史の著名な女性8人

イスラムの歴史の中では正直なところあまり女性は登場してきません。
イスラムの社会秩序の中では女性は男性に守られるべき存在であり、公的なポジションに女性が就くことはまれであったからです。
その代わり家庭内では女性が完全に仕切っていて男は口出しできず、家庭内の教育は母親の役割であったので、女性の地位が低いというわけで全くなく、むしろ隠然たる力を持っていたのですが。

そんな社会秩序の中でも他の男性から

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ケベックの歴史と独立運動の発展

ケベックの歴史と独立運動の発展

カナダ・ケベック州は、カナダ東部の大西洋に面した地域で、カナダでも有数の大都市モントリオールを抱えます。
約150万平方キロの広大な土地に約770万人の人々が暮らしています。

ケベックはフランス系住民が建設した北アメリカ植民地ヌーヴェル・フランスが元となっており、イギリス系とは長年に渡って対立、時には戦闘状態にあった歴史があります。カナダ連邦の一部ですが、現在でもケベックでは英語に加えてフランス

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政治犯・凶悪犯が送られた10の「流刑島」

政治犯・凶悪犯が送られた10の「流刑島」

流刑島。
「夢敗れた男たちのたどり着いた先」みたいな感じでグッとくるものがあります。
島ってところがまたいいですね、閉じ込められた感あって。中央の抗争に破れて流されてしまい何もかも失ったが、今に見ていろ、ひっくり返してやる! ライバルへの復讐心と己の野望に燃える男たちが再起を図る…。いささか映画や小説の見すぎですが、歴史上で有名な流刑地は世界中にあります。

1. セントヘレナ島(イギリス領大西

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「アパルトヘイト」政策はなぜ生まれたのか

「アパルトヘイト」政策はなぜ生まれたのか

南アフリカの「アパルトヘイト」と聞くと、バスや公衆便所、水飲み場など公共の施設で白人と黒人が分けられているシンボリックな写真を思い浮かべます。
今の常識だとそんな差別が制度化されていたのが不思議なほどですが、なぜ1994年まで続いていたのか。

それは単に南アフリカの白人が他の国の白人より差別的だっただけではなく、南アフリカの特殊な社会状況・経済状況がそのような社会システムを作り出したためでした。

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クック船長殺害事件と「まれびと信仰」

クック船長殺害事件と「まれびと信仰」

ジェームズ・クック(1728-1779)はイギリスの探検家で、3回の太平洋の航海でタヒチやオーストラリア、ニュージーランドの周辺を航行。さらに、ヨーロッパ人で初めてハワイ諸島を発見したことでも名高い人物です。

クックは3回目の航海でハワイを発見し、地元のハワイ島民といざこざを起こしてその途上で殺されてしまったのですが、一時はクックはハワイ島民に「神様」と呼ばれ崇拝の対象になっていました。

なぜ

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ハンガリーに義賊「ベチャール」がたくさん現れた理由

ハンガリーに義賊「ベチャール」がたくさん現れた理由

弱きを助け、強きを挫く。農民の味方・正義の義賊。
世界各地に義賊はいるのですが、特に義賊の数が多く社会や文化に根ざしていたのが中央ヨーロッパとバルカン諸国です。
今回のテーマは、なぜこれらの地域で義賊がたくさん出現したのか、です。

1. なぜ盗賊は発生するか世界的な義賊研究の権威E.J.ホブズボームによると、盗賊が「義賊」として認識されるには以下の要因があるそうです。

農民社会の周縁部に生き、

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1898年アメリカ陸軍「腐敗牛肉缶詰事件」

1898年アメリカ陸軍「腐敗牛肉缶詰事件」

これは米西戦争後に米メディアが告発した「腐った牛肉缶」に関する記事の一文です。
戦争中、陸軍兵士たちに支給された牛肉缶は極めて品質が悪く、その肉を食べたせいで「多くの兵士が病死した」とされました。
20世紀初頭の全米を揺るがした食品スキャンダル事件です。

1. 蚊、マラリア、そして牛肉缶スペインを排除してキューバを掌握する主張は、もともと経済界を中心になされていましたが、世論の主意見ではありませ

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イランではどういう人物が「支配正当性」を得るのか

イランではどういう人物が「支配正当性」を得るのか

共同体というものは概して、自分たちの「トップのあるべき姿の文脈」を独自に持っています。

それは血縁だったり思想や宗教的連続性だったりするのですが、これをちゃんと持っとかないと絶対に納得しない奴が出てくる。揉めて共同体がまとまらない。下手すりゃ内乱にもなる。
なので「こういう理由でオレがトップなのである。分かったね」と言う必要があります。

日本の天皇も含め、正当性などは結局は神話でしかないので

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1810年ロンドン「バーナース通り事件」

1810年ロンドン「バーナース通り事件」

バーナース通り事件(Berners Street Hoax)は、1810年11月27日にロンドンで起こった伝説的ないたずら事件です。

バーナース通り54番地にある裕福なトッテンハム婦人の自宅に、突如大量の荷物配達人が押しかけました。荷物は朝から夕方まで絶え間なく届き、荷物配達人で通りは大混雑し、警察が出動して大騒ぎに。婦人は依頼した覚えのない大量の荷物に怖れおののきました。

1. バーナース通

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なぜサンフランシスコは「ゲイの聖地」になったのか

なぜサンフランシスコは「ゲイの聖地」になったのか

近年、同性愛者のツーリストが世界の観光業界で注目を集めています。
同性愛者の休暇取得率は一般人より21%も高く(Guaracino,2007)、レズビアン雑誌Curveの調査によるとレズビアンの約30%が、年間の旅行支出は2000ドルを超えると答えたそうです。
アメリカ、オーストラリア、カナダ、スペインなどの観光先進国はこれら、可処分所得の高い同性愛者のツーリストが落とすお金、通称「ピンク・マネー

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西洋美術で学ぶ聖書の物語(新約聖書編)

西洋美術で学ぶ聖書の物語(新約聖書編)

「聖書の物語を知ると絵画はもっと楽しい」
をモットーに、西洋絵画の題材によく取り上げられる聖書のエピソードをまとめていきます。前回は旧約聖書の物語を紹介しましたが、今回から新約聖書、 イエス・キリストの受難の物語です。非常に有名なエピソードばっかりなので、みなさんよくご存知のものばかりかとは思います。

13. 受胎告知大工のヨセフと婚約していたマリアのもとに大天使ガブリエルが現れ、精霊による神

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西洋美術で学ぶ聖書の物語(旧約聖書編)

西洋美術で学ぶ聖書の物語(旧約聖書編)

ヨーロッパに旅行に行くと、絶対に美術館に行く機会がありますよね。
ルーブルとか、バチカンとか、ロンドン・ナショナル・ギャラリーとか。
その時にたくさん見るに違いないのが「聖書を題材にした絵画」。

聖書に幼い頃から慣れ親しんでいるヨーロッパ人は「ああ、これね」って感じで理解できるでしょうが、あんまり知らない人間にとってはこれがどういう意味を含んでいるか理解できない場合が多い。
これって、めっちゃも

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