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下駄華緒の弔い人奇譚

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怪談最恐戦2019の怪談最恐位、送り人ミュージシャンの下駄華緒が送る連載企画です。火葬場・葬儀屋の赤裸々事情、日常生活では知り得ない葬礼やご遺体の話、はたまた不思議な体験まで、余…
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#怖い話

はじめに ―僕が火葬場・葬儀屋で働いた理由―

はじめに ―僕が火葬場・葬儀屋で働いた理由―

まずはじめに、僕は元火葬場職員として働いたその後、葬儀屋に転身した経緯があります。

こういう話になると必ずと言っていいほど聞かれることがあります。
それは「なんでその仕事をやろうと思ったの?」です。

ある人は言います、そんな仕事してて怖くない?と。またある人は腐乱死体とか見るのキツそう、と言います。
確かに子供のなりたい職業ランキング上位に入ったことなんておそらく無いだろうし、大人からしてもな

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【第2話】火葬した子どもが枕元に… 夢うつつで交わしたあの世とのしりとり【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第2話】火葬した子どもが枕元に… 夢うつつで交わしたあの世とのしりとり【下駄華緒の弔い人奇譚】

――第2話――

ある日、火葬場に子供がやってきました。
やってきたと言っても、遺体として、です。
火葬場職員は常になるべく冷静に対応するようにしています。見方によっては冷たい印象を与えてしまうかもしれませんが、職務であるボタン操作ひとつで火葬が出来ていなかった、途中で火が止まっていた、などという重大事故を防ぐ為に、あえて感情移入しないよう努めているのです。

ですが、人間ですから心の中は常に揺れ

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【第5話】毎日火葬場にやってくる謎の女性 いったいそこで何をッ!?…【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第5話】毎日火葬場にやってくる謎の女性 いったいそこで何をッ!?…【下駄華緒の弔い人奇譚】

――第5話――

ほぼ毎日、火葬場にやってくる初老の女性がいました。
その方はいつもジーパン等の軽い服装で髪の毛はボサボサ、大きな眼鏡をかけて年中、日に焼けた肌をしていました。

火葬場にきて何をするのかというと、火葬した後の骨を見に来るんです。何故かはわかりません。が、遺族さんもいる中、まったく関係のない女性がいるのは駄目だろうということでその女性が来るたびに追い返す、というのが日課になっていま

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【第6話】生きたまま焼く? 火葬場の噂、驚愕の真相を元職員が暴く!【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第6話】生きたまま焼く? 火葬場の噂、驚愕の真相を元職員が暴く!【下駄華緒の弔い人奇譚】

――第6話――

今回は、ネット上など様々なところで噂されている都市伝説的な話の『嘘』を暴いていこうと思います。

まず、体の悪い部分が火葬した後に黒く残る、という話。
これは嘘です。火葬場職員自身も信じ切ってしまっている場合もありますが全く根拠のないデマです。
黒い部分は悪いところ説の発端は不明ですが、一つの話として昔、まだ火葬技術が発達しておらず野焼きで火葬していた時代は完全に綺麗に骨だけにな

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【第7話】全身灰まみれ! 結構ハードな火葬場職員の洗濯物事情!【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第7話】全身灰まみれ! 結構ハードな火葬場職員の洗濯物事情!【下駄華緒の弔い人奇譚】

――第7話――

ぼくの母親はお化けや心霊の類いに関しては極度の怖がりで、きっと人骨なんて見た日には「ぎゃー!」っと叫びだすんじゃないかと思うほどです。
火葬場で働くと言ったときも「もぉ…変なの連れてこないでよー?」と応援しつつも複雑な気持ちだったようです。

口でもそう言うものの、実家暮らしをしながら火葬場で働いていた時は「シャツは綺麗にしとかないとみっともないでしょ!」と制服で使っている白いカ

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【第8話】危く失明! 火葬場職員にとって超キケンな遺体とは?【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第8話】危く失明! 火葬場職員にとって超キケンな遺体とは?【下駄華緒の弔い人奇譚】

――第8話――

みなさんペースメーカーはご存知ですか?
「あれでしょ? 心臓のやつですよね?」そうです、アレです。
ペースメーカーの詳しい事は置いておいて、火葬場ではペースメーカーが遺体にあるかないかがとても重要な情報になります。

なぜかというと、ペースメーカーの中にある電池が火によって加熱されると「パァーンッ!!!」と破裂します。ぼくの個人的な感覚では、火葬を始めて15分から30分くらいの間

