REDCRANE’S UNIVERSE

I write with my past, about the future, for…

REDCRANE’S UNIVERSE

I write with my past, about the future, for the present.

最近の記事

湖と石 Part 3 - Nick Drakeからの手紙編

前回は、憧れのJon Gommのシグネチャーモデル「JGM10」がIbanezから40万円ほどで発売され、今なら72000円のポイントが還元されるという最高の条件だったというところまで書いた。弾いた時の感触も良かったのに、なぜ購入まで辿り着かなかったのか。 理由は大きく分けると二つあった。 一つは、やはりあくまでJGM10という楽器がJon Gommのような奏法のプレイヤーのために最適化されているギターだということだった。 一度でも彼の楽曲を聴いたことがある者なら、その奏

    • 湖と石 Part 2 - JGM10編

      IbanezからJon Gommモデルのギターが約40万円で発売される。いったいどんなギターなんだろうと思い、すぐに検索をかけた。 スケールは655mm、ナット幅は45mm、トップ、ボディ共にシトカスプルースの総単板。おまけにFISHMANのマグネティックピックアップ+コンデンサーマイクに、ボディを叩いた音まで拾うセンサーを合わせたトリプルソース。 スケールについては前の記事で少し触れたものの、それ以外何をいっているかわからない方のために簡単に説明を加えたい。 まず、ナ

      • 湖と石 Part 1 - B♭の呪い編

        私はあるバンドでアコースティックギターを弾いているのだが、そのバンドで採用しているギターのチューニングが、なんとも特殊だ。6弦から1弦にかけて、B♭FB♭FB♭C(因みに、いわゆる「ド」が「C」である)。 ギターを嗜まない人にわかりやすく説明すると、身長170cm体重60kgの人間にXXLのパンツを履かせている感じだ。通常のチューニング(EADGBE)よりもかなり音程を落としたチューニングなので、弦のたるみが出てしまい、一般的なネックの長さでは弦のテンションを維持できない。ぶ

        • 金の虎

          昼の光が眩しすぎて 休み処を求め彷徨う人間たちを 優しく迎え入れる一匹の虎がいた その虎は 決して人間たちに牙を剥くことなく 古今東西の調べでもてなし 彼女ら彼らはそれに合わせて踊り 般若湯を呑んだ 虎が皆を送り出す時 世界はすでに朝焼けに包まれて 再び訪れる昼の予感を抱えていた 朝日に照らされ 黄金に輝く 虎 その姿も 今は遠く 外は 立夏の湿った空気の中 遠雷が鳴るだけ しかし信じる 私たちは信じる 傷も 怒りも 祈りも 力に変える 黄金の虎に 再び会える

        湖と石 Part 3 - Nick Drakeからの手紙編

          濤声

          一隻の漁船が、大しけの海に頼りなく翻弄される。舵をとっている船長は、魚好きだが船の運転の仕方など勉強したことのない、素人の男。潮の流れも北極星の位置も分からないその男に付いて行く船員たちは、心配になって船長に言う。 「北北西に灯台の光が見えます。とりあえずあの岸を目指した方がいいのではありませんか。」「南に救助船が見えます。」「北東に氷山があります。」「灯台の光に見えるあれはUFOです。」「どうか正しい判断を。」 船長は進路を決められない。何故なら、自信がなく無知だからで

          悪魔とのセックス

          思い悩み、ただひたすらに夜の街を歩き回り、スマートホンの連絡先をスクロールしては助けを求められる人がいないか探し、見つからず、歩き疲れたどり着いた公衆トイレには、大抵の場合「いのちの電話」の電話番号が記されたポスターが貼ってある。 知らない人も多いかもしれないが、いのちの電話はなかなか繋がらない。同じように苦悩し疲弊している人間で、回線は溢れかえっているからだ。借金か、家庭環境か、学校や職場での暴力か。多岐にわたるこの世の魑魅魍魎に怯える魂が一点に集中し、奇妙な演奏を始める

          悪魔とのセックス

          廉恥

          恥ずかしいという感情への向き合い方は、大きく分けて2つある。 1つは、うわぁー!うおー!私はこんなにダサくない!かっこ悪くない!っしぇーい!あーヤダヤダヤダヤダ!ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ! 的なもの。 もう1つは、恥ずかしいなぁ、さぁ、またがんばろう。 的なもの。 前者を羞恥心(しゅうちしん)、後者を廉恥心(れんちしん)と呼ぶ。 およそ10年ほど前、佐々木中からピエール・ルジャンドル、菊池久一、中島敦を辿って「恥」について考えたことがあり、その時に得た知識であ

          ばかでありたい

          年も明けて平成の終焉へまっしぐらな日本人の端くれとして2019年も絶賛空回り中と言わねばならぬのが現状。この渇いた世に何を憶ふ。 とかなんとか格好をつけたところでどうなるものか。今まで通りだらりと生きていくのだ。 そうそう、先日、年祝いがあった。同年代の女性陣の厄払いに合わせて開かれた、同窓会の類である。 恥ずかしながら、成人式も欠席した筆者にとって同窓会的なナニに参加するのはこれが初めてであった。 とても楽しかったし、大いに学んだ。 皆、母や父になっているものもあ

