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難病患者、障害者のSTART-UP 【仕事がなければ「創る」という選択肢】

障害者創業



「はたらく」ことって、どうして就職だけを意味するんだろう?


クローン病で入退院を繰り返し、思うように仕事に就けなかった僕はずっと思っていました。

そして、働けないことで、口さがない人たちには、陰で「ニート」や「甘え」と言われていることも知っていました。


就職してみても「障害者はバカだ」と言われたり。
「障害者らしくしろ」とも言われたり。
自分らしくいることが許されず、仕事で活躍することも嫌がられたりしました。

「障害者」ということより、「私」のことが嫌いで、叩きやすい属性が「障害者」であったのかもしれませんが。


僕は思うところがあり、その同僚とは徹底的に争いました。


僕の言い分はほぼ通って、会社側も改善策を考えてくれたのですが、ギスギスした職場の雰囲気が嫌になってしまい、仕事を辞めました。

ハラスメントの問題が起きたとき、加害者も被害者もどちらも「組織の腫れ物」になりますよね。

味方をしてくれる人も応援してくれる人もいたのですが、体調の悪化も重なり、仕事を引き継がず辞めたことも良くなかったのかもしれません。
裏切りのように感じる人もいたと思います。


障害者雇用の転職会社には、この揉めている頃から相談をしていたのですが、「相手が大きい会社なのであまり揉めないでほしい」、「例え、あなたが悪者になっても、会社を辞めてしまえば、外部の人たちにはわからないから」、「あなたのスキルならすぐに同条件の就職先は見つかるから」と言われました。

悪いことをしたワケではないのに、悪者にならなくてはいけないことが、どうしても自分の中で飲み込めず、納得できませんでした。
ハラスメントという形で会社と散々争ったことで、転職会社にはすごく嫌がられていることはわかっていました。


体調を崩した後、大腸を全摘する手術をしました。
その復帰後、再就職を試みました。

しかし、その転職会社に「職務経歴書が恐ろし過ぎる」と言われ、それから求人に応募してみても、無視され。電話をしても、担当者は外出しておりません。メールを出しても返事は来ない。
期待をしても、時間だけが虚しく過ぎていきました。

当時、2ちゃんねるやTwitterを調べると、障害者雇用の転職会社は面倒な障害者の客に対し、法律上、断ることができないので無視や居留守を使うということが書いてありました。


おめでたいことに、僕は障害者のブラックリスト入りをさせられたようです。


俗に言う社会から「干された」状態です。


まあ、こうなってしまうと就労の支援はなく、もう自分ひとりでどうにかするしかないんですよね。


だから、自分ひとりでどうにかしました


行政書士の資格しかなかったので、社会保険労務士の試験を独学で勉強して、社会保険労務士になって、開業しました。


就職先がなくても、自分で仕事をつくることに成功しました。


僕は、この体験から。

難病患者、障害者のお金を稼ぐ手段って、「就職」に限られるのかな?

起業や創業という「第3の道」があるのではないかと考えています。


「障害者雇用」という言葉があっても「障害者創業」という言葉はまだない。


みんな無意識に、難病患者や障害者は劣っているものと決めつけているからだと思います。


難病患者や障害者でなくても。
困難や不幸を抱える人たちには、起業や創業は新たな選択肢となるのではないでしょうか。


世の中にもっと「創業」という言葉も根付かせたいと思っています。


ひとりでも多くの人が「自分らしく」生きられるように。

TOKYO創業ステーション

TOKYO創業ステーションは、東京都中小企業振興公社が運営する総合的な創業支援施設です。

東京都在住の方、もしくは東京都内で起業を予定している方なら、誰でも無料で利用できます。
起業を円滑に進めるための多岐に渡るプログラムを提供しています。

TOKYO創業ステーション (startup-station.jp)

丸の内と立川にあります。
僕は立川に通っていました。

社会保険労務士試験を合格した後、社会経験もなく、経営の知識もない僕を拾ってくれた施設です。

事務所の開業の仕方すらわからず、尋ねにきた僕を受け入れてくれました。

TOKYO創業ステーションに出会ったから、今の自分があります。
経営の知識はここで培いましたと言っても過言ではないと思います。
自分の運命を変えてくれました。
すごく感謝しています。

事務所選びも手伝ってもらって、いろいろな候補を教えてもらいました。
その中から見学に行って、今の事務所を選びました。

起業相談窓口イベント・セミナーなど、起業に関するさまざまな支援メニューが用意されています。
なにも起業のアイデアがなくても、アイデアをつくることから、いっしょに考えてくれます。

