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制度からの逃亡②―レティシア・コロンバニ『彼女たちの部屋』
『三つ編み』に同じく、齋藤可津子訳、早川書房。2020年。
女性保護施設で代書屋のボランティアを始めた弁護士と、100年前にその施設を作るために奮闘した救世軍の女性の話。『三つ編み』と同じく、異なる世界を行ったり来たりして、最後にまとめ上げるパターンは、やはりすばらしかった。
この作品を読むまで、女性割礼、というものを、私は理解していなかった。
言葉は知っていた。大学の授業で聞いた。でも、聖
制度からの逃亡①―レティシア・コロンバニ『三つ編み』
レティシア・コロンバニ『三つ編み』。齋藤可津子訳。2019年、早川書房。
フランスの本。
三人の女性の物語が同時進行する。インドのカースト最下位の女性、イタリアの工房の娘、カナダのキャリアウーマン、それぞれの話。
バラバラに進んでいた話が、最後に、気持ちよいほどぱたぱたとまとまっていく。その構造の美しさ。
そのうちのひとつ、カースト最下位、スミタのお話。娘を何とかしてこの状況から逃れさせた
もしもたったひとつだけ願いがかなうなら②―村上春樹「バースデイ・ガール」
つづき。
先生なら、何を願う?と聞かれた。
36歳の私として、願うことは何だろうか。
「ひとつだけ願いを叶えてあげよう」と言われる状況にもよる。
そのとき、とっさに答えたのは、「胸が欲しい」。
俗だ。
Tシャツの季節。そこそこのボリュームの胸があれば、何でも着られるのだ。いちいち、胸のボリュームを考えて服装を考えなくてもいい。秋冬のニットだってそうだ。
そんなに胸が欲しいならば、整形
もしもたったひとつだけ願いがかなうなら①―村上春樹「バースデイ・ガール」
中学3年生の国語の教科書(教育出版)に、村上春樹「バースデイ・ガール」が掲載されている。授業をした。
もとは、『バースデイ・ストーリーズ』(中央公論新社、2002)。村上春樹が誕生日にまつわる短編を集めた本。そこに、村上春樹が書き下ろしたのが、この作品。
二十歳の誕生日。数日前に、高校時代から交際しているボーイフレンドとけんかをし、別れの決定的な予感がある。そして、同僚の体調不良により、アルバ