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ナッジを利用して、果物 & 野菜の購入を増やす

📖 文献情報 と 抄録和訳

スーパーマーケットの買い物カゴで社会規範ナッジを利用し、果物と野菜の購入を増やす

📕McGrath, Greg M. "Using social norm nudges in supermarket shopping trolleys to increase fruit and vegetable purchases." Nutrition Bulletin 48.1 (2023): 115-123. https://doi.org/10.1111/nbu.12604
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※ Connected Papersとは? >>> note.

✅ 前提知識:ナッジとは何か?
・ナッジとは、行動科学の知見から、望ましい行動をとれるよう人を後押しするアプローチのこと。
・多額の経済的インセンティブや罰則といった手段を用いるのではなく、「人が意思決定する際の環境をデザインすることで、自発的な行動変容を促す」のが特徴

🌍 参考サイト >>> site.

[背景・目的] 果物や野菜(F&V)の摂取は、肥満や慢性疾患の発症リスクの低減と関連している。しかし、オーストラリアの成人の20人に1人しか、推奨されている1日2皿の果物と5皿の野菜をF&Vを摂取していない。人々が何をどれだけ食べるかは、社会的・物理的環境の影響を受ける。スーパーマーケットは食品購入に影響を与える重要な場であり、そのため食品・飲料の消費パターンを形成することができる。F&Vの摂取量を増やすための効果的な戦略を実施することは極めて重要である。この研究の目的は、買い物かごに置かれた社会規範ナッジ・メッセージ(プロンプト)を用いて、買い物客の購買行動をより多くのF&Vを購入するように修正できるかどうかを検証することである。

[方法] 買い物客の大半が各店舗でF&Vを購入しているというメッセージを示すプラカードをショッピング・トロリーに置いた。介入研究デザインを適用し、約100台のトロリーのうち30台にプラカードを取り付け、買い物客の購入量をレシートを回収することで測定し、介入トロリーと対照トロリーの量(kg)、合計、F&V支出(オーストラリアドル)を測定した。また、調査研究日とは別に短時間のインターセプト調査を実施した。

[結果] 社会規範ナッジ・プラカードのある台車を選択した買い物客(n = 109)は、1.25kg多くF&Vを購入し(介入:平均5.45kg、SD = 4.23kg、95% CI 4.65kg、6.26kg 対 対照:平均4.19kg、SD = 3.75kg、95% CI 3.48kg、4.90kg、p = 0.020、Cohenのd = 0. 32)、対照群(n=109;介入群:平均36.20ドル、SD=26.30ドル、95%CI=31.24ドル、41.26ドル vs 対照群:平均27.10ドル、SD=24.00ドル、95%CI=22.50ドル、31.67ドル、p=0.008、Cohenのd=0.36)の買い物客と比べ、F&Vに9.10ドル多く使った

[結論] 社会規範ナッジ・プラカードは、買い物客の購買行動を修正し、より多くのF&Vを購入することに有望である。これらの知見を長期的に解明し確認するためには、より大規模な研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

コックはウェイターを憎み、どちらもが客を憎む
アーノルド・ウェスカー『調理場』

自由を奪われた人間は、必ず誰かを憎むようになる。
村上春樹の小説に書かれていた一節である。
人間にとって、たとえ同じ行動や結論に至ったとしても、そこに自由があるか否か、はその感情や内発性にとっては、とても重要なものになる。

たとえば今回のテーマでいえば、いきなり

野菜とフルーツを買いなさい。それが身体に良いから!

と他人に言われたら、どうだろうか?
決して良い気はしないと思うし、その命令によって野菜やフルーツを買うとも思われない。
だが、今回の研究のようにそっと環境に、他人が多く野菜やフルーツを買っている事実や、野菜やフルーツを食べることで利得がさりげなく目に入ったとしたらどうだろう?

(野菜やフルーツって、こんなに変われているんだ。僕も買おうかな…)
(こんなふうに身体にいいんだ。少しでも健康に近づくために買ってみよう)

というように、各自のインナーワールドに変化が生じて、その後の内発的な購買行為を引き出す可能性が高い。
そして、その購買行為はあくまでも内発的になされたものであって、自由を剥奪された上でのものじゃない。
きっと、僕たちにできることは、堀をほっておくことだけだ。
水(他人の感情)の流れを外的に操作しようとしても役立たない。
水は、どこまでも自由で、それ自体にしか行き先は選択できない。
だから、できることは『したい気』を起こさせる環境や外的刺激を与えることだけなのだ。
病院での応用を考えたい。

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