人工知能の使い方SNSの拡散方法経営学税務法務などのセミナーが役に立ちました。
他にもコミュニケーション自己表現アイデア思考のセミナーが充実しています。


何度も言うけど、無料です。


ハローワークは、確実に就職できるよう誰でも取得できる容易なスキルをつけさせてくれます。

TOKYO創業ステーションは、職につながるか不透明だけど、高度なスキルをつけさせてくれます。


まったく逆です。水と油のような施設です。
ですが、東京都は行政として面白い試みをしていると思います。

社会保険労務士として、就職以外の「はたらく」選択肢が増えることは喜ばしい。
だから、こういった取り組みが全国に広がるといいなと心の底から思っています。


僕の「難病患者の治療と仕事の両立支援、就労支援、創業支援」はTOKYO創業ステーションの事業コンサルタントを受ける中でブラッシュアップしていきました。
獅子の子落としのような厳しさもあるけど、やる気があるなら経営の能力は上げてくれます。


僕はこの施設を修了して、本当にお勧めできる施設だと感じました。


もし、このブログを読んで興味を持ってくれた人がいたら、ぜひ利用してみてください。

起業、創業のメリット

僕が開業してみて、良かったプラス面をまとめてみました。
よければ、参考にしてみてください。

・誰にも謝らなくてもいい

障害者雇用の就職では、自分の適正や特性に合わない仕事を強いられるということがありました。
そのことから、僕は周りに迷惑をかけていないか、会社の役に立てず負担になっているのではないかという負い目を常に感じて、まず上司にも同僚にも謝っていました。

ですから、起業の準備で最初に感じた快適さが、誰にも謝らなくていいということでした。

全てが自分の責任になるという裏返しですが、仕事をする上で他人に負い目を感じなくていいというのは、僕にとって心理的なストレスが大きく減るものでした。

同情や憐れみで仕事をさせてもらっているという窮屈さからも解放されたと感じます。

そのおかげで「自己開示」もしやすくなりました。
クローン病であるということを伝えて、周りの理解を得やすくなったように思います。
難病であっても、フェアな人間関係を形成しやすくなりました。

・自分に合った仕事に就ける

自分で仕事を選べるということですから、自分の能力を生かせる仕事ができます。
自分の強みを活かすことで、労働生産性をあげることも可能です。

障害者雇用のときは、アシスタント的な仕事ばかりで、これ、本当に必要な仕事なのかな?誰かの役に立っているのかな?と考えることがありました。
「障害者を雇用している」という会社の世間体のために、むりやり仕事を切り出してもらっている感覚が離れませんでした。
やってもやらなくてもどうでもいいような仕事が多かった気がします。

しかし、今は仕事の楽しさを実感できるようになりました。

自分の得意分野や興味がある分野で働くことで、やりがいを感じる瞬間が増えたと思います。

あと、困難や課題に直面しても乗り越えられやすくなるかな。
自分のスキルや特性を活かすことで、解決策を見つけやすくなってるような気がします。
僕の場合は、病気の特性上、体力不足はどうにもならないけど、知識不足は、勉強をすればいいだけなので、克服しやすくなったと思います。

・定年なく働ける

起業家には定年がありません。

自分のペースで働き続けることができます。

病気や障害を抱える人ほど、老後の心配は尽きないものです。

僕は、難病と障害がある上に、60歳を過ぎて自分に再就職先が見つかるとは思えませんでした。
生活保護にならないギリギリのところで生きてきたから、もらえる年金も微々たるもの。
老後の将来設計が描けませんでした。
でも、自分で仕事を始めたことで、どうせひとりだし、死ぬ直前まで働けばいいかなって。
孤独な時間も潰せて、経済的にも細々と食べていければ、一石二鳥だと思えるようになりました。

・自分の自由にやりたいことができる

働く時間や休日、働く場所を自由に設定できます。

僕には、このメリットも大きかった。
病院の通院日にも、体調の悪い日にもすぐ休めます。
難病だと生きるために「治療」は欠かせない。
仕事より治療を優先できます。

また、組織の人間関係の煩わしさからも解放されます。

僕の場合は、働いているとき、有給休暇をすべて通院日に振り分けていたのですが、同僚から「障害者ばかり好きな日に休めてずるい」と言われて、だんだんと希望日に有給休暇がとれなくなってしまいました。
そのことで、治療ペースが不規則になってしまい、体調を崩す大きなきっかけとなりました。
だけど、もうそんなことを言う人はいません。

何をするにも自由。
働きやすさは格段に上がると思います。

・会社員より高い収入を得られる可能性がある

みんなにとっては、これが1番のメリットかもしれない。
自分のがんばった分が、がんばった分だけ収入になる。
給与と違って、収入は青天井です。

これは、僕にはちょっと縁がないかな~。(笑)
マネタライズが下手だから。
採算をあんまり考えずに仕事しちゃいそう。

以上が、僕が感じた起業、創業のメリットです。

起業、創業のデメリット

反対に、僕が開業してみて、これは嫌だなと思うことも多くありました。
リスク管理をする上で必要なことですので、ぜひ知っておいてください。

・すべてが自分の責任となる

会社経営における責任はすべて起業家が負います。
病気や障害で許されるということもなくなります。
もちろん、重大な決断を迫られることもあります。

僕は、社労士としてのはじめての仕事が人生で1番最初の「自分で裁量権を持つ仕事」になりました。
自分の喋る言葉のひとつひとつが相手の人生を左右するかと思うと、すごく怖かったです。

