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衣装をめぐる旅|ナーナイの花嫁衣装がかわいすぎてもう|北海道立北方民族博物館
旅が好きで、服をこよなく愛していて、ウェディングドレスをつくる仕事をしていて、おまけに通信制大学で「博物館学芸員資格過程」を履修していて、できることならば生きているうちにできるだけたくさんの服飾系博物館に行きたいと願っているわたしが、ことしいち興奮した衣装をお伝えしたいと思います。
北海道立北方民族博物館で出会った、ナーナイの花嫁衣装です。
ナーナイの花嫁衣装
こちらの衣装です。なんてかわいらしい花嫁衣装なんでしょう。
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細部まで手のこんだ、とても美しい刺しゅうです。うっとり。
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ナーナイ(Nanai)とは、ツングース系の民族で、樺太〜アムール川流域(中国・露)の民族のことです。
はっ、アムール川流域といえばキロランケの故郷もこの川の流域なのでは!?(←ゴールデンカムイの読みすぎですね)
キロランケは、ナーナイではなく樺太アイヌ民族の血を引いたタタール人という設定でした。キロランケによると、このあたりは少数民族がたくさんいたそうです。勉強になるなあ。そして、いままであまりよく知らなかった民族のことがぐっと身近に思えてきます。そういう意味でもやっぱりすごいマンガだなと思います。
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それにしても、かっ、可愛すぎません? この色と柄の組み合わせ。
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ミナペルホネンやツモリチサトもびっくりの豊かな色彩とテキスタイルセンス!(個人の感想です)
しかもこれが花嫁衣装っていうのがまたときめきます。もうそれだけでキュンとしてしまうのです。(どんだけ花嫁が好きなんだ)
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そしてこの衣装、背中側を見るとまた印象がちがいます。背中に刺しゅうされているのは「氏族の木」と呼ばれる文様だそうです。
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色とりどりで、素敵。
「氏族の木」には氏族の繁栄を願う意味がこめられているとのこと。よく見ると、木の枝には鳥がとまり、木の足下には動物たちもいます。人間だけが繁栄するのではなく、動物や自然も人とともに繁栄するという意味もあるのだと思います。
色や形、文様は衣類をうつくしく見せるという効果のみならず、動物への畏敬の念や、魔除け、着る人の性別や身分などを示すはたらきをもっている。寒さや外傷を防ぐなど、衣類のもつからだを守るための基本的な役割だけではない、これら精神文化や社会的象徴が装飾にはこめられている。
衣装、とくに花嫁衣装にこめられた意味を知ると、わたしは感動のあまりぶるぶるふるえてしまいます。意味って、物語なのです。大切に受け継がれてきた服や衣装に出会うたびに、服たちよ、あなたの物語をもっと聞かせて。という気持ちになります。
首にはケープをつけるそうです。このケープもまあ、たまらんかわいさです。
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帽子と靴もまたかわいい。着てみたい…。
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北海道立北方民族博物館について
さて、この花嫁衣装を展示している北海道立北方民族博物館について。
北海道立北方民族博物館は、館のパンフレットによると、グリーンランドから北欧までアイヌ文化を服えた北方民族の文化とオホーツク文化を紹介するわが国唯一の博物館だそうです。
網走市内、天都山の道立オホーツク公園内にある、かわいい三角屋根の建物が目印の博物館です。
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ここにたくさんの民族衣装が展示されていると知り、ワクワクしながら訪れました。わたしは衣装を展示してある博物館や美術展が大好きなんです。好きすぎていちどでいいから服飾博物館のバックヤードに入ってみたくて、それが合法的に叶うのは、『博物館学芸員実習』しかないのでは!? と思い、そのためだけに大学で博物館学芸員資格を履修しているくらいなのです。
ちなみに、来年の夏に博物館学芸員実習を受けるためには今年度中に8科目の単位を取得する必要があって、今けっこう必死です。すでに1科目は修得しており、先日2科目合格していたので、あと5科目! まだまだです。ひ〜。目指せ、博物館実習!
