2023年9月の記事一覧
なるべく動物園|毎週ショートショートnote
会議室は重苦しい空気に包まれていた。まるで、おばあちゃんの年金から5000円を抜き取ってしまったくらいの重苦しさだ。
僕は日本のあの県のちょっと下のその隣のまぁその辺りの小さな町の、アンビリバボー水族館に勤めている。経営状態が芳しくなく、みんなで知恵を出し合って何とかしようとしているところだ。
「我がアンビリバボー水族館は……新しく生まれ変わる!」
沈黙を破り、館長が言い放った。
――おお
呪いの臭み|毎週ショートショートnote
「おや、今日はどのような御用で?」
「先輩を呪い殺したいんです」
私は笑顔で言った。
「ほほう。それは穏やかじゃないねぇ。一体何があったんだい?」
「サッカー部のキャプテンなんですけど、私をフッて親友と付き合いやがって」
「ぶっ殺そう!」
店主は店の奥に行き、ごそごそと何かを持って来た。
「藁人形に五寸釘の丑の刻参りセット、それとブードゥー教の黒魔術セット。ちょっと難しいけど、般若心経と密
カフェ4分33秒|毎週ショートショートnote
旅人は「カフェ4分33秒」に入り、カウンターに座った。ダンディなマスターが「いらっしゃいませ」と旅人に水を出す。
「アイスコーヒーを」
「かしこまりました」
旅人は店内を見渡し「いい雰囲気の店だな」と思った。
「あの、4分33秒って変わった名前ですね」
「妻との離婚の話し合いにかかった時間が4分33秒なので」
――え?
旅人は後悔した。ヤバい店に入ってしまったと。
マスターはカウンターの
イライラする挨拶代わり|毎週ショートショートnote
(すぴーひゅるる……すぴーひゅるるる……)
中学1年になり、吹奏楽部の体験入部で、そいつは鬼のような形相でトランペットを吹いていた。必死なのとは裏腹に、全く音が出ていない。
力が入り過ぎている。管楽器は、ただ吹けば――空気を送れば音が鳴るわけではない。
「トランペットってカッコいいよね。金ピカだし」
そいつは鬼のような形相から一転、笑顔で僕にそう言った。
――金ピカ? ふざけた奴だ。
僕
鳥獣戯画ノリ|毎週ショートショートnote
「ん? これは鳥獣戯画……?」
美大の倉庫の片付けをしていると、誰かが模写したのか、奥の方で大きな鳥獣戯画を見つけた。それも、大量に。
「ああ、それか」
先生が僕の後ろから絵を覗き込む。
「それを描いたのは、もう10年以上前に卒業した村田って奴だよ。俺が見てきた中で、ダントツの天才だった」
「へぇ……」
確かに上手い。描かれている兎や蛙、猿や鹿は今にも動き出しそうだ。
「その村田さんっ