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【第8話】危く失明! 火葬場職員にとって超キケンな遺体とは?【下駄華緒の弔い人奇譚】


――第8話――

みなさんペースメーカーはご存知ですか?
「あれでしょ? 心臓のやつですよね?」そうです、アレです。
ペースメーカーの詳しい事は置いておいて、火葬場ではペースメーカーが遺体にあるかないかがとても重要な情報になります。

なぜかというと、ペースメーカーの中にある電池が火によって加熱されると「パァーンッ!!!」と破裂します。ぼくの個人的な感覚では、火葬を始めて15分から30分くらいの間に破裂するイメージです。
その衝撃はそこそこあって部品等が炉の中で飛散する事があります。しかも、過去の事例ではペースメーカーの入っている遺体を点火して火葬中に確認したところペースメーカーが破裂しその部品等が目に直撃し失明しかけた事例もあります。

そういうこともあり僕の働く火葬場では「○○様、Pあり」等というふうに書類に記載されていました。
なら絶対に安全だ……と、これがそういうわけでもないんです。

実は親族でも、亡くなった人にペースメーカーがあったかなかったか、記憶が定かでなかったりします。「ペースメーカー、あったようななかったような…」と記憶を辿るもののどうにも思い出せない場合が当然あります。
いや、でも病院はペースメーカー入ってるかどうかわかるでしょ? と言われますが、それが親族、もしくは葬儀屋さんにちゃんと伝わるかどうかは別問題です。もしかすると親族さんは葬儀屋さんにペースメーカーがある事を伝えたとしても、葬儀屋さんが火葬場職員に伝え忘れている可能性もあります。
誰が悪い、という話ではなく、人間のする事ですから必ず何処かに「抜け穴」があるものです。


ある日、いつものように僕は火葬をしていました。
ペースメーカーは……無し。
しっかり確認して作業に取り掛かっていました。

ちょっと中の様子をみようと確認用の小窓を開けて中を覗いた瞬間――
「パァァーーーン!!!」
という爆音とともに頬に小さい何かがビシィッッ!! と当たり激痛が走りました。幸い大事には至りませんでしたが、もしこれが目に当たっていたら……と思うと、今でも身震いしてしまいます。

著者紹介

下駄華緒 (げた・はなお)
2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員、葬儀屋の経験を生かし怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019怪談最恐位。

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