自由の裏返しで、意外と孤独かもしれません。

・社会的信用力を0から自分で築く必要がある

他人からの信頼や評価が事業の成功につながります。
人脈をどう築いていくか。
ひとりでは仕事はできませんから、顧客をどう見つけていくのか。
営業も大事な事業戦略となります。
自分でいくらがんばったと思っても、結果を残さないと評価につながりません。
主観より客観が優先されるということに、厳しさがあります。

・まとまった金銭が必要となる

起業には、お金がかかります。
家賃、光熱費、通信費、備品代さまざまです。
社会保険労務士だと、都の社労士会への年会費や賠償責任保険の保険料、研修費、業務システムの導入費や維持費、毎月結構な金額がかかってきます。
予想外の出費も多いです。
起業する前段階の準備として、まとまった金銭を用意する必要があります。

僕は障害者雇用で働いた給料とその後の雇用保険の10ヵ月分の求職者給付をすべて開業の資金に回しました。
年単位でそれなりの金額を預貯金しなければいけなかったので、これがなかなかキツかったです。

・収入が得られるとは限らない

集客ができないと売り上げが伸びません。
のんびりできて、あーよかったというワケにはいきません。
放っておくと自分の会社が潰れます。
会社が倒産すれば、多額の借金を負うリスクもあります。
事業資金を不足させないためにも、営業や集客が重要です。

僕はできるだけランニングコストを低く抑えて、赤字を出さない努力はしています。

・税金、社会保険の手続きをすべて自分で行うのが面倒

もう。ほんとに。
これは、面倒くさい。
ちょーめんどくさい。

社会保険の手続きは職業柄わかるのですが。
殊に税務に関しては、未知でプレッシャーでした。
社労士が税金の申告漏れしてたとか洒落にならないし。
確定申告やインボイスの登録も見たことすらなくって。

毎年、必ず行わなければならないことなんで1から学びました。
帳簿の作り方から、確定申告の仕方、消費税の仕組み。
自分で書けるようになったけど、結構な手間でした。

会社勤めの頃、経理の人たちがやっていてくれた雑務にすごく感謝できました。

本業以外の必要な事務手続きが増えるというのは、やはり負担です。

以上がデメリットです。
リスク管理をする上で、起業、創業の悪い面も認識しておくことは必要だと思います。

誰もが働けるユニバーサルデザインとしての起業、創業


僕は障害者雇用で働いてみましたが、病気の特性や周囲の理解が得られず、スキルアップやキャリア形成を否定されました。
また、「障害者らしくない」と言われ、自分らしくいることを許されなかったり、劣等感を感じる人がいるからという理由で仕事の活躍をすることを嫌がられたりもしました。

僕は、難病患者や障害者が「働くこと」で、社会に貢献できることや存在価値を認められることを証明したいと思っています。

雇用継続であっても、創業であっても、どんな形であれ、それができれば、難病患者や障害者が働きやすさを感じ働くことで、自立につながり、また、周囲が病気の特性や障害を理解し、社会全体が活性化すると考えているからです。


ひいては、難病患者や障害者の人権や尊厳が守られることになるのではないでしょうか。


僕も開業したばかりで、まだまだ勉強することばかりですが。

難病患者、障害者の創業に際して、ビジネスプランニング、法的支援、治療と仕事の両立支援の知識、そして、自分自身が難病患者である当事者の体験を生かした健康管理のアドバイスを通じて、難病患者や障害者が安心してビジネスを運営できるようサポートしたいと思っています。


現在、日本では「障害者雇用」という言葉があっても、「障害者創業」という言葉はありません。


難病患者や障害者は劣っているとイメージで起業するという概念がないからです。


僕自身も難病患者という立場で社会保険労務士事務所を起業させました。
より多くの難病患者、障害者の起業を成功させることで、社会で活躍できる仲間を増やし、スタートアップのイメージも覆していきたいと思います。


人口減少社会で難病患者、障害者の社会戦力化は、社会にも大きなメリットがあります。

難病患者、障害者などの多様な人材に着目し、人手不足を解消することは、労働市場のダイバーシティ化につながり、社会全体を活性化させていきます。


僕の創業は「一寸法師」がお椀で大海を渡るようなものだったけど。
みんなの創業は、もうちょっといい船を用意できたらいいなと思っています。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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