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今回の北海道旅行のなかでも、わたしにとってひそかに「メインイベント」のひとつに設定していたのがこの北海道立北方民族博物館への訪問です。なので、こっそりこの博物館にちかいホテルを予約していました。家族には、「たまたま、ほんっとにたまたま、ホテルのすぐ近くに博物館があってねえ」と説明。まあ、バレバレですけどね。
ただ、残念ながら家族の中で博物館・美術館、そして衣装に興味があるのはわたしだけ。そのため家族には、すぐ近くのオホーツク流氷館でクリオネを見たり、氷点下で濡れたタオルを回したりしていてもらいました。おもしろかったそうです。よかった。(ほんとうはわたしもタオル回したかった)
ではさっそく、博物館に入ってみましょう。ワクワク。
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ちなみにわたしは「大学生」なので、学生証を見せて学生割引料金で入館することができます。いままでいろいろな博物館・美術館で学生証を出してきましたが、だいたいみなさん一回、「えっ、、、この人、学生?」みたいな独特の間のようなものが存在するのですが、ここではそれがなかったんですよ! はい、学生さんね、という感じでスムーズなエントリー! 海外みたい! きっと海外からの来館者さんも多いのかな。と思いました。
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パンフレットはいろんな国の言葉で用意してありました。
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北の隣国は、思っていたよりもうんと近いのですね。西日本にいると、それが肌感覚としてわかりにくいのです。やっぱり実際に足を運んでみるってすごい大きいことだなと思いました。
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北極を中心にした世界
まず、おもしろいなあと思ったのが、この博物館の研究や収集方針が、どこの国、という限定したくくりではなく、「北方」という切り口だったことです。つまりこのように、北極を中心にぐるっとこの寒冷地域にすむ人びとの暮らしと文化を紹介してくれる博物館なのです。
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でもよく考えてみたら、地球は丸いわけですから、世界をこんな風に見ることもできるわけなんですよね。そう考えたら、日本列島とその周辺の島々は、大陸からネックレスのように連なっているように見えます。そうなると、地政学的に見て日本は大陸からどんな風に見えているのだろうとか、そんなことも想像してしまいます。
また、温暖化や気象変動の観点からこの地図を見てみると、「いやここの(北極の)氷溶けたらやばいことになるやん」と想像することもできます。
世界を、ひとつの方向ではなく、見方を変えてみたり、別の角度から想像するきっかけを与えてくれる。そういう博物館は素晴らしいなあと思うし、そのような体験はやはりあらゆる世代のあらゆる人にとって必要だなと思うのです。うん、博物館学芸員過程の勉強がんばろう、わたし。
北海道立北方民族博物館は北方地域に生活する民族の文化と歴史を研究し、あわせてひろく道民のこれら民族の理解を深めることを目的として1991年2月10日、東部オホーツク海沿岸の網走市に開館した。本館は北方民族を専門とする点で日本では唯一の、世界的にも数すくない民族博物館である。
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さて、前置きが長くなってしまいました。さっそく博物館の中に入ってみましょう。
エントランスでは大きなシカがお出迎え、ではなく、これはアイヌ文化ARスタンプラリーでもらえるAR(拡張現実)のエゾジカちゃんです。ARの操作方法に慣れてなくて、やたらでかいシカになってしまいました。けど色合いがなんだかぴったりでお似合い。こういう、新しい技術を博物館体験に取り入れるっていいですよね。
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いざ、氷の世界へ。
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こちらがこの博物館の収集・研究対象としている民族です。ウィルタ、ニヴフなどゴールデンカムイでも出てきた民族の名前があると、ついつい、あっ! と思ってしまいます。
わたしはこの、民族の大移動とか、遊牧民にやたらと心惹かれてしまうのです。わたしたちの祖先は、遠いどこかから移動してきたんですよね。民族たちの長い旅を思うとき、自分がどこか遠くから呼ばれているような、どこへ帰りたくなるような、そんなはるかな気持ちになります。
この石刃技法(シベリアのバイカル湖周辺の独特な石器製作技術)をもった人びとは、最後の氷河期がおわりかけたころ、マンモスやトナカイ、野牛を追ってシベリアから、氷に閉ざされていない平原を抜け、まだ水没していなかった現在のベーリング海峡地域ベリンジアをとおってアメリカ大陸へ渡って行ったのだった。一万一〇〇〇年前ころと考えられている。もちろんその一部の人びとは、やはり大陸と陸続きだった日本列島にも移動してきた。一万三〇〇〇〜一万四〇〇〇年前の出来事である。
展示は、衣・食・住などの文化がくまなく展示してありました。
時間がなくて、「衣」以外の展示を早足で見てしまったのが残念でしたが、住居や民具などもすごくおもしろそうでした。
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ああ、もういっかいちゃんと見たい…。北海道またすぐにでも行きたい。
衣装の展示
民族衣装の展示コーナーです。迫力がありますね。大興奮です。
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どれもこれもすごく素敵でした。そして勉強になります。厳しい自然環境とともに暮らす民族にとっての「衣」は、「いのち」に直結しているということが理解できる素晴らしい展示でした。そしてこんな研究をしてみたいなあと思ってしまいました。
さて、先ほどのかわいいナーナイの花嫁さんのとなりには、北海道アイヌの男性正装が。
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礼冠と飾り刀を身に着けるのが男性の正装なのだそうです。刀掛帯はオヒョウのきの繊維を編んで作るとのこと。(展示キャプションより)
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この刺しゅうはおそらく、広幅の木綿を切り抜いて衣服に重ねて縫い止め、その上から刺しゅうを施した「カパラミプ」と呼ばれるものだと思われます。(『アイヌ刺しゅう入門』津田命子、クルーズ、2010年)
かっこいいですよね。やっぱりキロランケをイメージしてしまいます。
それにしても花嫁さんの衣装、やっぱりかわいい。
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休暇で旅にでていても、仕事をしていても、自分でつくっていても、花嫁衣装を見るともれなくときめく。それってやっぱり、天職ってことなんでしょうね。
さて、今回の北海道立北方民族博物館、大満足でした。さまざまな研究もされていたり、学芸員のエッセイが公式サイトに掲載されていたり、地域の教育活動やシンポジウムなども積極的に行われているようで、服飾展示マニアとしても、博物館学芸員課程を履修する学生としても、とても興味深く楽しめる博物館でした。
こんな日本各地の衣装を展示する博物館・美術館や、衣服をめぐる旅がしたいなあと、北海道での旅をきっかけに考えるようになりました。ああ、思い立って週末にひとりでもう一回北海道へ行きたい!
そして、47都道府県の「衣服をめぐる旅」がしたい!
▼関連note
▼北方民族博物館公式サイト
だれにたのまれたわけでもないのに、日本各地の布をめぐる研究の旅をしています。 いただいたサポートは、旅先のごはんやおやつ代にしてエッセイに書きます!