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【第10話】遺体の口から出ていたのは… 葬儀屋に降りかかった身の毛もよだつ出来事!【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第10話】遺体の口から出ていたのは… 葬儀屋に降りかかった身の毛もよだつ出来事!【下駄華緒の弔い人奇譚】

―第10話―

葬儀屋さんって「待つ仕事」って言われているんですよ。
何を待つかというと電話なんです。例えばご家庭に伺って「誰か死んでませんかー?」などと葬儀屋さんの方から聞いて回るなんてことはあり得ないわけです。なので、基本的には遺族さんからの電話を待っています。

そして、ある日の昼過ぎです。
会社の電話が鳴ったので受話器をとったところ「すみません…母が亡くなりまして」と中年くらいの男性の方か

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【第13話】意外と知らない火葬場の清掃事情を教えます! そして不思議な体験も…【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第13話】意外と知らない火葬場の清掃事情を教えます! そして不思議な体験も…【下駄華緒の弔い人奇譚】

―第13話―

掃除はとても大事です。
これはどんな業種でもそうなんだろうと思いますが火葬場も特に大事です。当然、毎日綺麗に掃除する必要があります。
亡くなった大事な人が掃除も出来ていない火葬場で火葬されたら悲しいじゃないですか。だから掃除には力を入れていました。
が、毎回どうしようもない悩みがありました。

それは炉前ホールと言われる、いわゆる広いホールです。遺族さん達が最後に火葬炉に入っていく

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【第14話】街中の雑踏の死体!? 火葬場職員が嗅ぎつけた死の香りと怪異とは…【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第14話】街中の雑踏の死体!? 火葬場職員が嗅ぎつけた死の香りと怪異とは…【下駄華緒の弔い人奇譚】

―第14話―

人間の様々な記憶の中でも「におい」がとても強く残りやすいと言う話を聞きました。たしかになるほど、と思うことを火葬場で働いていると感じます。
特に、亡くなってからそれなりの期間が経ったご遺体の腐敗臭……これはもう一生忘れないんだろうなあと思います。

ある日、某所に買い物に出掛けた時です。
その日はいつもよりも暑く、そろそろ夏がやってくるのかな? という気候でした。Tシャツと、ズボン

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【第23話】あわや絶体絶命!火葬場元職員が実際に体験した、命にかかわる怪奇現象の恐怖!【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第23話】あわや絶体絶命!火葬場元職員が実際に体験した、命にかかわる怪奇現象の恐怖!【下駄華緒の弔い人奇譚】

―第23話―

火葬場は火を扱う場所です。
火と言っても小さい火ではありません。バーナーから吹き出す火は轟音と閃光を出しながら1000度近い熱を発する火柱と言っても良いでしょう。
そんな火を扱う現場ですから、「安全」に関しては他の様々の職種の中でもより徹底して行なっていると思います。なので、滅多なことでは事故など起こらない、起こり得ないのですが、もう少しで…ということがありましたのでお伝えします。

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【第29話】深夜の火葬場でカメラをのぞき込む謎の異形!元職員が語る本当にあった怖い話【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第29話】深夜の火葬場でカメラをのぞき込む謎の異形!元職員が語る本当にあった怖い話【下駄華緒の弔い人奇譚】

―第29話―

今でも考えると怖くなるのですが、ある日上司と二人で残業…というか自主的に夜の火葬場で掃除やら片付けやらをしていた時の話です。

「普段出来ない所をやろう」
という名目の元、2人で残っていたのですが、実質半分はこの仕事に対する意識や取り組み方などをお互いに語り合う為だったような気もします。
そろそろ22時を過ぎそうだなということで2人ともキリの良いところで切り上げ休憩室に向かいました

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【第31話】「出る」と噂の火葬場。そこで現れたモノの姿、そして意外な正体とは…!?【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第31話】「出る」と噂の火葬場。そこで現れたモノの姿、そして意外な正体とは…!?【下駄華緒の弔い人奇譚】

―第31話―

とある場所に「出る」という噂の火葬場がありました。
とはいえ、僕は全然そういう類のものが見えないタイプですし、しかも、もし自分が霊になったとしたらわざわざ火葬場に行くかなぁ?僕だったら死んだ場所とか家に行くなぁ、という素朴な疑問もありで、特になにも気にもしてなかったのですが、この話を聞いた時はなんとなく心に引っかかるものがありました。

ある葬儀屋さんが、その「出る」と噂の火葬場に

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