「新しく、還る」

泡が水面に向かっていく。一つ。また一つと上に行っては弾ける。水の中は静かでどこか心地よい。日頃の疲れが古い角質のように剥がれていく。

 目を閉じながら、疲れを取り除いていく。しかし、そろそろここから出なければいけない。名残惜しいが仕方がない。僕はゆっくりと水面に浮上した。

 顔を上げると目一杯空気を吸い込んだ。

「お父さん! いつまでお風呂入ってるの!」
 すりガラス越しから愛する人の声が聞こえる。軽くなった体を起こして、僕は風呂から出ることにした。

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