          ばかでありたい

          話せない、話さない、ということ

          話せない、話さない悩みということが、人には少なからずある。 恥ずかしながら、私はこの類の悩みを二十歳あたりまで感じることなく生きてきた気がする。しかし、幼少期から抱える人もいるんだろうと思う。 人生に悩みは尽きないが、話せない、話さない悩みというものは、悩みの中でもとりわけ重いものなような気がする。酷く痛む疵なのだと思う。 言葉にすることができないことを無理に言葉にしたり、または誰かに無理に言葉にさせたりすると、あまりいい結果を生まない。 例えればそれは、裸で風呂に入っ

          話せない、話さない、ということ

          忘却の力、恐怖

          忘れるということは、人間にとって最も重要な行為の一つであるような気がする。もっとも、人間が何かを意識的に忘れようとするということは思い出すこととほとんど同義であるから、行為と呼べるのか疑わしいけれども、いずれにせよ重要な何かではありそうだ。フロイトではないけれど、とんでもなく辛い記憶などは抑圧され無意識に埋め込まれることで、我々人間は何とか日常を生きていくことができるというのは、なるほどそんな気がする。2011年3月11日、怪獣に家を丸ごと破壊された筆者の知人は、毎年その日に

          忘却の力、恐怖

          湯飲み一杯180mlとしよう

          地域差はあれど、日本では本日あたりから盆だろうか。 人間は死んでいった者との記憶に折り合いをつけるために、信仰のレンズを通してそれらの死を物語として捉えてきた。日本の場合、死者は夏になると冥界から足の速いきゅうりの馬に乗ってこの世に帰ってきて、数日間だけ滞在を許される。そして、名残惜しさを抱えたまま、帰りは歩みの遅いなすの牛に乗って、再び冥界へ戻っていく。 盆は、日本人の筆者にとって、なんともノスタルジーをくすぐる、むず痒くなるようなでもそれでいて心地いい行事だ。 しか

          湯飲み一杯180mlとしよう

          Shinra Company and Avalanche

          今更確認する必要もないが、FINAL FANTASYシリーズの中で初めてプレイステーション用ソフトとして発売されたFINAL FANTASY VIIの注目のされ方は尋常じゃなかった。筆者の故郷である人口4万人弱の東北の田舎町においても、誰もが発売を心待ちにし、その期待感が盆地たっぷりに充満していた。 1997年1月31日。19年前の、七草粥も過ぎて正月の雰囲気から節分やバレンタインに移行していく最中のあの日、ひでちゃんち(地元の酒屋さんの息子で、同級生)には一足先に届いたと

          Shinra Company and Avalanche

          クラシックなボディに最先端のシステムを搭載

          iPhone6のカメラの画質は、玄人の人が見ても目を見張るほど綺麗らしい。 今や、電話やメールだけではなくインターネットにも自由にアクセスできる魔法の板は、場合によってはピカチュウやニャースをレンズ越しに映し出すほどのものすごい高品質カメラを内蔵している。 軽いし、簡単。様々なアプリケーションをダウンロードすれば、一眼レフをも凌ぐ写真を吐き出すこともあるそうだ。 しかし、それを理由に「今の時代カメラを持つのはナンセンスだ」と言うのは間違っている。スマートフォンができても

          クラシックなボディに最先端のシステムを搭載

          Things Your Cells Rejoice

          「何々しなくてもいい」という表現が好きだ。 筆者には、たくさん夢がある。ただ筆者は、人は無理に夢を持ってなくてもいいと思っている。やりたいことがなくてもいいと思っている。そう考える理由は、大きく分けて二つある。 一つは、夢を持つ人は搾取される対象になりやすいからだ。サッカー選手でも、アイドルでも画家でもミュージシャンでも、なんでもいい。それらすべてに関して「もっと上手になりたい≒他の人より(または前の自分より)できないことが不安」という気持ちに漬け込む「養成所」や「塾」や

          Things Your Cells Rejoice

          命綱と誓い

          昨年の今ころから夏にかけて、地元の友人と曲を作った。アコースティックギターと歌だけの、とてもシンプルな曲だ。ふと「誰かと何かを一緒に作りたい」という衝動が爆発して、頭に浮かんだ歌の上手い友人に声をかけたところ快く受け入れてくれたのだ。筆者が作曲をし、友人が詞を書いた。 その曲が、ここ最近頭を巡る。残念ながら、メロディーが素晴らしいからではない。詞が素晴らしいからだ。特に、サビの詞が。 広がる想像止まらないから 知らない自分溢れてくるから 不安に似てるけど きっとこれは良い

          スーパーボール

          意識は、失ったり戻ったりする以外に、高い、低いという言葉に捕まえられることがある。 我々は「高い/低い」という概念が好きだ。 能力も、学歴も、給料も、「高さ」で表されることがしばしばある。そして、往々にして(皆が皆そうではないということは言うまでもないが)「高い者」は「低い者」から呪われ、「低い者」は「高い者」から蔑まれる。 意識も例外ではない。 筆者は、意識を「高さ」で捉えることに昔から消極的であった。何故なら、「高い/低い」という言葉は半強制的に「ピラミッド」や「

          スーパーボール