2024年2月の記事一覧
洞窟の奥はお子様ランチ|毎週ショートショートnote
電車の中で、赤ん坊の泣き声が響き渡った。その瞬間、友人がすっと席を立つ。「降りよう」という無言のアピールだ。
今まで何度か同じことがあり、僕は「赤ん坊の泣き声が苦手なんだろう」と、特に何も言わなかった。しかし、苦悶の表情を浮かべ、「はぁ」とため息をついてプラットホームのベンチに座る友人に、思わず「そんなにイヤなの?」と聞く。
「いや、違うんだ」
次の言葉を待つ。
「俺の実家は長野の山奥で、夕
行列のできるリモコン|毎週ショートショートnote
――これは……。
スマホだと思ってカバンから取り出した「ある物」に、僕は驚愕していた。
そして、肝心のスマホがないことに、冷静に「なるほど」と納得する。
「お前、それは……」
隣の席の上原が遠慮がちに聞いてきた。
「見りゃ分かるだろ? テレビのリモコンだよ」
「ああ、テレビのリモコンか。そうかそうか……」
気の毒そうに僕を見る上原にたたみかける。
「スマホと間違えて持って来ちまったんだ
ツノがある東館|毎週ショートショートnote
「運の良し悪しは関係ありません。運命です」
これから喰われるというのに、住職は表情一つ変えずに言い放った。どうやら自分の身に起こることを予期していたようだ。
「運命……と申しますと?」
私が尋ねると、住職は「少々お待ちください」と言い、小さな巻物を持って来て、目の前で広げた。紙からはパリパリ……と乾いた音がして、今にも破れそうだ。
「1000年前より、この寺に伝わる巻物です。寺を継ぐ時に、