「縋り付く残骸」

近所の建物の近くで卵が割れていた。地面には粘り気のある黄身と殻が散っている。

 上を見上げると鳥の巣があり、おそらくそこから落ちてきたものだと思われる。

 黄身はまだ粘り気があり、少し前に割れた事が想像できた。乾き切る事なく今だに粘着質なのが、生に執着しているようにも見える。

 生まれるはずだったものが乾いていく。終わる。

 頭上の巣で一羽の鳥が寂しそうに鳴いていた。

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