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介護施設について考える

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自分の両親、親族がお世話になっている介護施設。いつかは、自分もお世話になるかも知れない介護施設。  超高齢化社会に生きる者にとって、介護施設について考えておくことは大切なことだと…
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2024年5月の記事一覧

「不要不急」思想の影響 介護施設の課題Ⅳ‐2

「不要不急」思想の影響 介護施設の課題Ⅳ‐2


1.不要不急という思想 國分功一郎(哲学者)さんはコロナ危機を生きるための新たな日常の指針として多くの国民に内面化された「不要不急」について考察しています。
 同氏はコロナ禍によって社会に次のような傾向が強まってきたと危惧しています。

 「不要不急」とは「どうしても必要というわけでもなく、急いでする必要もないこと」ですが、國分功一郎さんは、この「不要不急」概念の中核には「必要」の概念があり、そ

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未来より今でしょ!高齢者介護の時制-介護施設の課題Ⅳ-3

未来より今でしょ!高齢者介護の時制-介護施設の課題Ⅳ-3


1.コンサマトリー/インストゥルメンタル 大澤真幸(社会学者)さんはコンサマトリー(consummatory:即自充足的)という概念を紹介していますが、この「コンサマトリー」という概念は介護における「必要-目的-手段」・「ニーズ-自立-介護計画」思想を解析するために有効な概念だと思います。
 コンサマトリーとは、それ自体で充足的な価値を持つという意味で、その反対語はインストゥルメンタル(inst

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「剥き出しの生」に抗して~贅沢は敵か!? 介護施設の課題Ⅳ-4

「剥き出しの生」に抗して~贅沢は敵か!? 介護施設の課題Ⅳ-4


1.超法規的な目的合理性の貫徹 介護施設で、なぜ人権が安易に抑圧されることがあるのでしょうか。介護施設で働く人たちに問題があるからではないでしょう。そこには、何らかの構造的な要因があるはずです。

 國分功一郎(哲学者)さんは官僚制(bureaucracy)を、その語源から官僚支配(bureau: 事務所; cracy: 支配)と訳し直したうえで次のように指摘しています。

 さらに、ハンナ

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